また、GTWCでは細かなレギュレーション面が配慮されている、という声も聞かれた。
アマチュアを大事にするという精神は、プロ同士、すなわちシルバードライバー2名のコンビとなる『シルバークラス』の車両に、重量ハンデ(富士戦時点では35kg)が与えられるというシステムからも、明確に見てとれる。「プロ・プロ(シルバー同士)で組んだ方が、条件としては不利になる。そこがミソだと思います」とカーガイのコッツォリーノ。実際、このシルバークラスでエントリーするヨギボーの横溝直輝/藤波組は、プロ・アマクラス相手に苦戦するといった構図も富士では見られた。
このほかにも、前戦トップ3車両にピットタイムの加算ハンデがあることや、GT3とGT4との(最低ピットタイム含む)適切なタイム差があり、それが結果的にGT500とGT300のようなラップダウンを絡めたバトルを生む点など、レースを面白くする要素が散りばめられている。
「タイヤのセット数規定や、テスト規制もちゃんとしていて、お金がかかりすぎないようにできているし、ニュータイヤの使いどころなど、工夫の余地があるのもよくできていると思います」とDステーションの藤井は語る。
「あとは演出ですよね。ロゴひとつ、写真1枚、SNSをとってみても、すべてがヨーロッパ・テイストですから」
「僕も昔コーチングでGTアジアのレースに行っていましたが、あのときはアジアン・テイストでした。でもいまはSROがやって、ブランパン・シリーズからGTワールドチャレンジになってと、グローバル化しているじゃないですか。それを経た今回のGTWCアジアはもう、『ヨーロッパのレースやってるな』と感じるくらい、変わったと感じています」

■来シーズンの台数増加は確実?
どの関係者も「来季はもっと参戦車両が増えるはず」と口に出し、実際に参戦に向けた動きもいくつか聞こえてきている。今季の日本戦は残り2ラウンドだが、そこでも新規参戦車が増える可能性はあるようだ。
もちろん、課題もないわけではない。鈴鹿での第4戦ではアクシデントが続出し、大半がセーフティカー先導での走行となってしまった。「本来ならフルコースイエローがあれば理想ですが、機器面でも複雑になるし、コストもかかりますからね」とコッツォリーノは言う。
また、当然ながらこのイベント単体でサーキットに多くの観客を呼び込めるかというと、現状では理想的な状態とは言えない。かつての鈴鹿10時間のようなネームバリューのある1戦がシリーズに存在すれば『起爆剤』となり得るだろうが、鈴鹿10時間はプロドライバーが多く参戦し、長時間の耐久レースと、ある意味現在のGTWCアジアのコンセプトとは対照的なイベントである。さらにSRO代表のステファン・ラテルも、その復活は「非常に難しい状況」と語っているだけに、今後は別の方法論の模索も必要となるだろう。
加えて、より多くの注目と参戦を集めるためにも、来季以降は日本の主要レースとの日程重複も避けたいところだ。
今季、残るは3ラウンド。うち2ラウンドは、日本での開催(SUGO、岡山)となる。新生なったGTWCアジアで、白熱のスプリントレースが展開されることを期待したい。
