ハイパーカー規定初年度の2021年は全6戦が行われ、トヨタGR010ハイブリッドが唯一の純粋なハイパーカー車両として孤軍奮闘。アルピーヌA480と、プライベーターでノンハイブリッド車両のグリッケンハウス007 LMH(3戦に出場)を相手にシーズンを戦い、全レースを制覇した。
プジョー9X8が戦列に加わった2022年シーズンは、トヨタとアルピーヌが勝利を分け合い、マニュファクチャラーズ選手権ではトヨタがリード。一方、ドライバーズ選手権ではアルピーヌのドライバーが首位に立っている。
9X8のデビュー戦となった第4戦モンツァ6時間はアルピーヌ36号車が優勝。トヨタ8号車が2位、7号車が3位だった。プジョー9X8の94号車は冷却系のトラブルなどに対応するためガレージで長時間過ごしたのが響き、トップから25周遅れの総合33位でレースを終えた。一方、93号車は駆動系のトラブルが致命傷となり、レースが折り返しを迎えた直後にリタイアを選択した。
デビュー戦の洗礼を受けた格好だが、ポテンシャルは見せつけた。モンツァ戦に設定されたBoP(性能調整)では、GR010ハイブリッドに設定された最高出力が513kWだったのに対し、プジョー9X8は515kW。フロントモーターのアシスト可能な車速はGR010が190km/h以上とされたのに対し、9X8は150km/h以上に設定された。生まれたばかりの9X8を優遇する内容だが、それほど大きな下駄を履かせたわけではない。それだけ、高い実力を持っていると判断されているということだ。
レース中のファステストラップはトヨタ8号車の1分36秒335に対して、プジョー93号車は1分37秒020で0秒685遅れだった。セクタータイムを見ると、相対的に旋回箇所の多いセクター2とセクター3で、プジョー93号車はトヨタ勢を上回る区間タイムを記録した。最高速はトヨタ8号車の316.7km/hに対し、プジョー94号車は311.2km/hだった。乱暴に分析すれば、モンツァではコーナーのプジョー、ストレートのトヨタだったことになる。
セッティングによって特性は調整できるので、モンツァでのトヨタとプジョーの関係が富士にもそのまま持ち越されるとは限らない。それに、プジョーにとってみれば、トヨタは富士スピードウェイを知り尽くした相手だ。簡単に攻略できるとは考えていないだろう。ウイングレスのハイパーカーは約1.5kmのストレートと、低速コーナーが連続する最終セクターをどのようにバランスさせるつもりだろうか。デビュー戦で直面した課題の克服に取り組むと同時に、富士対策を入念に練っているに違いない。
