ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2023.03.14 08:40
更新日: 2023.03.14 08:41

【2023年WECをゼロから学ぶ】フェラーリ、ポルシェ、キャデラックら新・強力ライバルとトヨタが対峙。100周年のル・マンは盛況必至


ル・マン/WEC | 【2023年WECをゼロから学ぶ】フェラーリ、ポルシェ、キャデラックら新・強力ライバルとトヨタが対峙。100周年のル・マンは盛況必至

 前述のとおり、2023年のWECはハイパーカークラスに新たなメーカーが多数参入してくることが最大の見どころとなる。

 5年連続でル・マン24時間、そして4シーズン連続で選手権を制しているトヨタGAZOO Racing(TGR)は、今年も2台のGR010ハイブリッドを投入。ドライバーラインアップこそ7号車にマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス、8号車にセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮と変わらないが、車両に関してはアップデートが施されている。

 外観の変更点としては、フロント左右のダイブプレーン(カナード)追加と、小型化されたリヤウイング翼端板、ブレーキ冷却とレース中の迅速な冷却ボリューム変更に対応する前後のベンチレーション、そして夜間視認性向上のためのヘッドライトのレイアウトなどが挙げられる。

 近年、好成績を残してきたTGRが、ライバルの増える2023年にどんな戦い方を見せるのか。車両アップデートの成果と合わせて、注目が集まる。なお、チーム代表は昨年から引き続き可夢偉が兼任するほか、2021年限りで勇退した中嶋一貴TGR-E(ヨーロッパ)副会長がテスト&リザーブドライバーとして登録されたことも、TGRの今季のトピックだ。

2022年仕様のトヨタGR010ハイブリッド
2022年仕様のトヨタGR010ハイブリッド
2023年仕様のトヨタGR010ハイブリッド
2023年仕様のトヨタGR010ハイブリッド
2022年仕様と2023年仕様の比較 トヨタGR010ハイブリッド
2022年仕様と2023年仕様の比較 トヨタGR010ハイブリッド

 昨年『リヤウイングレス」という斬新なルックスのハイパーカーをデビューさせたプジョー陣営の2年目の躍進にも期待がかかるなか、大手マニュファクチャラーの3社、フェラーリ、ポルシェ、キャデラックの新型車両がどこまで既存のハイパーカー勢に食い込めるのかも注目だ。

 このうちにポルシェ963とキャデラックVシリーズ.Rは1月のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦デイトナ24時間でレースデビューを済ませているが、デイトナではアキュラARX-06勢のワン・ツーを許し、課題も多かったようだ。ただし彼らはIMSAとWECへの同時参戦というメリットを活かし、開発スピードを高めてくる可能性もあり、加えてBoPが採用されることもあって、早期に上位を争う可能性もあると言える。

 ポルシェ963のワークスチームであるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツには、アンドレ・ロッテラー、フレデリック・マコウィッキといった、かつて日本のレースを戦ったドライバーも在籍しており、国内ファンにとっては富士戦での来日も楽しみなところ。また2台のワークス車両に加え、シーズン途中からはハーツ・チーム・JOTA、プロトン・コンペティションという2チームが、カスタマー車両をデビューさせる予定だ。

 フェラーリ499Pについては完全な新型車両、かつIMSAにも参戦していないため、その実力は未知数の部分が多い。F1でリザーブドライバーを務めるアントニオ・ジョビナッツィがラインアップに加わったのも興味深いが、フェラーリのGTレース出身ドライバーを多く起用しているのも特徴だ。

2022年第4戦モンツァでWECにデビューしたプジョー9X8
2022年第4戦モンツァでWECにデビューしたプジョー9X8
キャデラック・レーシング(チップ・ガナッシ・レーシング)のキャデラックVシリーズ.R
キャデラック・レーシング(チップ・ガナッシ・レーシング)のキャデラックVシリーズ.R
セブリングでのWEC公式テスト『プロローグ』で走行する708号車グリッケンハウス007
セブリングでのWEC公式テスト『プロローグ』で走行する708号車グリッケンハウス007
ハーツ・チーム・JOTAが2023年のWEC世界耐久選手権で走らせるカスタマー車両のポルシェ963
ハーツ・チーム・JOTAが2023年のWEC世界耐久選手権で走らせるカスタマー車両のポルシェ963

■混戦必至のLMGTEアマクラスに挑む日本勢

 3クラス全体では、38台の車両がフルシーズンエントリーする。全車オレカ07・ギブソンというパッケージで争われるLMP2、ポルシェ911 RSR-19、フェラーリ488 GTE Evo、アストンマーティン・バンテージAMR、シボレー・コルベットC8.RがエントリーするLMGTEアマクラスでも近年は毎レース接戦が繰り広げられており、その傾向は今年も変わらないことが予想される。

 なお、LMP2にはグッドイヤー、LMGTEアマにはミシュランがタイヤを供給する。

 GTEアマには日本のチームとして、Dステーション・レーシングが参戦する。アストンマーティン・バンテージAMRを走らせる彼らは、2021年はモンツァ、2022年は地元・富士で表彰台にも登壇しており、フル参戦3年目を迎える星野敏&藤井誠暢のさらなる上位進出に期待がかかる。

 また、CARGUYを率いる木村武史も、ケッセル・レーシングのフェラーリ488 GTE Evoで参戦する。ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を持たないGTE車両へのこだわりを持つ木村が、GTE車両最終年にどんなレースを見せてくれるのか、楽しみにしたいところだ。

2022 WEC第5戦富士 3位表彰台を獲得したDステーション・レーシングの星野敏/藤井誠暢/チャーリー・ファグ
2022 WEC第5戦富士 3位表彰台を獲得したDステーション・レーシングの星野敏/藤井誠暢/チャーリー・ファグ
2022 WEC第5戦富士 チーム・プロジェクト1のポルシェをドライブした木村武史
2022 WEC第5戦富士 チーム・プロジェクト1のポルシェをドライブした木村武史

 2023年のWECは、2022年から1レース増え、全7戦で争われることになる。追加されたのはポルティマオ6時間レース。ポルトガル南部のアルガルベ国際サーキットで開催されることになるこの一戦は、ヨーロッパラウンドの幕開けを告げる第2戦として予定されている。

 6月に控える第4戦ル・マン24時間レースは、1923年にスタートしてからちょうど100周年の節目を迎える記念すべき一戦となる。このレースには62台の車両が参加するが、特別枠『ガレージ56』からは、NASCARのシボレー・カマロZL1を改造した、この1戦のための“スペシャルマシン”も登場。ストックカー界のレジェンドであるジミー・ジョンソンのほか、元F1ドライバーのジェンソン・バトンもドライブするとあって、すでに大きな注目を集めている。ル・マン決勝日の観戦チケットは早々に売り切れており、イベントとしても近年にない大きな盛り上がりを見せることだろう。

 華やかな耐久レース新時代を迎える2023年のWEC。全7戦の戦いすべてが、目の離せないものとなりそうだ。

NASCARガレージ56プロジェクトが公開した改造版シボレー・カマロZL1のカラーリング。2023年のル・マン24時間レースに特別参戦する
NASCARガレージ56プロジェクトが公開した改造版シボレー・カマロZL1のカラーリング。2023年のル・マン24時間レースに特別参戦する予定だ

■2023年WEC世界耐久選手権第1戦セブリング1000マイル エントリーリスト(3月1日発表)

Pos. No. Class Team Car Driver Tyre
1 2 HYPERCAR キャデラック・レーシング キャデラックVシリーズ.R E.バンバー
A.リン
R.ウエストブルック
MI
2 4 HYPERCAR フロイド・ヴァンウォール・
レーシングチーム
ヴァンウォール・
バンダーベル680
T.ディルマン
E.グエリエリ
J.ヴィルヌーブ
MI
3 5 HYPERCAR ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ ポルシェ963 D.キャメロン
M.クリステンセン
F.マコウィッキ
MI
4 6 HYPERCAR ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ ポルシェ963 K.エストーレ
A.ロッテラー
L.ファントール
MI
5 7 HYPERCAR トヨタ・ガズー・レーシング トヨタGR010ハイブリッド M.コンウェイ
小林可夢偉
J-M.ロペス
MI
6 8 HYPERCAR トヨタ・ガズー・レーシング トヨタGR010ハイブリッド S.ブエミ
B.ハートレー
平川亮
MI
7 50 HYPERCAR フェラーリ・AFコルセ フェラーリ499P A.フォコ
M.モリーナ
N.ニールセン
MI
8 51 HYPERCAR フェラーリ・AFコルセ フェラーリ499P A.ピエール・グイディ
J.カラド
A.ジョビナッツィ
MI
9 93 HYPERCAR プジョー・トタルエナジーズ プジョー9X8 P.ディ・レスタ
M.イェンセン
J-E.ベルニュ
MI
10 94 HYPERCAR プジョー・トタルエナジーズ プジョー9X8 L.デュバル
G.メネゼス
N.ミューラー
MI
11 708 HYPERCAR グリッケンハウス・レーシング グリッケンハウス007 LMH R.デュマ
R.ブリスコー
O.プラ
MI
12 9 LMP2 プレマ・レーシング オレカ07・ギブソン F.ウグラン
B.フィスカール
A.カルダレッリ
GY
13 10 LMP2 ベクター・スポーツ オレカ07・ギブソン R.カレン
M.カイザー
G.オーブリー
GY
14 22 LMP2 ユナイテッド・オートスポーツ オレカ07・ギブソン F.ルビン
P.ハンソン
F.アルバカーキ
GY
15 23 LMP2 ユナイテッド・オートスポーツ オレカ07・ギブソン J.ピアソン
T.ブロンクビスト
O.ジャービス
GY
16 28 LMP2 JOTA オレカ07・ギブソン D.ハイネマイヤー・ハンソン
P.フィッティパルディ
O.ラスムッセン
GY
17 31 LMP2 チームWRT オレカ07・ギブソン S.ゲラエル
F.ハプスブルク
R.フラインス
GY
18 34 LMP2 インターユーロポル・コンペティション オレカ07・ギブソン J.スミエコウスキー
F.シェーラー
A.コスタ
GY
19 35 LMP2 アルピーヌ・エルフ・チーム アルピーヌA470・ギブソン M.バキシビエール
J.キャナル
C.ミレッシ
GY
20 36 LMP2 アルピーヌ・エルフ・チーム アルピーヌA470・ギブソン A.ネグラオ
M.ロハス
O.コルドウェル
GY
21 41 LMP2 チームWRT オレカ07・ギブソン R.アンドラーデ
R.クビサ
L.デレトラズ
GY
22 48 LMP2 ハーツ・チーム・JOTA オレカ07・ギブソン D.ベックマン
Y.イェ
W.スティーブンス
GY
23 63 LMP2 プレマ・レーシング オレカ07・ギブソン D.ピン
M.ボルトロッティ
D.クビアト
GY
24 21 LMGTE Am AFコルセ フェラーリ488 GTEエボ S.コスタンティーニ
S.マン
U.デ・ポー
MI
25 25 LMGTE Am ORT・バイ・TF アストンマーティン・
バンテージAMR
A.アル・ハーシー
M.ディナン
C.イーストウッド
MI
26 33 LMGTE Am コルベット・レーシング シボレー・コルベットC8.R B.キーティング
N.バローネ
N.キャツバーグ
MI
27 54 LMGTE Am AFコルセ フェラーリ488 GTEエボ T.フロー
F.カステラッチ
D.リゴン
MI
28 56 LMGTE Am プロジェクト1・AO ポルシェ911 RSR-19 PJ.ハイエット
G.ジャネット
M.カイローリ
MI
29 57 LMGTE Am ケッセル・レーシング フェラーリ488 GTEエボ 木村武史
S.ハファカー
D.セラ
MI
30 60 LMGTE Am アイアン・リンクス ポルシェ911 RSR-19 C.スキアボーニ
M.クレッソーニ
A.ピカリエッロ
MI
31 77 LMGTE Am デンプシー・プロトン・レーシング ポルシェ911 RSR-19 C.リード
M.ペデルセン
J.アンドラウアー
MI
32 83 LMGTE Am リシャール・ミル・AFコルセ フェラーリ488 GTEエボ L.P.コンパンク
L.ワドゥ
A.ロベラ
MI
33 85 LMGTE Am アイアン・デイムス ポルシェ911 RSR-19 S.ボビー
M.ガッティン
R.フレイ
MI
34 86 LMGTE Am GRレーシング ポルシェ911 RSR-19 M.ウェインライト
R.ペーラ
B.バーカー
MI
35 88 LMGTE Am プロトン・コンペティション ポルシェ911 RSR-19 R.ハードウィック
Z.ロビション
H.ティンクネル
MI
36 98 LMGTE Am ノースウエストAMR アストンマーティン・
バンテージAMR
P.ダラ・ラナ
TBA
N.ティーム
MI
37 777 LMGTE Am Dステーション・レーシング アストンマーティン・
バンテージAMR
星野敏
C.スティーブンス
藤井誠暢
MI

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