――数多くのドライバー仲間ともル・マンで会ったと思いますが、スモールトークの中で受けたあなたの感想は?
MB:僕がル・マンのパドックで見聞きした様子では、誰ひとりとして開発でトラブルなしのマシンはなかったということだ。みんな何らかしらのトラブルを抱えており、それを解明する、改良するのにどれだけの時間や人員を費やしてきたか……。
MB:それゆえに、記念すべき100年目の歴史的なル・マンで総合優勝を誰もが目標とし、それに向けて準備を重ねていたものの、事前にトラブルのすべてを解決してスタートしたマシンは一台もなかったのではないだろうか。本来ならば開発段階で済ませたい、済ませておかなければならなかった事項も、次から次へと起きてしまうトラブル対処をしている途中にもレース活動があり、またそこから新たなトラブルが起きる。さまざまなことが追いつかなかったというのもあるだろう。実際に我々ランボルギーニが現在開発段階であるだけに、手に取るようにその様子が分かるよ。
MB:来年にはランボルギーニに加え、アルピーヌやBMWも参戦するが、今季のハイパーカークラスと同様なことが起きると推測する。『信頼性』を得るには、多くの『経験値』が必要だ。
――ランボルギーニとは互いの本社がすぐご近所にあり、イタリアを代表する自動車メーカーのフェラーリが、一大大快挙を達成しましたね。
MB:フェラーリは速さだけでなく、開発時間が短かったマシンの高い信頼性を示したことは、本当に素晴らしい仕事をしたと思うし、その努力が実った。先に述べたように、新マシンで信頼性を得るのは、本当に想像を絶する困難さとあり、彼らの快挙には同じイタリア人として素直に栄誉を称えたい。
――さて、あなたも参戦するスパ24時間レースですが、ル・マンで総合優勝したフェラーリのドライバーらをはじめ、数多くのトップドライバーが参戦しますね。とくに昨今ではヨーロッパのメーカーに所属し、世界で活躍するワークスドライバーには、ひとつのカテゴリだけではなく、どのマシンをドライブしても速さや成功を求められますが、ドライバーとしてのその大変さや魅力とは?
MB:次の異なるカテゴリのレースまでに、非常に短時間しかなく、その短時間に自身をスイッチでき、どのマシンにも対応できる適応力と才能が必要とされる。また、他のふたりのチームメイトとマシンを共有しなければならないので、自分がドライブできるわずか数ラップの内にマシンに順応しなければならない。だが、その適応力は僕の得意としていることのひとつであり、GT3であろうがプロトタイプであろうが、すぐにフィーリングを掴める。
MB:スパ24時間レースはGTカテゴリで世界最高峰のレースであり、自動車メーカーやワークスドライバーにとって、ポテンシャルが試されるレースだ。このすさまじく高いレベルの中で勝つことはとんでもなく難しく、チャレンジングなレースであるだけに、誰もがここで頂点に立つことだけを考えて挑んでいる。
MB:フェラーリのドライバーをはじめ、プロのドライバーは皆思っているだろうけれど、LMDhだけでなく、どれに乗っても『一番になりたい、なってみせる』という意志と実力。それが結果的には、ワークスドライバーに求められる能力であり、そうでなければならないと思う。WECやル・マンも同様に、このとんでもなく高いレベルの中でのチャレンジが、プロドライバーとしてのなによりも魅力だろう。

