更新日: 2023.09.08 15:56
「GRにメーカーの垣根はございません」中嶋一貴副会長が語るWECモンツァ戦の“反省”と宮田莉朋の将来
そして今回の富士で注目されているのが、宮田莉朋のWECデビューだ。既報のとおり、LMGTEアマクラスのケッセル・レーシング57号車フェラーリ488 GTE Evoで木村武史、スコット・ハファカーとともにエントリーが決まった宮田だが、ケッセル/木村側からの打診をTGR WECチャレンジドライバーである宮田に伝えて出場意思を確認したのは、一貴副会長だった。
「最初は僕もびっくりしました。火曜日の朝というタイミングでしたしね。ただ、そういう話をいただけるのはありがたいことですし、木村さんも莉朋を念頭に最初からお話ししてくれたようで、やはり今年WECのチャレンジプログラムとしてやらせてもらっている(宮田をチャレンジドライバーに選出している)ことも何かしらトリガーになったのかなと思うと、今年それをやっていてよかったと思います。もちろん、彼がスーパーフォーミュラとスーパーGTで活躍して、彼自身が『海外に行きたい』と口にしていることも、今回の機会につながったと思っています」
木村と一貴副会長は当然面識があり、WECの現場で顔を合わせれば「挨拶だけでなく、いろいろな話をさせていただいている仲」だという。「同じ“日本代表”として、こうしてコラボレーションできることはありがたいです」。
一貴副会長自身が今年のスーパー耐久・富士24時間レースにニッサンZをドライブして出場したことも記憶に新しいが、最近のトヨタGAZOO Racing内では、“メーカーの垣根”というハードルはほとんど意識しなくていい状況のようだ。
「とくにトヨタGRには、垣根というものはございませんので(笑)、こういう話はウェルカムです。ただ、今回はタイミングがタイミングだったので、莉朋もスーパーGTのテストをやりながらWECの準備ということで大変だったでしょうが、こうやって臨機応変に動けるのがモータースポーツの醍醐味だと思います」
宮田はここまで、ル・マンとモンツァでTGR WECチームに帯同しただけでなく、ドイツ・ケルンのTGR-Eでシミュレーター業務も行っている。自宅にシミュレーターを持つ宮田だけに、その部分の能力には当初から一貴副会長も期待を寄せていた。むしろ、宮田が一貴副会長を驚かせたのは、それ以外の部分だったという。
「シミュレーターでのパフォーマンスは、レギュラードライバーより速くておかしくないと思っているので、そこは期待どおりです。あとはコミュニケーションの部分で、僕が想像していた以上にちゃんと準備をしてきているというか、ちゃんと海外を見据えて日本でも何かしらやってきたんだろうな、ということがすごく感じられたので、より『サポートしたいな』という気持ちにさせてくれます」
宮田の今後については「走ることは心配していないので、できる限り海外でいろいろと経験を積んでもらえればと思いますし、成長できる環境を提供したい」と一貴副会長。その“成長できる環境”、具体的には海外での参戦に向けたアウトラインは、徐々に固まりつつあるようだ。
「まぁ、いろいろと話は進めていますよ……トヨタからの発表までは言えませんけど(笑)。ただ、彼の今年のパフォーマンス、とくにスーパーフォーミュラで(現在)チャンピオンシップリーダーであることは、非常に強いインパクトがあるので、その部分では(対外的に)話がしやすい状況にはありますね」
今週末のWEC富士では、トヨタGAZOO Racingのタイトル争いとともに、将来を見据えた宮田のパフォーマンスにも、大きな注目が集まる。