ヴァンウォール・バンダーベル680(LMH)は、ウインドシールドだけでなく、ご丁寧にヘッドライトにもレーシング・オプティクス製のテアオフが張ってありました。ル・マン24時間ならまだしも「富士6時間で必要?」と思いましたが、予選後に確認してみたら「テアオフなし」でした。あれはなんだったんだろう。
ヴァンウォールついでに空力のディテールを見てみましょう。凝りに凝っているな……くらいしかわかりませんが、複雑怪奇です。フロントもリヤもそうですが、えぐるのが好きなのでしょうか。
キャデラックVシリーズRのコクピットです。ステアリングはコスワースの既製品のよう。センターパネルに前後のブレーキバランスを調節するダイヤルが見えます。その下のダクトにR、F、STIFF↑ SOFT↓の文字が見えますが、どこかに操作するレバーなりがあるのでしょう。
前後それぞれ、アンチロールバーの硬軟を調節することが可能です。もともとはIMSAのDPiに機能が備わっており、DPiの実質的な後身であるLMDhはその機能を受け継ぎました。それに合わせFIA/ACO側のハイパーカーであるLMHにも搭載可となり、2023年シーズンに投入されたトヨタGR010ハイブリッド・バージョン2(チーム内ではV2=ブイツーと呼んでいるそう)にも、前後アンチロールバーの調節機能が追加されています。
ポルシェ963(LMDh/シャシーはマルチマチック製)のフロア前端を見てみます。上下に分割されたブレーキダクト(上段はキャリパー、下段はディスク冷却用)にも目を奪われますが、注目はその奥。崩れ落ちる寸前の大波のような庇状になっています。現行F1のフロア前端の処理にも似ていて、湾曲したベーンは空気を外側に流す意図に見えます。F1と同様、フロア前端コーナー部で負圧を発生させる狙いでしょうか。
ポルシェ963の4.6L・V8ターボエンジンが見えます。中央でV字に分岐しているのがヴァン・ダー・リー製の2基のターボチャージャーと排気管で、排気をVバンクの内側にレイアウトした“ホットV”であることがわかります。コンプレッサーで加圧されたエアは、コンプレッサーのすぐ前にある空冷インタークーラーに向かい、そこから左右に分岐してVバンク外側の吸気ポートに向かっています。空気の抜けが良さそうには見えないのでインタークーラーの効率が心配になりますが、通常、左右に1基ずつ用意するインタークーラーが1基で済むので、ある意味効率的ではあります。
V字の排気系と呼応するように、ウォーターラジエターなどの熱交換器がサイドポンツーン側にV字に配置されています。フェラーリ499PはF1ライクな前傾レイアウトですが、ポルシェ963はオーソドックスな直立斜め置きとなっています。
ベルハウジング〜ギヤボックス上面には、プッシュロッドで作動するダンパー/コイルスプリング/サードエレメント(ヒーブ制御)がレイアウトされています。鮮やかな青が特徴的なケースの色が示すようにマルチマチック製でしょうが、シャシーを作っているのがマルチマチックなので当然ですね。ポルシェは919ハイブリッドの時代からマルチマチック製ユニットを使っています。