更新日: 2023.11.03 12:42
ThreeBond Racing 2023スーパーフォーミュラ第8戦&第9戦鈴鹿 レースレポート
シーズン最終戦!
2023年度全日本スーパーフォーミュラ選手権シリーズ最終第7大会(第8戦及び第9戦)が、10月28日(土)~29日(日)にかけて三重県の鈴鹿サーキットで開催された。
前大会から約2カ月のインターバルに、チームはこれまで行ってきた数々のセッティングのなかから課題や方向性を協議し、好感触を得た要素を組み合わせる方向で持ち込みセッティングを練り上げてレースウィークを迎えた。27日(金)のフリープラクティスで福住仁嶺選手は出走22台中11番手のタイムを記録し、翌日の公式予選に向けて好感触を得た。
Round.8公式予選
28日(土)は朝から晴れ、午前9時45分から10分間、公式予選Q1B組セッションが始まった。福住選手は出走11台中6番手、トップから0秒695後れの1分38秒270を記録、Q2セッションヘ進出できる6台の中に食い込んだ。
午前10時5分からQ1A組、Q2B組を突破した各6台計12台によるQ2セッションが始まった。しかしタイヤのウォームアップ中、コース上で発生したアクシデントを処理するため、セッションは赤旗で中断。
10時23分にセッションが再開され、福住選手はタイヤのウォームアップをやり直しタイムアタックに入ったが、デグナーカーブ1つめに進入しようとしたところ、スロットルが戻らなくなるトラブルが発生。
コーナーを曲がりきれなくなった福住選手はコースオフしながらイグニッションスイッチを切り、バリアに激突することなくマシンを止めることに成功した。しかし、タイムアタックはそこで終わり、Q2で記録したタイムはウォームアップ中の2分08秒836にとどまって、Q2セッションでは最下位の12番手に終わった。しかし、赤旗中断の原因車両が規則によりQ2最下位グリッドヘ後退したため、福住選手のスターティンググリッドは繰り上がって11番手と決まった。
Round.8決勝
28日(土)14時30分、快晴ながら気温21度、路面温度26度と冷え込むなか、第8戦決勝レースがスタート。
チームは、公式予選で福住選手が得た感触を基に、決勝レースに向けて大幅にセッティング変更を施し、福住選手をレースに送り出した。
福住選手は11番手グリッドから好加速、1コーナーまでにふたつポジションを上げ、9番手でレースを始めた。しかし、レース序盤から急激にリヤタイヤのグリップダウンが起き、オーバーステア傾向が強まる一方、トラクションが不足していくのを感じた福住選手は、チームに状況を伝え、9番手ポジションを守りながらレース中盤からのレース展開を考え始めた。
ところが4周目の130Rで大規模な接触事故が発生し、レースは赤旗で中断された。福住選手は規則に沿ってホームストレート上に車両を停止させ、チームは車両に対する作業が許可されたのを受けて、レース再開後にリヤのグリップを向上させるためのセッティング変更を行って再スタートに備えた。
しかしレースはそのまま打ち切れられることになり、第8戦の正式結果は3周目終了時点の順位で決まった。福住選手の順位は9位で、第4戦オートボリス以来のポイント1点(赤旗打ち切りにより得点は一律半減)を獲得してレースを終えた。
Round.9公式予選
29日(日)も朝から晴天となった。午前8時50分から前日同様Q1セッション、Q2セッションで段階的に順位を決めるノックアウト方式で公式予選が行われた。
福住選手はQ1B組に出走し、出走11台中5番手、トップから0秒862後れの1分37秒743を記録して第8戦に引き続きQ2セッションヘ進出した。
午前9時25分から7分間で行われるQ2セッションを走り出した福住選手はタイヤをウォームアップしてタイムアタックにかかった。
しかし、前日の公式予選で福住選手が感じた感触を基にチームが施したセッティングが限界付近でコントロールが難しくなるピーキーな特性を示したこともあり、ブレーキングで車体が跳ねて思うような減速ができず、タイムはトップから1秒326後れの1分37秒768にとどまり、スターティンググリッドは11番手と決まった。
Round.9決勝
29日(日)14時30分からシリーズ最終戦JAFグランプリの決勝レースが始まった。
チームは今シーズンの集大成として思い切ったセッティングを行って決勝レース前のウォームアップ走行で状況を確かめたが、出走20台中14番手とタイムは伸び悩んだ。これを受けて、車高を公式予選時より下げ、異なる方向でセッティングをやり直してマシンをスターティンググリッドヘ送り出した。
ところがスタート合図を受けてクラッチミートした際、急激な回転の低下を感知すると自動的にクラッチを切っていわゆるエンストを防止する『アンチストールシステム』が作動してしまい、福住選手の加速は鈍った。この結果、11番手からスタートした福住選手は1コーナーまでに後続車に次々先行され16番手まで大きく順位を落とした。
チームは規則で定められた最少周回数で福住選手をピソトに呼び寄せタイヤ交換義務を果たしてレース後半に追い上げる戦略を選び、福住選手は10周終了時点でピットイン、タイヤ交換を終えてレースに復帰した。
ところが車高を下げるセッティングの結果、コーナリング時のロールを抑制しきれない傾向となって車体のアンダーフロアが 路面との擦れで徐々に削れていたためか、フロアパネルに穴が開いてしまった。
この影響で車両の空力特性が大きく変化したが、当初は原因がわからずタイヤのスローパンクチャーを疑ったチームは福住選手を21周目に緊急ピットインさせタイヤを交換してコースに送り戻した。しかし状況は変わらず、走行続行が困難となったのでチームは26周で福住選手をピソトに呼び戻しリタイアを決めた。
福住選手は、第8戦でポイント1点を加え通算ポイント9点、シリーズランキング16位、ThreeBond Racingはチームランキング11位でシーズンを終えた。
ドライバー福住仁嶺コメント
「第8戦のQ2では、スロットルが戻らなくなるトラブルが出てしまい、かなり怖い思いをしましたが、大事に至らず良かったです。決勝では、スタートでふたつポジションあげることができたものの、ペース的には今回も厳しいなという感じでした。ただ事故が起きてしまい、そのままレースが終わったので、9位のポジションを守ることができました。もう少し走ってデータをとりたかったので残念ですが、事故に関わった選手が無事で安心しました」
「第9戦のスタートは、アンチストールが働いてしまい、大幅に順位を落とすことになりました。その後は今シーズン最後のレースなので、なるべくクリーンに終わりたいと願って、最後までコース上に留まることに意識を集中していました。ペースとしては良くも悪くもないと言う感じでした。でもフロアに穴が開いてしまい、まともに走ることができなくなり、完走するために走り続けることも危ない状況になったので、後からトップのクルマも近づいていた状況も考え、レースの邪魔をしないようにリタイアを決めました」
監督道上龍コメント
「第8戦の決勝では福住選手が頑張つてくれてスタートでジャンプアップしたので、結構ワクワクしていましたが、その後はアクシデントが起き、赤旗でレースが中断されました。リヤタイヤのグリップダウンが急激に進んでいたため、グリッド上でセッティングを少し変えましたが、そこからスタート出来ずにレースが打ち切られ、セッティング変更の結果がどうなっていたかを確かめることができませんでした」
「第9戦ではフロアに穴が開いてしまいリタイアしました。車高を下げるセッティングがちょっと行き過ぎたのかもしれません。今シーズン最後のレースを、もう少し良いかたちで終わりたかったですが、最後までドライバーには申し訳ないレースになってしまいました。今年1年通して考えると、セッティングを結構大きく変えてもフィーリングがあまり変わらないという傾向が消えませんでした。どこか根本的な部分に何か課題があるとしか思えないので、シーズンは終わりましたが、ルーキーテストから考えて行きます」
ドライビングアドバイザー塚越広大コメント
「福住選手は本当にいいドライバーでスピードもあるし、今シーズンを通して、今さらドライビングに関してアドバイスすることはなく、データを見ながらエンジニアとドライバーの間に立って福住選手がどういうことで困っているからこういう方向にしようと相談する橋渡しの仕事をしていました」
「昨年よりは予選の結果も良くなり、決勝でもポイントを獲得はできたりもしたので、チームとしては前進した面はありますが、その先は本当に僅差のなかで戦わなければならず、トップチームはもっとデータをいっぱい持って細かいところを突き詰めているので、そこまではたどり着けなかったのは悔しいし、まだまだだなと思います。本当はやりたかったけどできなかったことも多く残り、福住選手のパフォーマンスをもっと引き出せるようなクルマ作りに貢献したかった、と言うのが正直な思いです」
チーフエンジニア伊与木仁コメント
「長いインターバルがありましたし、前戦のもてぎが散々の結果だったので、いろいろ考えてクルマを持ち込みました。ただ、予選はニュータイヤのパフォーマンスでいろいろ助けて貰えますが、決勝ではどうなのか、レースが赤旗で打ち切られてしまったためしっかり確かめることができませんでした」
「第9戦に向けては予選の状況からセッティングを大幅に変えましたが、予選はQ1を問題なく突破できてまずまずの手応えがあったものの、決勝前のウォームアップではあまりフィーリングが良くないということで、スターティンググリッドでプラスアルファのセッティングをしたら、そのせいでフロアに穴を開けてしまう結果となりました。今回は最後のレースだと思って攻めたのですが、ちょっと攻めすぎました」