更新日: 2024.08.26 19:27
無線と本人コメントで振り返る『太田vs牧野』大熱戦「どっちか決めてくれないと分からないじゃん!」/第5戦もてぎ
2番手に上がった時点で太田との差が約11秒あった牧野。この後も杉崎エンジニアから大湯を含めた付近の状況が逐一伝えられていたが「もうやることは分かっているから大丈夫!」と振り切り、太田とのギャップを縮めていった。33周目終了時点で、両者の差は1.5秒まで縮まった。
このタイミングで公式映像でも流れた「後ろ任祐ね。クリーンファイトでお願いします」という吉田エンジニアの無線が太田へ飛んでいたが、同じように杉崎エンジニアからも牧野に対して「クリーンファイトで頑張ろう! クリーンファイトでお願いします」と伝えられていた。
そして、残り3周。ついに両者のバトルが本格化するが、この時点での各OTS(オーバーテイクシステム)残量は太田が94秒だったのに対し、牧野は96秒とほぼ同じ。SFgoで振り返ると、34周目の最終ビクトリーコーナーを立ち上がったところで、牧野がOTSをオンにした。
これに対し逃げる太田は「ちょうどメインストレートで(牧野がOTSを)使い始めたのを大型ビジョンで見て『相手が使っている』というのは把握した気がします」。1コーナーに入るタイミングで吉田エンジニアからも「今、任祐がOT使っている!」と無線が入り、太田も2コーナーを立ち上がったところでOTSを発動。ここから手に汗握るバトルが始まった。
ミニマムのタイミングでタイヤ交換をしている分、タイヤ的には苦しくなっている太田。オンボード映像を見てもリヤタイヤをスライドさせる動きが増えていた。
「1コーナーでインから来られて、3コーナーも危なくて……けっこうギリギリで抑えていた感じでした。でも『ここで(OTSを)切ると、も相手がコース後半も使い続けていたら仕掛けに来るだろうな』と思ったので、切らずにそのまま行きました」(太田)
コース前半で決定打を見出せなかった牧野だが、後半で真後ろに近づくとヘアピンでインに飛び込んで一瞬前に出る。しかし、クロスラインを取った太田が抜き返す。
直後の90度コーナーでは牧野がアウトから襲いかかるが、ここでも太田は一歩も引かず。35周目のバトルは太田に軍配が上がった。
■「最高のチームメイトとチームに恵まれてレースができている」
この時点でのOTS残量は太田が19秒で、牧野が6秒。36周目はお互いインターバル(OTSが使用不可の時間帯)を挟むため、ファイナルラップでの一発勝負かと思われたが、90度コーナーで太田がスピンを喫し、バトルは思わぬ幕切れを迎えた。
「何とかあの周を抑えられたし、向こうも残り数秒しかないという状況だったので『これはもらったな』と正直思いました。でも、ああいう結末になるとは思っても見なかったので……残念ですね」(太田)
「残り3周のところで仕掛けていって、90度コーナーまでバトルしていきましたけど、そこで決め切れなかったです。そこでOTもほぼ使い切って残り6秒くらいだったので……勝負には負けたなと思っています」(牧野)
終わり方は予想できないものになってしまったが、“クリーンファイト”という指示が出ていながらも、手に汗握るバトルを繰り広げたふたり。もっとも白熱した35周目については、改めてこのように振り返った。
「僕たちは開幕戦の鈴鹿でもバチバチにやっているので、そこはお構いなくというか……。僕は僕でヘアピンは無理やりいったし、彼は彼で90度コーナーは無理やりブロックしてきました。でも、お互いに信頼しているからできたバトルだったのかなと思います」(牧野)
「開幕戦もそうでしたけど、やっぱりお互いのことを信頼しているからできるバトルだと思いますが、今日に関してはちょっと……ギリギリだったかなと(苦笑)。90度コーナーに関しては僕もアグレッシブに行き過ぎたところもあって、そこに対しては『ゴメンね!』という気持ちはあります」(太田)
「チームに『クリーンファイトで!』と言われましたが『でもトップ争いなんだから、そりゃ激しくはなるよねとは思いました。でも、ああいうバトルがあるのがSFだし、最高のチームメイトとチームに恵まれてレースができているなと思います」(太田)
それぞれのコメントにもあるとおり、3月の開幕戦鈴鹿でも互いに一歩も引かないバトルをみせていたふたり。今季は富士と鈴鹿で2大会4レースが残っていることを考えると、またどこかで一歩も引かないチームメイト対決が見られるかもしれない。