“火サス”ばりの崖っぷちキャリアを支えたサウナでの一言「一番いいものも、どん底も味わった」【国本雄資SF引退会見全文】
──最終戦の段階では、もう決めていた?
「でも最終戦で優勝しようと思っていたので……結果が出なかったら、という感じで。優勝するつもりで毎回サーキットには来ているので、そこで自分が思うような結果を残せたらもう1年やろうと思っていたし。ただ、最終戦も思うような結果を残せなかったので、そこで決めました」
──最終戦後にSNSで発表したタイミングについて。
「レースが終わって帰るときに、星野一樹さん(監督)には『今年で辞めます』というのは伝えて、その後はトヨタの方に伝えたりとか、お世話になった方に伝えていって。こういうの(会見)を開いてくれるとかはそのときは決まっていなかったのですが、そのトヨタの方とか、JRPの方がこういう会を開いてくれるとか、いつ発表した方がいいとか……そういうのを準備して(発表タイミングを)決めました」
──寂しさや未練はないか。
「正直、悔しいなというのはあります。でもこれを続けて行って、“苦しい”だけしか残らなくなってしまうのは一番嫌だったので、やるからには結果を残したくてずっとやってきたので、未練と言ったら変ですけど、悔しさは残っています」
──最終戦でクルマを降りる際には、マシンを労うような様子もあった。
「初めて、レースをしていて『楽しいな』と感じました。結果が出ているときは楽しいですけど、結果が出ていないレースでも全開全力で走って、結果を気にせずにスーパーフォーミュラを堪能できたので、最後のレースはちょっと楽しかなったなと感じました」
「あと、(阪口)晴南くんと最後のバトルになって、それも面白かったし、本当にいいクルマでスーパーフォーミュラを走っているだけで……もうドライバーとしてワクワクするようなクルマでこうやってレースをさせてもらったのはすごく感謝ですね」
「でもやっぱり降りるときは『これで終わりか』というような寂しさもありつつ、もっとこの楽しさに早く気づいていたらよかったのになと思いましたけど……楽しかったです」
──タイトル獲得前年にはモノコックの問題もあったが、人知れず苦しんでいるドライバーに対して思うところは。
「僕は、一番いいものも見せてもらったし、一番どん底も味わったドライバーだと思うので……あとはやっぱり言えること・言えないことというのが、モータースポーツの世界ではものすごく多くて、そこがちょっと難しいところではあるし、ミドルフォーミュラなどですごく速くてトップに上がってきて、技術的にはトップレベルと変わらなくても、そこで順位がついてしまうジレンマみたいなものもあるし……。でも結果が出ないからといって頑張っていないわけじゃないし、もちろんそれはチームのスタッフもそうだし。その、もがいているところにもっとみんなフォーカスして行けたら、もっと何か頑張る勇気も湧くだろうし」
──阪口選手はSNSで「飲みに行くとチャンピオン獲ったときの同じ話ばかりしてくる」と。
「僕もね、酔っ払ってるんであんまり覚えてないんだよね(笑)。まぁ、そんなに話してないですよ、1回か2回くらいなんですけど、(阪口が)盛ってるんですよ(笑)」
──シリーズのお手伝いというのは、どういうことをイメージしているか。
「何も決めてないです」
──とりあえずスーパーフォーミュラの写真を撮る?(※国本は写真が趣味。WEC富士戦ではTGRのパスでフォトグラファーも務めた)
「いや……まだなにも考えていないです。今週(鈴鹿に)カメラ持ってこようかと一瞬思ったんですけど、さすがに『ちょっと違うよな』っていうのは自分でも分かったので(笑)」
──ドライバーの育成やチームの運営、ファンとの交流含めた仕事などへの興味は。
「いままで育成に携わったこともほとんどないですし、チームの仕事内容というのもあまり理解していないので、どれが自分に興味があるかというのも分からず、本当にいまは何も言えない状況です。目標がないって言ったら変ですけど、今後何をしていこうかというのはまったくいま考えていないので。ただ、もう少し経ったら『こういうことやりたいな』とか、開発も含めてチームに携わるとか、ファンに向けてとかいろいろ出てくると思うので、そのときにまたおいおい考えたいなと思います」