チームには早くも“一瀬流”が導入されており、それによってメカニックたちもスムーズに作業を進められていた様子。それが、雰囲気が良くなっている要因のひとつでもある模様だ。

「そこはコミュニケーションを密にやっていくだけですね」と一瀬エンジニア。

「たとえばクルマが走っている時も『(メカニックに対して)次に何をやるか分からないけど、多分この3パターンのどれかになると思うから、この工具用意しておいて!』という話はしています。そういうオペレーションに関しては(自分が所属する)チームが変わったからどうということはなくて、先を読んで動いているエンジニアは、だいたいみんなやっていることです」と何か特別なことをしているわけではなく、先手を打つ指示出しをしていたという。

 昨年までのTEAM MUGENとは異なり、ThreeBond Racingは1台体制のチーム。よく「2台体制だとデータの比較ができる」「1台の方がチームのリソースをすべて集約させられる」と、体制の違いについてはこれまでも比較・議論されてきた。

 今回、初めて1台体制のチームに携わることになる一瀬エンジニアは、どう思っているのだろうか。

「1台体制の難しさは、アグレッシブなことをやるときにバックアップになる号車がいないとか。もし何かあってクルマが壊れたときにデータがまったく取れないとか。Q1のAグループ・Bグループで(路面コンディションが)どうなっているか分からないとか。あとは2台でセットアップを分担して試すことができないとか……諸々ありますね」

 そう語る一瀬エンジニアだが「でも、それってどういう場面で効いてくるかというと、ポールポジション争いをするような時に効いてくる話。ただ、今の12号車はその次元にいないので、気にしていないです。まずはQ1を安定して通るというところがこのチームの課題なので」と、チームの現場を分析し“将来トップ争いに加わるために通過しなければならない目先の目標”をしっかりと見定めていた。

 その目標について聞くと「開幕戦では5~10位に入れれば御の字かなと思います」と明言。テスト1日目でトップ3圏内に入れた理由も、こう分析する。

「実際に午前のセッションでみると、有力チームはほとんどタイヤを使っていなかったですし、午後も坪井(翔/VANTELIN TEAM TOM’S)選手とかがめちゃくちゃトラフィックの中でアタックしていました。みんなそういう(本来のパフォーマンスを引き出せていない)感じだったと思います。だから、ちゃんとした勢力図は見えていないので、この順位が僕たちの本当の順位ではないと思っています」

 おそらくファンの間でも、三宅の12号車が好タイムを連発する姿をみて、今季に対して期待を寄せている人も多いだろう。しかし、一瀬エンジニアは「(周りから期待してもらえるように)そう思ってもらえるようなリザルトだったのは嬉しいところではありますけど……そんなに甘くないですよ!」とキッパリ。

 それでも、“これまでトップチームに在籍して後方から迫ってくるライバルを警戒するポジション”から、“昨年ノーポイントだったチームに移籍して先行するライバルに追いつき追い越すポジション”に変わったことは、一瀬エンジニアにとっては新たな挑戦になっていることは間違いない。まさに心機一転、新たな環境を楽しんでいる表情をしていたのが印象的だった。

一瀬俊浩エンジニア
2025シーズンより三宅淳詞(ThreeBond Racing)を担当する一瀬俊浩エンジニア

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