「Q2のセクター1は2コーナーでちょっとミスをしました。Q2とQ3ではタイヤのウォームアップ自体も変えていませんし、変えちゃいけなかった」と山本。

「セットアップも内圧もQ2からQ3に向けて変えたので、そこで僕のウォームアップや走り方を変えてしまうと全部崩れてしまう。ですので、僕の走り方、ウォームアップは変えずにクルマ側で調整してもらいました」

 ウォームアップを1周目にした理由を山本は以下のように説明する。

「それでもQ3の2コーナーが完璧だったかというとまだ少し、失敗しています。それが1周目でアタックに入るリスクなんです。1周目にアタックに行くと(タイヤの温まりやグリップが把握しきれないままで)、2周目にアタックに行くよりも1コーナー、2コーナーが圧倒的に不利になる。そのリスクがあるから2周目にアタックに行きたくなるし、フロントのスクラブ(表面の皮を剥いて温まりをよくする)をしていたチームもあったと思うんですけど、そういう対策をしたくなるんです」

「それでも、逆に2コーナーさえ無事にクリアできれば、絶対的に1周目の方がグリップ力が生かせます。セクター4の最後のフィニッシュラインまでタイヤのグリップがもつ。それが2周目のアタックにしたり、フロントタイヤをスクラブしてアタックしたら、1~2コーナーはいいけどヘアピンあたりからグリップがルーズになってくるんです」

「鈴鹿のすべてのコーナーで完璧なグリップで走れることなんて、それこそ5年やって数回あるかないか。ですので、どこのコーナー、セクターでタイムを失ってでも他で得することができるのか。どこを我慢できるのか、どこでタイムを稼ぐのか、という見極めを今回はうまくできたと思います。それがうまくできた人が今回の予選で上位に行けたのではないでしょうか」

 山本が『鈴鹿マイスター』と言われて久しいが、その所以はこのようなところにある。さらに山本が続ける。

「予選の時に気温と路温が上がってくれたことも僕には良かったと思います。これより少しでも気温路温が低かったり、午前中の雨が乾ききらずウエットパッチが残っているような状況だったら計測2周目のアタックの方がよかったと思います。ウォームアップのペースをどれだけ上げられるか、路温気温は無線でずっと聞いていました。その路温気温に合わせて自分の入り方、ウォームアップの仕方を計算しながら走っていました」

 その時の環境条件を把握できれば、自分のすべきことは瞬時に理解できる。山本には、鈴鹿を誰よりも速く走るための絶対基準が存在しているようだ。

「特に鈴鹿はこれまでいいイメージがありますし、いいフィーリングも体に残っている。どこを抑えればいいというツボみたいなものが自分の中にあるのかもしれない」

「とはいっても、Q1、Q2をギリギリで通過するような状況だったらそんなことを考える余裕もなかったかもしれない。幸い、今回はクルマも走りはじめから調子が良かったし、セッションが進むごとにセットアップのちょっとした微調整に自分の気持ちを割く時間と心の余裕があったことが、いい方向に向いたのかなと思います」

 いい時の山本は手が付けられない。そしてその場所が得意の鈴鹿サーキットであればなおさらだ。2013年、この最終戦鈴鹿でスーパーフォーミュラ初タイトルを大逆転で獲得したときの山本は、まさの今日のような山本ではなかったか。

2018年スーパーフォーミュラタイトル獲得条件 早見表
タイトル獲得条件 早見表

2018スーパーフォーミュラ最終戦 鈴鹿予選日
予選PPを獲得した山本のマシンのタイヤ表面を眺める7番手の可夢偉。

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