「F1のコーナーリングの進入速度がそこまで高いかというとデグナーの飛び込みで250~260km/hとかですし、ブレーキングもそんなに変わらない。ただ、鈴鹿の1周のタイムがスーパーフォーミュラと比べてF1は7~8秒も速くて、クルマのトータルの違いとして圧倒的にF1は加速が速いので、普段走って慣れていると違うリズムで次のコーナーに来てしまう。鈴鹿の普段のリズムが体に染みついている分、そこの感覚の部分でのアジャストがなかなか大変だったかもしれないですね。それでもF1マシンに乗ったのは1セッションだけだったので、今回スーパーフォーミュラで乗りづらいかというと、そんなことはないと思います」と杉崎エンジニア。
F1鈴鹿を終えてからの山本尚貴の様子も、「今回、鈴鹿に来る前に事前にいろいろと打ち合わせをしましたが、ここに来てからも普段と同じように落ち着いていますし、今日の雨のセッションでもできることを粛々とこなしましたので、(ドライ予想の)明日はまたイチからのスタートです」と、いつもどおりのアプローチで進んでいることを話した。
一方、1ポイントで追う立場のランキング2位、ニック・キャシディ。チャンピオン獲得への手応え、そして今週末の戦い方について担当の小枝正樹エンジニアに聞いた。
「もちろん、やってみないとわかりませんが、ここまではいい流れで来ていることはたしかです。前回の岡山でも結果にはつながらなかったですけど速さはあったので、それをうまく鈴鹿にアジャストできれば十分、チャンピオン獲得の可能性はあると思っています」と、まずはパッケージとしての手応えを話す小枝エンジニア。
気になるのは、キャシディと小枝エンジニア、そしてトムスチームは翌週のスーパーGTでもKeePer TOM’S LC500がランキング2位でトップのWAKO’S 4CR LC500と実質一騎打ちで、2週連続でタイトルを争うことになる点。それぞれ別カテゴリーとはいえ、チームとしての負担は当然大きい。
「ドライバーもそうだと思いますが、しんどいです(苦笑)。なにかいじめられているような気分です(苦笑)」と、プレッシャーと作業量の多さを認める小枝エンジニア。トムスとしてはDTM最終戦のホッケンハイムにもチームとして参戦しており、厳しいスケジュールのなかでの戦いとなる。
そのDTM最終戦ではキャシディが練習走行、そして決勝レース1と2度、雨のセッションでクラッシュしており、ナーバスになっている姿が見られたが、今回のスーパーフォーミュラ最終決戦に向けてメンタル的な不安はないのだろうか。
「それはないと思いますね。あのイベントはセットアップもドライビングの仕方も含めて普段やっていることと全然違うので、それで何かこちらが影響を受けるというほどのものではないですね」と小枝エンジニア。
「ドライバーの気持ち的な部分はわからないですけど、本人は切り替えていると思いますよ。ひとつのカテゴリーだけで戦っているわけではないですからね。ここに来る前のミーティングでも、昨日、今日もいつもと同じ感じでしたし、今日の雨のセッションも『ドイツの時よリマシだろ?(笑)』とネタとして話していますので、大丈夫ですよ」と小枝エンジニア。
今週末の戦い方についても「とにかくこっちは前に出る必要性があるので、予選も最終結果もとにかくすべてにおいて前を狙っていくしかないという考えです」と、追う立場を強調した。
山本尚貴、そしてニック・キャシディともに、F1やDTMなど、世界トップクラスのカテゴリーでの経験を得て辿りついたスーパーフォーミュラ最終戦でのチャンピオン争い。異なるチームでの2連覇がかかる山本尚貴、そしてスーパーフォーミュラで初めてのチャンピオン獲得を狙うキャシディともに、さまざまな経験と期待を背負って今週末のレースに臨むことになる。
