野尻智紀とティクトゥムというふたりのドライバーを擁して2019年シーズンを迎えたTEAM MUGENは当然、2台のマシンを走らせてデータを集めることを前提としていたはずだ。
しかし2度もドライバーラインアップが変わると、その計画にも狂いが生じてしまう。本来ならば2台のマシンを走らせてデータを収集し、それらをもとにマシンのセッティングを決める。ところが今年のTEAM MUGENのように16号車の野尻は通年で参戦する一方で、15号車は短期間のうちにドライバーが代わり、なおかつ初参戦のドライバーが乗るとなると、データ収集や比較は難しく、1台体制のような形になってしまう。
中野監督は、この2回のドライバー変更によってチームが厳しい状況に立たされたことを認めた。
「16号車のパフォーマンスを上げるためにも、データを共有してお互いを高め合うことをイメージしてやろうとしていました。ドライバーが変わることでそれが実現できなかったというのは残念です」
「ただ我々は仕事を受けている側なので、このチームの半分は我々のチーム、もう半分はレッドブルのチームなので、我々の意見だけではどうしようもないこともあります。とにかく今できることをやるしかないのですが、チームとしては厳しいです」
「ひとりのドライバーに長く走ってほしいし、ドライバーのためにもそうですね。チームとしても少しでもいいデータを積み上げていくためには、続けることが重要ですから」
とはいえ最終戦の予選では野尻が2番手とフロントロウに並び、見事キャリア2勝目となる優勝を勝ち獲った。予選後、中野監督は野尻の2番手という結果について「エンジニアやチームが頑張ってくれたので良いセットアップを持ち込むことができて、それを野尻の経験で煮詰めた結果」と話した。
シーズン中に2度ドライバーを交代したことからも、レッドブルはドライバー育成の厳しさを国内モータースポーツに知らしめることになった。ドライバーに求められるのは速さだけではないというのはすでに明白だが、今回は単に育成プログラムを率いるマルコの厳しさのみならず、中野監督の言葉からも多角的な判断に基づくドライバー交代であったと言えるだろう。
現時点でマルコがスーパーフォーミュラを若手育成の場として最適なカテゴリーであると考えている以上、2020年以降もレッドブルの若手ドライバーがスーパーフォーミュラに参戦する可能性は高い。当然次に参戦するドライバーも速さ以外に様々なものを求められることになるだろうが、スーパーフォーミュラでどのような成長ぶりを見せてくれるのだろうか。ピエール・ガスリーに続くドライバーの誕生が待ち遠しいところだ。
