更新日: 2021.04.09 11:55
NTT Communications ROOKIE 2021スーパーフォーミュラ第1戦富士 レースレポート
4月4日(日)天候:曇り/雨 路面:ドライ/ウエット
迎えた4月4日(日)の決勝日は、朝から厚い雲に覆われるなか、午前9時25分から30分間のフリー走行が行われた。当然、大嶋にとっての課題は前日のトラブル後に見舞われたフィーリングの改善にある。大嶋はまずは1分22秒755というタイムをマーク。フリー走行の2番手となった。
しかし、ベストタイムより重要なのは、フィーリングが改善したかどうか。その点では大嶋は好感触を取り戻すには至っていなかった。このフリー走行に向けて施したセットアップ変更が、むしろ悪い方に向かってしまっていたのだ。ただ、“悪い方”が分かったことは収穫でもある。逆の方向にセットを施せば好転するはずだからだ。
決勝前のウォームアップでその確認を行った大嶋は、17番手から開幕戦の決勝レースに挑んだ。事前の天気予報は、この日の午後は雨だったが、スタート時点はドライ。ただしいつ雨が降ってきてもおかしくない状況だ。
迎えたスタートでは、大嶋は好発進を決めると、16番手でTGRコーナーへ。混戦のなか1周目に3台が車両にダメージを負うなど荒れた展開で、大嶋は14番手に浮上する。決して思い描いていたフィーリングではないが、上位陣から大きくは離されないペースで序盤のレースを戦っており、これまで苦しんでいたセットアップは改善していることが確認できた。
そして気になるのは、雨が降るのか降らないのか。降るのなら、そのタイミングでウエットタイヤに替えた方が良い。しかし降らないのであれば、10周目にピットインし、このレースで1回が課されているタイヤ交換義務をこなし、空いたスペースを走る方が空力の面でも有利で、ペースを上げられる。チームは雨雲の様子を見ながら、10周目にタイヤを替える決断を急遽下した。
僅差のレースで、タイヤ交換は1秒手間取ればコース上では大差となってしまう。今季新体制となったNTT Communications ROOKIEは、オフの間ベテランのメカニックから若手まで、ファクトリーで何度も何度もピット作業の練習をしてきた。10周を終えピットインした大嶋を助けようと、メカニックたちはその練習の成果をいかんなく発揮してみせる。片岡龍也監督が「練習含めていちばん」と語る極めて迅速な作業で大嶋を送り出し、同時にピットに入った#1山本尚貴を大きく先行することに成功したのだ。
ピットアウトした大嶋は、1分24秒台の安定したペースでラップを重ねていく。7周目ころから上空からは細かな雨粒が舞っていたが、路面を濡らすには至らない。大嶋は19周目にペースに優る#1山本の先行を許すものの、苦しいながら安定したペースでラップを重ねていった。
25周を過ぎる頃になると、細かな雨が強くなり始めた。レース後半にピットインしたライバルは、路温が低くタイヤが思うようにウォームアップせず、苦しい展開となっていった。
そんななか大嶋は、13番手前後を戦いチェッカーを目指していくが、路面の変化にともない、スリッピーな状況がライバルの足をすくう。そして迎えた39周目、大嶋は10位にポジションを上げチェッカー! コクピットの大嶋は自身が何位なのか分かっていなかったが、結果は見事入賞圏内。苦しい中ながら、1ポイントを獲得した。
たかが1点、されど1点。週末を通じて苦しい展開のなかで、一丸となって得たポイントは大きく、チームは喜びに沸いた。大嶋がもたらした1点は、次戦へ向けチームを盛り上げ、気持ちをひとつにする1点となった。
大嶋和也
「日曜のフリー走行まで苦しんだフィーリングは、昨年までも試していないような内容をトライした結果、パーフェクトではないにしろ、今週いちばんのクルマになったと思います。レース中も後半のペースは良かったと思いますね。路温が高い状態でのペースは決して良いものではなかったのですが、レース後半のコンディションのなかで速く走れたことは何かのヒントになると思います。土曜まではエンジニアもクルマが決まらず、良くない雰囲気だったこともあり、少しでも次に繋がるようなレースになればと思っていましたが、今週のイメージで得点ができるとは思ってもいませんでした。僕自身もフィニッシュのときに順位が分からず、戻ってきて驚いたくらいです(笑)。NTT Communications ROOKIEのスタートとして、嬉しい1点になりました」
片岡龍也監督
「レースは雨が降るとは読んでいましたが、後方からのスタートで空気の乱流もあり、ペースが上げられないこと、雨雲の接近が遅いことから、急遽ミニマムスティントでピットインすることにしました。その後のペースも決して楽なものではありませんでしたが、後半タイムも落ちず、結果として10位でフィニッシュすることができました。作戦も成功しましたし、大嶋選手の終盤のタイムも良かったので、次戦へ良いヒントになったと思います。正直、思い描いていた目標よりは低いものになりましたが、苦しい状況からポイント獲得ができ、チームのモチベーションという意味でも重要な得点となったと思います。オフの間、みんなでコミュニケーションをとり、チームとしてのまとまりもできたと思います。やってきたことが実を結んだのではないでしょうか」