横浜ゴム 2022スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿 レースレポート
【全日本スーパーフォーミュラ選手権 第3戦/鈴鹿】
決勝はウエットコンディションとなった鈴鹿での第3戦、終盤に鮮やかなオーバーテイクを魅せた松下信治選手が歓喜のスーパーフォーミュラ初優勝!!
2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦が鈴鹿サーキットで開催。予選日はドライ、決勝日はウエットと全く違うコンディションで争われたシーズン3戦目は、9番グリッドから着実なポジションアップを重ね、終盤に鮮やかなオーバーテイクを披露した松下信治選手(B-Max Racing Team)が、国内トップフォーミュラの初優勝を飾った。
あわただしく2戦を行った第1大会からわずか2週間。鈴鹿サーキットに舞台を移し、スーパーフォーミュラの第2大会が行われた。第1大会の舞台となった富士スピードウェイと比べると、鈴鹿サーキットはタイヤへの負荷が大きいコース特性を持っている。今回は1大会1レースのフォーマットで、23日(土)は午前中にフリープラクティス、午後に予選が行われた。
予選日は雨こそなかったものの、上空は分厚い雲に覆われどんよりとした天気に。ノックアウト方式の予選は第1戦同様にQ1、Q2の2段階で、まずはQ1のA組からセッションがスタートした。ここではフリープラクティスから好調ぶりを見せたサッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)がトップ通過した一方で、開幕戦で速さを見せたルーキーの佐藤蓮選手(TEAM GOH)が8番手となりQ1敗退。若手の笹原右京選手(TEAM MUGEN)は、アタックラップで他車に引っかかってしまうという不運に見舞われ、最下位で予選を終えることとなった。続くB組では、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が唯一の1分36秒台でトップ通過。山下健太選手(KONDO RACING)、宮田莉朋選手(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)と、フリープラクティスで上位にいた選手が名を連ねた。
いよいよポールポジションを決めるQ2がスタート。タイミングを狙いすました野尻選手は1分36秒352と、Q1での自己ベストタイムを大幅に削って堂々のポールポジションを獲得。昨年はどのサーキットでも速さ、強さを見せた野尻選手だが、意外にも鈴鹿サーキットでポールポジションを獲得したのはこれが初めて。モータースポーツの世界にいるものなら誰もが憧れる鈴鹿サーキットで手にした初めてのポールポジションに、予選後は喜びの表情を浮かべていた。2位と3位に入ったのは山下選手、フェネストラズ選手。富士大会では第1戦、第2戦でそれぞれが速さを見せていたが、今大会ではKONDO RACINGとして揃って上位グリッドを獲得した。
一夜明けた日曜の鈴鹿は朝から雨模様。午後になっても雨はやむ気配がなく、しとしとと降り続く中で決勝レースがスタートした。ウエット宣言が出されたことからタイヤ交換義務もなくなり、コース上でのドライバー同士の戦いで勝負が決まることとなる。ウエットコンディションのレースでは、前にいる車両が巻き上げた水しぶきでほとんど視界を遮られてしまうため、先頭に立つことが大きなカギを握る。注目されたスタートは、ポールシッターの野尻選手が好スタートを切ってトップで1コーナーへと進入。フロントローに並んだ山下選手も野尻選手に続いて2番手をキープしたが、2列目に並んだフェネストラズ選手と宮田選手はともにスタート失敗で後退。代わって牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が3番手に浮上し、その後ろには予選7位の坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)、9位の松下選手がスタートダッシュを決めて4番手、5番手に並んだ。
野尻選手は先頭で視界が開けていることも味方につけ、1周目でいきなり山下選手に対して2.3秒の大きなギャップを築くと、3周目には1分55秒285のファステストラップをたたき出し、さらに後続とのマージンを広げていった。野尻選手を追いかけたい山下選手だが、4、5周目ごろから急激にペースダウン。6周目には2分台にタイムを落とし、7周目の逆バンクで牧野選手にかわされてしまう。また坪井選手も同様に序盤でペースが上がらなくなってしまい、同じく7周目に松下選手が逆転し、4番手に浮上した。山下選手と坪井選手はこの後もペースが上がらず、11周を終えたところでそろってピットイン。タイヤ交換を行ったが、お互いに交換作業でミスに見舞われ、大きなタイムロスを喫してしまった。
レースが約3分の1を消化したところで、トップの野尻選手と牧野選手の差は約10秒、その約3秒後ろから松下選手が追いかけるという展開になった。このころになると、野尻選手も徐々にペースが落ち始め、2分台にラップタイムを落とすように。牧野選手、松下選手のほうがペースは良く、14周目にはトップと2位争いの差は約6秒まで縮まっていた。野尻選手との差を詰めながらも、2台での2位争いは徐々に白熱。22周目にはその差が0.4秒まで詰まり、松下選手は130Rからシケインへの飛び込みで一気に牧野選手のイン側を刺すが、最終コーナーでラインを抑えた牧野選手がなんとかポジションを守って23周目に突入する。
ただし2台の差は0.078秒と、ほとんどサイド・バイ・サイドの状態。1コーナーまで、いかに相手のラインを抑えるかという手に汗握る戦いが続いた。この戦いは牧野選手に軍配が上がり、松下選手との差を再び1秒弱まで広げることに成功したが、27周目に再び両車は接近。22周目と同じくシケインのハードブレーキングで勝負を挑んだ松下選手は、今度は最終コーナーでもラインを制し、ついに2番手に浮上した。
松下選手の勢いはとどまることなく、3.1秒差の野尻選手にも一気に迫っていく。1周で1.7秒もギャップを削った松下選手は、29周目で野尻選手のテールに近づくと、30周目に入ったホームストレートでアウト側に並びかけ、1コーナーで鮮やかな大外刈りを決めて見せた。残り2周でトップに躍り出た松下選手は、野尻選手を一気に突き放し、気づけば5秒も差を広げてゴール。国内トップフォーミュラで初めてのトップチェッカーを受けた。
2018年にスーパーフォーミュラにデビューし、フル参戦3年目となった今年手にした初勝利は、2017年からスーパーフォーミュラ参戦を開始したB-Max Racing Teamにとっても念願の初勝利。終盤にトップを明け渡し2位となった野尻選手は、それでも3戦連続で表彰台を獲得しランキングトップをキープ。3位の牧野選手は今季初表彰台となった。
■松下信治選手(B-Max Racing Team)
【今回の成績:優勝】
「雨になったら“スタート命”だと思っていて、実際スタートで大きくポジションを上げることができました。僕はアグレッシブなタイプで、スタートからガンガン攻めるというスタイルなのですが、今回はウエットコンディションで、31周を1セットのタイヤで走り続けないといけないので、最後まで見越して虎視眈々と走り、トップ2台が見えてきたあたりからプッシュを始めました。まわりがタイヤを消耗して苦しむ中、僕もぎりぎりでしたが、そんな風にマネージメントするクレバーなレースが今日はできたと思います」
■金子武士(横浜ゴムタイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ・グループリーダー)
「2016年から供給を始めてから鈴鹿でのウエットレースは今回が初めてでした。よって今回は各チーム手探りな状況の中でのレースでもあったと思います。レース序盤は雨量も比較的多く、中盤〜終盤に掛けて雨量が段々少なくなるというコンディション的にも非常に難しい状況の中でのレースであったと思います」
「結果的に振り返れば、レース中の雨量の読みと合わせて、タイヤを如何にレース終盤まで性能を持続させるようなセッティングができたか、またレース中のドライバーの状況判断がレース中盤から特に終盤でのレースラップを左右したように見受けられました。今回鈴鹿大会ではレース全般を通してウエット路面でのレースができたことで、我々としてもウエットタイヤでの貴重なデータを収集することができました」
「次戦のオートポリス大会は、天候によっては去年のような展開も予想されますが、ここもコース特有の厳しさや難しさがあると思います。今シーズンはスーパーフォーミュラデビュードライバーや若手ドライバーも多く、新たな魅力的なバトルを生んでくれることを期待しています」
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