ThreeBond Drago CORSE 2022スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿 レースレポート
試練
2022年度全日本スーパーフォーミュラ選手権シリーズ第2大会(第3戦)が、4月23日(土)〜24日(日)にかけて三重県の鈴鹿サーキットで開催された。チームは前大会での状況を分析し、ダウンフォースが求められる鈴鹿サーキットのコースレイアウトを考慮すると共に、前回のレースでは不足気味だったリヤのグリップを確保する方向でセッティングを大幅に見直しマシンを仕上げ、レースに臨んだ。
公式予選
4月23日(土)の鈴鹿サーキットは、春らしい薄曇りとなり朝のうちに気温が20°C、路面温度が27°Cを超える暖かいコンディションとなった。午前9時50分から始まったフリー走行で変更したセッティングに好感触を覚えたが、リヤのグリップが上がった分、今度はフロントのグリップが不足気味となったので、公式予選に備えてピットインを繰り返して微調整を加えた。しかし満足いくレベルまで仕上がらないまま1時間半の走行セッションは終わってしまった。
その後、午後3時25分からの公式予選Q1セッションB組に出走。気温、路温がさらに上昇する中、タイムアタックに入り1分37秒527を記録した。しかし、セッション終了時点で福住選手の順位はB組8番手に終わった。
決勝レース
24日(日)の鈴鹿サーキットは朝から雨となった。午前8時45分から30分間で行われたフリー走行に出走した福住選手は、全体的なグリップ不足を訴えた。ラップタイムはトップの選手に対し4秒759遅いという状況で、チームは決勝レースに向けてセッティングを根本的に見直すことに決め、昨シーズンウェットコンディションになった第3戦オートポリス戦で好調だったセッティングを基本に、鈴鹿サーキット向け微調整を加えてマシンを仕上げ直し、決勝レースに備えた。
午後2時30分、31周の決勝レースが始まった。レインタイヤを装着してスターティンググリッド16番手についた福住選手は、スタート合図とともに好加速、4ポジションを上げて12番手でオープニングラップを終えた。しかし、その後ペースは上がらず、前車との間隔は周回毎に開き、後続から徐々に迫られ始めた。
5周を過ぎて、各車タイヤの消耗が進み、一気に全体のペースが低下したが、グリップダウンは周囲よりも大幅で、先頭集団のラップタイムが2分フラット程度となったのに対し、福住選手のラップタイムは10周目に2分3秒強にまで低下しポジションも1つ落として13番手となった。
チームは無線で福住選手と相談のうえタイヤ交換を決断、12周を走行した段階で雨量が変わらないことから、ピットインさせタイヤ交換を行った。この結果、福住選手のポジションは19番手に後退した。チームとしては他の車両もタイヤ交換をすると予想した作戦だったが、タイヤ交換を行ったのは福住選手を含め5台のみで、その他の車両は走行を続行。
レース後半には路面のドライアップが進むと共に、タイヤ無交換車両のタイヤの状況が好転してペースが戻っていった。結局、福住選手はピット作業の分、後れを取り、18周目に18番手、25周目に17番手にポジションを上げたが、そのままチェッカーフラッグを受けることとなった。
■コメント
福住仁嶺
「予選に関しては、もう少しでQ2に行けそうなところまでは来ていますが、ロングランになると、なかなかペースを上げられず非常に厳しくなるという状況が続いています。1戦1戦大事に戦って、少しでも何か良くなることをチームのみんなで見つけていく必要があります。ただ、決勝のスタートはうまくいきました。その後3、4周は『今回いけるかも』という感触でしたが、周回を重ねると突然グリップダウンが起きました」
「考え方を変えると、今のクルマの状態は、レースの最初に強すぎると言えるのかもしれません。結局序盤のうちに、前についていくので精一杯になって後ろが追いついてくるという状況になってしまい、周囲に比べて明らかにペースが落ちてしまったので、ピットインせざるをえませんでした。もちろん僕の走りにも何か要因があるかもしれないので、前向きにみんなでより良い方向性を考えてみます」
道上龍監督
「大幅にセッティングを変えて持ち込みましたが、あまり効果がありませんでした。ウェットコンディションになった決勝では、フロントタイヤが厳しくなるのではないかという懸念がありましたが、案の定レースが始まると福住選手は無線でタイヤが厳しいとコメントし、ラップタイムも2分3秒台まで落ちました。これはもう早めに対処しようとタイヤ交換を決断しました」
「ただ、結局全体の5台しかタイヤ交換をせず、残りはタイヤ無交換で走り続けてしまいました。あのまま福住選手を走らせ続ければ、タイムが戻ったかもしれませんが、タイムの落ちが明らかに大きかったので「我慢しろ、このまま行け」とは言えませんでした。福住選手が加入してくれて、去年分からなかったことが色々と分かってきたのは事実ですが、それをなかなか解決できないでいます。走って確かめる時間が限られているので非常に難しいですが、何とか状況を抜け出す道を考えます」
伊与木仁チーフエンジニア
「決勝レースでタイヤ交換をするまで、雨の中でそれなりに走れていましたが、あそこでタイヤ交換をするかしないかという決断は難しかったです。ただ、フロントタイヤの摩耗が心配でしたし、福住選手のラップタイムが3秒落ちまで下がってしまったので決断しました」
「あのまま走れば無交換組のようにタイムが上がっていったかと言うと正直難しかったとは思います。タイヤを交換してからは路面が徐々に良くなっていき、路面が良くなれば福住選手もコーナーに突っ込もうと頑張るのですが、今度はリヤのグリップが足りなくなるという症状が出たようで、タイヤ交換後のほうがオーバーステア傾向になったと福住選手は言っていました。次戦、何とか巻き返しを図れるよう考えてみます」
新井凌トラックエンジニア
「現状車の状態は、どこのサーキットでも起きている症状があるので、今回は事前テストでも触らなかった領域にまで手を入れて持ち込みました。しかし良くなった面がある一方で悪くなった面もありました。決勝日は朝から雨になったので、フリー走行はクルマを柔らかくする方向で走ったのですが、それでは全く足りなかったので、決勝に向けて違うクルマと言っても良いような状態にセットしてレースに臨みました」
「タイヤ交換は難しい判断でしたが、作戦としては失敗でした。ここまで富士、鈴鹿とどちらも事前にテストをしてきたコースなのですが、次戦は去年のレース以来のオートポリスで開催されます。他のサーキットと比べて要求されるダウンフォースが大きいですし路面のコンディションも異なりますが、今抱えている問題はオートポリスでも出てくると思うので、その改善とオートポリスを走るためのセッティングに、どこで折り合い付けるかを考えて臨みます」