横浜ゴム 2022スーパーフォーミュラ第10戦鈴鹿 レースレポート
前日に第9戦を終え、いよいよシーズンの最終戦である第10戦を迎えた「全日本スーパーフォーミュラ選手権」。21名のドライバー、12のチームが、それぞれのシーズン締めくくり、あるいは来シーズンにつなげていくための戦いを披露した。そのなかで、スーパーフォーミュラ連覇をすでに決めている野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が、ライバルたちを圧倒する走りでポール・トゥ・ウィン。今季2勝目を飾り、最高の形で連覇達成のシーズンを締めくくった。
前日同様の秋晴れの空が広がった鈴鹿サーキット。第9戦より10分早い、9時5分から公式予選がスタートした。Q1のA組には平川亮選手(carenex TEAM IMPUL)、ランキング2位を争うサッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)が登場。第9戦の予選ではまさかのQ1敗退を喫したフェネストラズ選手だが、この予選ではポテンシャルを十分に発揮して3番手でQ2進出を決めた。
対する平川選手は、野尻選手とともにB組で出走。自らがコントロールラインを通過した時には3番手につけ、そこからライバル勢にタイムを更新されてじわじわとポジションが下がっていくが、ぎりぎり6番手でQ1を突破した。
一方の野尻選手はセクター1から誰も届かないようなタイムをたたき出し、堂々のトップタイムを記録してQ1を突破。第9戦の記者会見で「(明日は)優勝だけを狙って戦いたい」と話していたが、タイトル争いから解放されて勝つことだけに狙いを定めた野尻選手は、他の追随を許さないような走りをQ1から披露した。
続くQ2では野尻選手がさらに加速。1分36秒台の争いが予想されるセッションで、35秒台に迫ろうかという1分36秒003をマークし、見事にポールポジションを獲得した。今シーズン6度目、通算で13度のポール獲得は、現役のスーパーフォーミュラドライバーとしては山本尚貴選手(TCS NAKAJIMA RACING)に並ぶ記録だ。2番手には僅か0.04秒差に迫った宮田莉朋選手(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、3番手は大津弘樹選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が入った。
予選から4時間半のインターバルを挟み、決勝レースを迎えた鈴鹿サーキット。気温21度、路面温度は32度を記録したが、やや傾きかけた日ざしがまぶしく、風が穏やかなせいか少し汗ばむ陽気となる中、31周の決勝レースがスタートした。
野尻選手は順当なスタートを切って、トップで1コーナーを通過。宮田選手はわずかに出遅れ、大津選手、4番手スタートの笹原右京選手(TEAM MUGEN)の先行を許してしまう。直後に1コーナーで福住仁嶺選手(ThreeBond DragoCORSE)がコースアウトを喫し、タイヤバリアにヒット。オープニングラップから、レースはセーフティカー(SC)が導入されることになった。
車両回収はほどなく終わり、3周目にリスタート。ところが笹原選手は「なぜかアンチストールが入ってしまって」とシケインで失速。5番手に後退し、宮田選手と坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)がそれぞれ3番手、4番手にポジションアップした。
スタート直後のSC導入だったため、この3周目からが実質のレース開始というところだが、野尻選手は走り出しからいきなりハイペースを披露。この3周目だけで2番手の大津選手を1.9秒突き放して見せ、そこからも常に周りよりも速いラップタイムを並べて9周目には約6秒まで2番手との差を広げていた。10周を完了し、ピットウィンドウがオープンすると、笹原選手がまずはピットへ。その翌周に大津選手と坪井選手がタイヤ交換に向かった。1周早いタイミングでタイヤを換えていた笹原選手はアウトラップをプッシュして、コースに復帰したばかりの坪井選手に接近。2台はテール・トゥ・ノーズまで迫り、シケインで接触してしまう。フロントウィングにダメージを負った笹原選手はそのまま再びピットへと戻り、順位を大きく下げてしまう形に。坪井選手もこの接触でマシンバランスが崩れ、この後はずるずると順位を下げてしまうことになった。
その直後、松下信治選手(B-Max Racing Team)とジュリアーノ・アレジ選手(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)がシケインで接触。松下選手はアウト側のクラッシュパッドにヒットし、これで今回のレースで2度目のSC導入となる。このタイミングを利用し、まだタイヤ交換を済ませていない車両が一気にピットへとなだれ込んでくる。野尻選手はトップを守ったままコース復帰に成功したが、宮田選手はピットロードの出口を過ぎ、コースに合流するところで大津選手にパスされてしまい、1つポジションダウン。大津選手が2番手に戻り、宮田選手は3番手で終盤戦へと入っていった。
2度目のリスタートは18周目。ここでも野尻選手はスタートを成功させて大津選手との差を一気に広げた。これまでのレースでは、あまりオーバーテイクシステム(OTS)を使う場面が少なかった野尻選手だが、このレースは単独走行の状況でもランプを点滅させてパワーアップ。20周目には、序盤に自らがマークしたファステストラップを塗り替えて見せるなど、最後の最後までプッシュの手を緩めることはなかった。最終的にファステストラップは佐藤蓮選手(TEAM GOH)に塗り替えられてしまったが、スタートから一度もトップの座を明け渡すことなく、文字通りに完璧なポール・トゥ・ウィンを達成。第2戦の富士ラウンド以来、8戦ぶりの勝利を手にした。
2位は大津選手で、今季2度目の表彰台獲得。3位は宮田選手が入った。4位に続いたのはフェネストラズ選手で、序盤に平川選手をかわし、彼よりも前でフィニッシュしたことでランキング2位を獲得。平川選手は5位でフィニッシュし、ランキング3位で2022年シーズンを終えた。6位、7位には山本尚貴選手、大湯都史樹選手のTCS NAKAJIMA RACING勢が入りダブル入賞。佐藤選手とルーキー・オブ・ザ・イヤーを争った三宅淳嗣選手(TEAM GOH)が8位に入ったが、4ポイント届かず佐藤選手がルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。
■野尻智紀選手(TEAM MUGEN)【今回の成績:優勝(シリーズチャンピオン確定)】
「第9戦でタイトル獲得を決めることができたので、今日はしばらく届いていなかった優勝だけを目指しました。自分に挑戦するレースをしようと、最後まで自分自身と戦い続けたレースですが、個人的には今まででベストなレースができたと感じています。今シーズンは、チームのみんなの頑張りが常に形になり続ける、そんな奇跡のような、これ以上ないシーズンでした。今年の結果が、これからは自分自身を苦しめることになるかもしれませんが、それを超えられるようになりたいと強く思っています」
■坂入将太(横浜ゴムタイヤ 製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ)
「前日の第9戦でシリーズ争いに決着がつき、今日はどのチーム、どのドライバーも来シーズンにつなげようと自分たちの持っているものを出し尽くすようなレースだったと思いますが、その中で野尻選手とTEAMMUGENの皆さんはチャンピオンらしい安定した走りだったと感じています。タイヤマネジメント能力の高さを感じるペースでしたが、完全な独走状態で周りとバトルすることもなかったというのが、レース後半に1分39秒台のタイムを出せた要因の一つではないかと考えています。全体を見ると、最後の最後まで随所でバトルがあり、とても盛り上がるレースになったのではないでしょうか」
「スーパーフォーミュラを担当する初年度、その最初の大会が2レース制というフォーマットで、非常にあわただしいレースウィークになったことをよく覚えています。シーズンを通して、いくつもの素晴らしい戦いを見せてもらいましたが、来シーズンもさらに魅力的なシリーズとなるよう、引き続きサポートをしていきたいと思っています」
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