更新日: 2023.05.25 22:21
横浜ゴム スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿 レースレポート
【SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権) 第3戦/鈴鹿サーキット】
セーフティカーを味方につけた宮田莉朋選手が、嬉しいSUPER FORMULA初優勝!!
2023年の『SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)』第3戦が鈴鹿サーキットで開催され、SUPER FORMULA参戦3年目の宮田莉朋選手が予選12位からセーフティカー(SC)導入を味方につけて大逆転優勝を飾った。
ここまで2週連続、悪天候に泣かされてきた国内モータースポーツイベントだが、この週末の鈴鹿サーキットは気持ちの良い青空が広がった。
公式予選は通常通りのノックアウト方式。Q1のA組では、午前中のフリープラクティスでトップタイムを記録していた大湯都史樹選手が、2位以下に0.1秒以上の差をつけてトップ通過を果たし、好調なスタートを切る。続くB組では、第2戦で久々に表彰台を獲得した坪井翔選手がトップタイム。
ジュリアーノ・アレジ選手が2番手タイムを記録するなどトヨタエンジンユーザーが速さを見せる中、ディフェンディングチャンピオンの野尻智紀選手が苦戦。100分の5秒差でQ2進出圏内から外れてしまったのだ。
このあと走路外走行によりタイムを抹消されたドライバーが居たため、繰り上がりでQ1突破したが、昨年のここ鈴鹿サーキットでは、開催された3戦すべてでポールポジションを獲得していた野尻選手のまさかの展開にサーキットはどよめいた。
ポールポジション争いのQ2は、まず大湯選手が1分35秒台のスーパーラップをたたき出してトップに立ち、後からコントロールラインを通過するライバルたちの結果を待つことに。宮田選手、リアム・ローソン選手、佐藤蓮選手らが次々と自己ベストタイムを記録するものの、大湯選手の1分35秒792には届かず2番手以降の順位が目まぐるしく変わっていく。
そんななか、コース前半区間で大湯選手のタイムを上回っていたのが野尻選手。鈴鹿サーキットでシーズンをまたぎ4戦連続のポール ポジション獲得なるか、そのタイムに注目が集まった。しかし、表示されたタイムは1分35秒906。35秒台には入ったものの、大湯選手のタイムには約0.1秒届かなかった。
これで、大湯選手の自身2度目となるSUPER FORMULAのポールポジション獲得が決定。坪井選手が野尻選手のタイムを上回ってフロントローポジションを手に入れ、野尻選手は予選3位となった。
決勝日も上空はほとんど雲がなく、まぶしい日差しが降り注いだ。レースは31周で争われる予定だったが、フォーメーションラップを終えて各車がグリッドにマシンを着けるなか、予選5位の牧野任祐選手がエンジンストールを喫し、スタートはディレイに。もう一度フォーメーションラップから仕切りなおすことになり、周回数は1周減算の30周で、改めてレースのスタートが切られた。
抜群の蹴り出しを見せたのは大湯選手で、その後ろには坪井選手、野尻選手とグリッド順の通りに続いていく。野尻選手はポジションキープでオープニングラップを終えたもののペースが上がらず、3周目には予選8位だったローソン選手にかわされ、さらに山下健太選手の先行も許し、じわじわとポジションダウンしていった。
チームメイトをかわしたローソン選手は、開幕戦で優勝した時と同じくアンダーカット作戦を狙って、ピットウインドウがオープンした10周目にタイヤ交換を行い、アウトラップも速いペースで周回。ローソン選手の逆転を阻止しようと、翌周にピットに入ったのは坪井選手で、ぎりぎりのところでローソン選手より前でコースに復帰した。
ただ、すでに1周のアウトラップを終えてタイヤが温まっているローソン選手が一気に迫ってくる。2コーナーではサイドバイサイドに持ち込まれ、S字、逆バンク、デグナーでもテールに貼りつくローソン選手を、坪井選手は必死にしのいだ。スプーンカーブを超え、坪井選手のタイヤにも熱が入ってくるとその差はやや開き、これでローソン選手の逆転を阻止。
タイヤ交換を済ませた組の中でトップを守った坪井選手は、暫定首位の大湯選手との差を削るべくプッシュしていった。大湯選手もピット作業分のマージンを稼ごうと力走するが、フレッシュタイヤの坪井選手は13周目にファステストラップを塗り替えるなどハイペースで周回。ピット作業分のマージンはどんどん削られていった。
大湯選手は19周を終えるところでピットイン。この時点で坪井選手、そしてその後ろのローソン選手にかわされることは明白で、タイヤ交換作業を終えるとローソン選手の後ろでコースに復帰した。ここへ、坪井選手と同じタイミングでタイヤ交換を済ませ事実上の3位を走行していた野尻選手が急接近。
まだタイヤが冷えている状態の大湯選手はなんとか野尻選手をおさえこもうとするが、2台はS字で接触し、そろってコースアウト。タイヤバリアにヒットしてしまった。ポールシッターと2年連続王者の接触という波乱。レースはすぐにセーフティカー(SC)が導入された。
このSC導入を見て動きを見せたのが宮田選手と平川亮選手。まだタイヤ交換を済ませていなかったこの2台は、全車のペースが一気に下がるこのタイミングでピットに入ってタイヤ交換を行うと、坪井選手とローソン選手の後ろ、3番手と4番手でコースに復帰。大幅なポジションアップに成功する。
その後、24周目に入るところでSCが隊列を離れ、レースはリスタートが切られる。すでに10周以上を走破している坪井選手とローソン選手に対し、フレッシュタイヤの宮田選手と平川選手が襲い掛かった。宮田選手は26周目にローソン選手をかわして2位浮上。残り5周は、坪井選手対宮田選手の優勝争いと、ローソン選手対平川選手の3位争いが白熱した。
レースも残りわずかとなった29周目のホームストレートで、宮田選手は一気に坪井選手に接近。1コーナーでアウトから豪快なオーバーテイクを披露し、トップに躍り出る。その背後では平川選手もローソン選手を2コーナーでとらえ3位にポジションアップしていた。
ファイナルラップは宮田選手が坪井選手を引き離し、トップチェッカー。SUPER FORMULAデビューから3年目で、待望の優勝を飾った。途中まで優勝が見えていた坪井選手は悔しい2位ながら、2戦連続での表彰台獲得。3位の平川選手も今季2度目の表彰台となった。
■宮田莉朋選手 (VANTELIN TEAM TOM’S)【今回の成績:優勝】
「昨日の予選が残念な結果でしたので、正直ポイントが獲れればいいなという気持ちでした。まさか優勝できるとは思ってもいませんでしたので、本当に嬉しいですし、感謝しかありません。ようやく優勝することができて、本当に嬉しいです。ここ鈴鹿で優勝できたことで、新しくなった車両、タイヤに対する理解度は深まったと思います。次戦もストラテジーが難しいサーキットなので、今回のレースを踏まえてしっかりと考え、戦っていきたいです」
■坂入将太(横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST 開発部 技術開発2グループ)
「公式予選は昨年比で全体的にタイムアップとなりましたが、我々の記録ですと今年は昨年に比べて5°C程度気温が低かったので、コンディションという観点では少し有利だったと思います」
「今年投入したNEWタイヤは、特にタイムの向上を狙ったものではなく、あくまで昨年と同等のパフォーマンスを維持しながらサステナブル素材を使用することを狙いとしていました。そのことからも、タイヤ単体でのパフォーマンス向上というよりは、SF23との組み合わせによる何らかの相乗効果があったのかもしれません。今年はプレシーズンテストも1回という状況にもかかわらず、タイムを向上させることが出来たチームとドライバーの凄さを強く感じる結果でした」
「タイヤシビアリティの高い鈴鹿での一戦でしたが、「タイヤのデグラデーションが大きくなった」という声はプレシーズンテストの時にも何名かのドライバーから聞いていました。今回開発したタイヤは特にそのような特性を狙ったということはないのですが、昨シーズンのレースよりもタイヤのタレが顕著に表れていて、終盤は手に汗握る面白いレース展開になっていました。今年はエアロが変わったことが最も大きな変化と捉えておりますし、OTSの運用方法変更やSF50アプリの活用といったソフト面の変化もたくさんありますので、タイヤがレースを面白くしたとまでは言い切れませんが、結果としてタイヤ”も”その面白さの一翼を担えているのであれば嬉しく思います」
・横浜ゴムモータースポーツ WEBSITE)https://www.y-yokohama.com/cp/motorsports/
・横浜ゴムモータースポーツ Facebook)https://www.facebook.com/YRCmotorsports