更新日: 2024.04.16 15:20
横浜ゴム 2024スーパーGT第1戦岡山 レースレポート
スーパーGT第1戦/岡山国際サーキット
30年目のスーパーGTが開幕、GT300クラスはMETALIVE S Lamborghini GT3がポイント獲得で幸先のいいスタートを切った!
2024年のスーパーGTが、岡山国際サーキットでシーズンの幕を開けた。前身となる全日本GT選手権も合わせて30周年という節目を迎えるスーパーGTは、今シーズン大きな変化を迎える。安全性の向上を目的にGT500クラス、GT300クラスともに車両規定を改定。GT500クラスは車両のダウンフォース量を軽減するために地上高を5mm上げることとし、GT300クラスは速度抑制のために重量を増やすことになった。どちらの規則改定も、車両の足元を支えるタイヤにとっては大きな規則変更点だ。
また、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からタイヤの持ち込みセット数が削減されることに。これに伴い、予選方式もこれまでのノックアウト方式から、ふたりのドライバーがアタックしたベストタイムの合算方式に変更。加えて、予選から決勝レースのスタートまでは同じタイヤを使用することとなり、タイヤマネージメントという部分がこれまで以上に重要となる。
開幕戦の週末は設営日から非常に良い天気が続き、予選日、決勝日ともに夏日の最高気温を記録。路面温度も40度を超え、強い日差しがじりじりと照り付けるような暑さを感じるレースウイークとなった。開幕前に行われた公式テストは、雨天に加えて凍えるような寒さで、今回とは全く違うコンディション。どのチームも急激に上がった気温や路面温度への対応に苦労していたが、予選日の公式練習はセッション開始直後に1度赤旗中断があっただけで、ほとんどのチームが十分に走りこんで公式予選へ挑むことができた。
GT300クラスではJLOC ランボルギーニ GT3(小暮卓史選手/元嶋佑弥選手)が3番手と好スタート。岡山が地元のUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章選手/ロベルト・メリ・ムンタン選手)と昨年の開幕戦ウイナーUPGARAGE NSX GT3(小林崇志選手/小出峻選手)も好タイムを記録した。
タイム合算方式となった公式予選は、GT300クラスは台数が多いことからこれまで同様に2グループに分けられることに。Q1で走行した2グループの上位8台を合わせた計16台をアッパー16、残る全車をロワー17としてQ2でタイムアタックを行い、トップから16位までと17位以降の総合結果を決定する。ただし、アッパー16の中での下位4台とロワー17の中の上位4台は、直接タイムを比較して順位を入れ替える特別ルールも設けられた。
合算の結果、ヨコハマ勢の最上位はグッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝選手/片岡龍也選手)の6位。公式練習を終えて施したセット変更が奏功し、ふたりの選手が同等のタイムを並べられたことが上位につながったかたちだ。
続いてUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章選手/ロベルト・メリ・ムンタン選手)が7位、2度のGT300チャンピオン経験を持つ藤波清斗選手が加入したマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(藤波清斗選手/塩津佑介選手)が9位と、3台がシングルグリッドを獲得。特別ルールが適用される13~20位の中では、PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG(阪口良平選手/冨林勇佑選手)がロワー17から大きくポジションアップして13番グリッドを手に入れた。
GT500クラスはリアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生選手/名取鉄平選手)が12位、WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資選手/阪口晴南選手)が14位と、苦しい予選となった。
一夜明けた決勝日も強い日差しは変わらない。ただし夏場と違ってうだるような暑さではなく、日陰に入るとわずかにひんやりとした空気で涼を取れ、やや過ごしやすさを感じられる場所も。それでも気温26度、路面温度42度と夏日の様相で、82周の決勝レースがスタートした。
開始早々、GT500クラスの中団で接触アクシデントが発生し、レースは2周目からセーフティカー(SC)が導入される波乱の出だしに。幸いリアライズコーポレーション ADVAN Z、WedsSport ADVAN GR Supraともに巻き込まれることなくそれぞれ10位と12位にポジションを上げて、8周目にリスタートが切られた。
上位陣に迫れるラップタイムを並べることができず、WedsSport ADVAN GR Supraは30周を終えて阪口選手から国本選手へ、リアライズコーポレーション ADVAN Zはその翌周に名取選手から松田選手へドライバー交代。2台とも早めのピットインで後半はロングスティントになったが、最後まで粘り強く走り切り、リアライズコーポレーション ADVAN Zが12位。WedsSport ADVAN GR Supraはピット作業に時間がかかってしまったこともあり他車に差をつけられてしまったが、13位で完走を果たした。
GT300クラスは、6番グリッドからスタートしたグッドスマイル 初音ミク AMGがオープニングラップの1コーナーで2台をとらえて4番手にポジションアップ。直後にSCが入り、再びバトルが開始されたのは8周目からだが、ここから20周近くにわたって上位は膠着状態となった。片岡選手がステアリングを握るグッドスマイル 初音ミク AMGもペースはいいものの、3位の車両をとらえることはできず引っかかっている状態で、さらに後ろの車両にも迫られていた。
29周目にようやく1台をかわして3番手にポジションアップすると、32周を終えてピットイン。リヤタイヤの2本交換で作業時間を削ってピットを離れたが、同じく2本交換やタイヤ無交換作戦をとってきたライバル勢の先行を許しポジション後退。後半スティントの谷口選手もベテランらしい巧みな走りで周回を重ねていたが、GT500車両を先行させるタイミングで後続に隙を突かれ、再びポジションを落としてしまう。最終的には9位でチェッカー。開幕戦をポイントゲットで終えることはできたが、予選順位からすると悔しい結果となってしまった。
反対に、予選順位からポジションを上げてフィニッシュしたのはMETALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮選手/坂口夏月選手)。実は予選日の公式練習の際、コースインした直後にトラブルに見舞われマシンストップ。十分に練習できないまま予選本番を迎えることになってしまったのだが、それでも11位と中団のグリッドからスタートすると、前半スティントの坂口選手がコンスタントに周回を重ねていく。
ちょうど折り返し地点となる38周終了のところで松浦選手に交代。タイヤ2本交換で作業時間を削ると、一足先に入っていたチームメイトのJLOC Lamborghini GT3もかわしてオーバーカットに成功する。52周目、GT500を先行させるグッドスマイル 初音ミク AMGの隙をついてこれをとらえてさらにポジションアップ。最終的には7位でフィニッシュしポイント獲得となった。
今回の開幕戦で大きな見せ場を作ったのは、マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号の藤波選手だ。9番グリッドからのスタートで、前半23周をチームメイトの塩津選手が担当すると、タイヤ無交換作戦で残りのロングスティントに挑んだ。ピット作業時間を削り6位に上がったものの、後ろからはタイヤを交換しマージンのあるライバル勢が続々と迫る。
それでも、2020年、22年と2度のチャンピオン経験を持つ藤波選手は絶妙なライン取りで後続をブロックしていく。終盤には他車に追突されスピンを喫し大きく順位を下げることになったが、気迫が伝わる走りは多くのファンの目を奪っていた。
■松田次生選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
今回の成績 : GT500クラス 12位
「自分自身のスティントでは、初めのうちは前のマシンにつかず離れずで周回を重ねていけましたが、最終的にはペースが上げられない状況になってしまいました。なぜこうなってしまったのか、原因をしっかりと調べないといけないですね。今シーズンは長い距離のレースが続きますから、安定して速く走れるタイヤ開発が課題になっていくと思います。今後これをどういう形にしていくかが非常に大事だと思うので、一緒にいいタイヤを作って結果を出していきたいです」
■名取鉄平選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)
今回の成績 : GT500クラス 12位
「テストの段階から、岡山に対しては厳しいだろうという予想をしていました。最低限ポイントは取りたいという意気込みで入ったものの、今はやることがたくさんだなと感じています。でも、今は苦しい時期ですが必ず上位で走れるレースがあると信じて、一緒に力を合わせて頑張りたいです。そのためにも、僕自身はいつでも自分のパフォーマンスを最大限に引き出せる走りをしていかないといけないと思っています。そうすれば結果はついてくると思うので、それを続けて頑張りたいです」
■国本雄資選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
今回の成績 : GT500クラス 13位
「予選からタイヤのパフォーマンスを出し切れず、難しい週末になりました。決勝も、後ろから追い上げていこうという気持ちで行きましたがなかなかペースが上がらず、1スティント目からギャップを作られてしまったし、ピット作業もうまくいかずに後半も苦しいスティントになりました。このままではさらに苦しいシーズンになってしまうのではと思っています。今年のルール変更はヨコハマタイヤには不利な状況だと思っていて、今はその状況でうまく機能していないのかなと感じています。次戦の富士までにテストもあるので、少しでもいい材料を見つけて次につなげられるようにしたいです」
■阪口晴南 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)
今回の成績 : GT500クラス 13位
「レースウイークの走り出しからかなり苦戦しました。今回一番感じたのは、こういったパフォーマンスを予測できるかどうかという部分です。今回僕たちもいろいろと持ち込んできましたが、それが全くうまくいきませんでした。それがなぜなのか、どこにうまくいかない原因があるのかをしっかり把握することが重要だと思います。次戦では本来のパフォーマンスにきちんと戻して、そこからさらに力強く走れるようにしていきたいです」
■松浦孝亮選手 (METALIVE S Lamborghini GT3)
今回の成績 : GT300クラス 7位
「公式練習の走りはじめでエンジンにトラブルが出てしまい、全く走れずにセッションが終わってしまいました。ただメカニックが予選までにエンジンを乗せ換えてくれて、いきなり本番という形になったことで予選は11位にとどまってしまいました。こんな気温で走ったことがシーズンオフのテストではなかったので、どうなるかわかりませんでしたが、ふたを開けてみれば非常にペースが良く、常に追い上げる展開のレースができました。高い路面温度の中、最後まで攻め続けることができたのでとても満足しています」
■坂口夏月選手 (METALIVE S Lamborghini GT3)
今回の成績 : GT300クラス 7位
「予選のときから想像していた通りに決勝でも気温、路面温度ともに高くなりましたが、高温側でヨコハマタイヤさんはキャパシティがあるので、しっかり力強く最後まで走り切れました。僕たちはコンビを組んで4年目になるので、お互いの癖やスタイルも分かっていて安心感がありますし、メカニックもいいメンバーがそろっているチームなので、テストからとても雰囲気が良かったんです。手ごたえもあったので、その期待を初戦から結果につなげられてうれしいです。もちろん悔しさもありますが、まだシーズンは残り7戦、必ずチャンスは来ると思っています。そのチャンスをものにできるように頑張ります」
■白石貴之(横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ・リーダー)
「GT500クラスもGT300クラスも非常に厳しい結果となりました。シーズン前の2度の公式テストは雨に見舞われ、ドライで十分に走れず手探りの状態での開幕戦で、また今シーズンから新しいレースフォーマットでの戦いになり、GT500クラスは車両規定が変わったことで我々の過去から課題として捉えている部分が顕著になったと受け止めています」
「非常に高い気温と路面温度という部分は有利に働きましたが、過去と似たような条件下でも過去とは異なる事象になる事も多く、我々の中でもう一度考察、検証しなければと感じています。タイヤの持ち込み本数も減っているので、より様々な状況に対応できるタイヤが必要になると痛感しました」
「もちろん、そこに向けてはもともと今年開発しているところですが、さらに加速していかないと、なかなか上位陣との差は埋まらないですから、この先これをどう改善していくのか、もう一度練り直していく必要があると考えています」
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