「我々のスープラとブリヂストンのパッケージだと、どうしても(鈴鹿の)セクター1、セクター2で他に対してかなり負けているところがあり。それもひとえに中低速コーナーのアンダーステアあたりから来ていたものかなと思っています」
この鈴鹿における前半セクションは同車にとって最大の開発目標だったと言って過言でなく、これまでは『曲げ切れなさ』によりライバルに遅れを取る場面が「多々あった」と分析する。しかしこのオフで最後のメーカー主催テストとなった3月初旬の鈴鹿では、この2024年型GRスープラが2日間合計4つのセッションで首位を独占している。
「オフに関しては、みなさんがどこまで一生懸命走られていたかはわからないですが、今までみたいにそこ(前半区間)でコンマ5秒離される……ようなことはなかったかなと(笑)。ターゲットにして開発をしてきた内容としては、そこがうまく他メーカーに対して追いつけ追い越せと。そうなっていたら御の字というか、狙いどおりにはなります」と池谷氏。
「そこでキチンと(アドバンテージを)取らないと、後半のバックストレートとか、最高速でのビハインドも出てきてしまうかと思います。そこでなるべく稼ぎながら、後半セクションでも置いていかれないようにまとめていく必要があります」
曲がりやすくなりつつ、トータルで見た安定性も確保した2024年型GRスープラは、転舵が続くセクションの速さを増したうえに、鈴鹿ではこれまで1コーナーで見受けられたバウンシングの症状も改善。フロント側の軽量化と今季導入の“車高実質5mmアップ”の規約と合わせて解消方向となった。そんな陣営内にあって、優勝候補筆頭に挙げられるのが14号車ENEOS X PRIME GR Supraだろう。
かつては2年連続で開幕連覇を達成し、ここ鈴鹿へはサクセスウエイト(SW)を満載した状況で臨んでいた14号車ENEOSだが、今季は開幕2戦をアクシデントやトラブルで落とした結果、搭載するSWは6kgと例年とは違う状況で戦うことになる。それでも、車両を預かる阿部和也チーフエンジニアは「余裕で勝てる感じではないし、それほど甘くはない」と改めて気を引き締める。
「ここまでの開幕2戦、まともにレースができていないので、まずは普通にレースがしたい」と続けた阿部エンジニア。
「前回もあんなところ(タイヤ交換により最後尾)からスタートした割にはペースも悪くなかったし、開幕戦もきちんと戦えていれば表彰台争いには絡めていた。なので勝負ができる輪のなかにはいるけれど、今回で言えば8号車や16号車(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT)もウエイトは軽い。(燃料リストリクターの)1ランクダウン組はさすがにキツいかなと思いつつ、レースでは3号車(Niterra MOTUL Z)や(陣営内の)36号車も淡々と上がってくる。そう考えると……」
前述の鈴鹿オフテストでは、今季新加入の福住仁嶺が2日目午前のセッション3で最速をマークするなど、2024年型モデルの特性をいち早く引き出した阿部エンジニアだが、開発陣の成果を讃えつつ、ここ鈴鹿の決勝に向けては慎重な見通しを崩さない。
「個人的にこのGTで鈴鹿が速いかと言われると、スープラが全般的に苦戦している傾向はあった。でも開発陣が作ったクルマのコンセプトに『鈴鹿をなんとかしたい』という気持ちがあったんだと思う。それがいい方向に行ったのと、それをウチと36号車がうまく転がせていた部分はあった」と阿部エンジニア。
「正直、今年は悪くない。入りから今季のコンセプトのスープラにうまく合わせられたと思うし、そこからあまり変えないでもいろいろなサーキットで走れている」
「ただちょっと難しいのが予選日の天気と日曜決勝の天気が微妙になってきていて、どちらに重きを置いてタイヤを選ぶか……というのが出てきてしまう。そこはちゃんと評価しないと……とは思っています」
