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投稿日: 2024.06.10 14:35
更新日: 2024.06.10 14:36

apr LC500h GT 2024スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート


スーパーGT | apr LC500h GT 2024スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート

2024 AUTOBACS SUPER GT Round3
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
6月1日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:1万7500人
6月2日(決勝)
天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:2万5000人

予選も決勝も今季ベストリザルト。さらに見つけた、表彰台、その頂点への希望

 中高速コーナーが主体の鈴鹿サーキットは、ハイダウンフォースの車種が有利とされている。つまり、コーナリングマシンであるGTA-GT300車両が得意とするはずのコースなのだが、過去5年で8回開催された鈴鹿大会を振り返ってみると、FIA-GT3車両が7回優勝。ちなみに、ポールポジション回数はGTA-GT300車両が5回と、一発の速さではGTA-GT300車両が上まわっている。

 このようなリザルトになるのは、鈴鹿のベストラインは1本しかなく、抜きづらいサーキットだからだ。決勝でのバトルでは、最高速に勝るFIA-GT3車両が優勢になる。31号車は2020年の第3戦、TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTでポールポジションを獲得したが、そのラウンドの勝者はやはりFIA-GT3車両だった。

 それでも、apr LC500h GTにとって鈴鹿は狙いたいラウンドのひとつ。第1戦、第2戦で課題となった今季の車重に対するタイヤも、ブリヂストンが新しいスペックを用意してくれた。その期待を背に、小高一斗と中村仁、そして万が一のバックアップに根本悠生を加えた3名のドライバーで挑む。

公式練習/6位 6月1日(土)9:45〜11:30

 公式練習のスタートは小高が担当。持ち込んだタイヤとセットアップはバランス良く、小高は4周目に1分58秒982を記録し、これが6番手のリザルトになった。その後、中村と代わりながら2種類のタイヤスペックを確認し、セットアップも修正を加えていく。

 タイヤは5月8日から5月9日、GTエントラント協会が主催する鈴鹿でのGT300クラス専有テストで、高重量のLC500hに適したスペックを見つけていた。今回持ち込んだのは、それをベースにさらに配合を見直したもの。2種類のスペックとも、これまでの「グリップは高いのに、重さによってコーナーの姿勢が安定しない」症状がほぼ解消されたことを確認する。

 クルマのセットアップは修正を加えつつ、結果的には持ち込みのセットに戻した。それほどに順調に進んだ。予選、さらに決勝に向け、手応えを感じたセッションだった。

公式予選 6月1日(土)
Q1 B/3番手15:00〜15:10
Q2 Gr.1/5番手16:11〜16:21
総合順位7番手

 予選Q1は31号車も出走するグループBからスタート。Q1担当は小高だ。第1戦、第2戦では、グリップがより高いニュータイヤでの走り始めで、コーナーの姿勢が安定しない症状が顕著に出ていたが、ニュースペックの投入でその不安もなくなった。

 予選にはソフト系のタイヤを選択。小高は計測4周目に1分58秒925をマークした。今回の予選ではダンロップ勢が強さを見せる結果となったが、その2台に続く3番手タイム。3戦目にしてついに本領発揮、Q1を上位で突破した。

 Q2グループ1には中村が出走。タイムは3周目の1分59秒369でグループ1の5番手。だが、これは「失敗」のアタックだった。ウォームアップラップでトラフィックに引っかかり、タイヤを温め切れずセクター1でタイムロス。1周クールダウンを入れて再度アタックに入るが、セクター1とセクター2で自己ベストを更新できずにピットへと戻った。

 Q1で3番手、Q2で5番手なら結果として悪くはないが、合算タイムではQ1をラバーが載ってグリップが高まった2本目に走行できたグループAの組に先行されるかたちで7番手に。悔しさは残るが、今季最高グリッドから表彰台を目指す。

小高一斗選手

「今回持ち込んだタイヤは、僕たちがイメージしていたタイヤでした。これまでの2戦はQ1を上位で突破するなんて目標を持つこともできない状況でしたけど、今回はそれを目標に、しっかりとクリアできました。ただ、僕のアタックももう少しうまく走れた部分はあったので完璧ではなかった。本音を言えば3列目までに入りたかったですけど、表彰台を狙える位置なので、そこは目指していきたいと思います」

中村仁選手

「アタックラップ自体は悪くなかったのですが、ウォームアップが下手でセクター1でタイムを失ってしまいました。タイヤに負荷をかけはじめるタイミングがもう少し早ければ……。そこは自分の見極めの甘さが出てしまったと思います。総合7番手というのは、クルマのパフォーマンス的に妥当かなと思いますが、満足できるアタックができなかったので自分としては悔しいし、反省点です」

根本悠生選手

「僕は今回、サファリの時間に乗ることができました。フルプッシュではありませんが、タイヤもセットアップも良くなっていることを確認できました。予選は3位と5位の合算で7位まで落ちちゃうのはちょっと納得できない部分もありますが(苦笑)、車重も含めた僕たちのパッケージとしては精一杯の順位というか、小高選手と中村選手が引き上げてくれた結果だと思います」

金曽裕人監督

「5月のGTE鈴鹿テストで新しいスペックのタイヤを試して、そこからさらに『未来がある方向』にアジャストしたタイヤをブリヂストンさんが用意してくれました。素晴らしいタイヤで、公式練習は順調に進みましたね」

「予選Q1では、結果的に総合でトップ2のダンロップ勢に続く3番手だったので、小高選手は良い仕事をしてくれました。Q2の中村選手はもうちょっとタイムを上げられたはずで、クリアラップを取るという経験不足が出てしまいましたね。でも、総合7番手は悪くないし、タイヤもロングディスタンスでの手応えを得られているので決勝が楽しみです」

apr LC500h GT
2024スーパーGT第3戦鈴鹿 apr LC500h GT(小高一斗/中村仁/根本悠生)

決勝レース(85周)/4位 6月2日(日)13:38〜16:39

 雨の予報も出ていた決勝日。直前のウォームアップ走行ではウエット宣言も出されたが、レースはドライコンディションでのスタートになった。第3戦鈴鹿は、2回の給油をともなうピットが義務付けられた3時間レースだ。

 スタートドライバーは小高が担当。ローリングスタートからの1コーナーまでに1台をオーバーテイクし、オープニングラップで6番手に浮上する。しかしその後、20号車シェイドレーシングGR86 GTに前方を塞がれてしまう。ペースは明らかに小高のほうが勝っていたが、LC500hよりもボディが小さいGR86はエンドスピードが伸び、最高速はイーブンな状況で、なかなか抜くことができない。それでも18周目に攻略すると、23周目、27周目に1台ずつ抜いて3番手までポジションアップを果たした。

 他車とのピットのタイミングもあり、小高はトップに立つ34周目に1回目のピットへ。ここでチームは小高のダブルスティント、タイヤ無交換作戦を敢行。小高は見た目上でもトップのままコースに復帰する。45周目、この週末常に強さを示し続けたダンロップユーザーの777号車D’station Vantage GT3にトップの座を奪われてしまうが、51周目に2番手で2回目のピットに向かった。

 上位勢が2回のルーティンピットを終えたとき、中村は2番手を走行。だが、背後には6号車UNIROBO BLUEGRASS FERRARIが迫っていた。7周にわたる接近戦でポジションを死守していた中村だが、70周目のヘアピン、一瞬の隙をつかれてオーバーテイクを許してしまう。その後、2号車もタイヤ無交換作戦を最終スティントで実行し2番手に浮上から4番手に。その後も、ペースは明らかに6号車のほうが速く、徐々に引き離されてのポジションキープの4位フィニッシュとなった。

 表彰台が見えていただけに、悔しい4位。それでも今季のベストリザルトで8ポイント獲得し、ドライバーズランキングは6位に浮上。LC500hの重量ボディを支えてくれるタイヤを手にし、新たなセットアップの方向性も見え、今後の期待が高まる一戦となった。

小高一斗選手

「スタートで1台抜いて、でもその後はなかなか抜くことができませんでした。それでも4台をコース抜くことができたし、僕のファーストスティントは悪くなかったですね。燃料を給油しただけの第2スティントはちょっとタイヤが厳しかったのもあり、無理はしませんでした。今回の777号車は速すぎてライバルでは無かったし、僕たちは3位になれるかどうかという状況だったので。結果的に3位には届かなかったですが、中村選手は速いドライバーなので、あとは決勝での経験値を積んでいけば強くなって結果に繋がると思います。『中村選手、頑張ってください』ですね(笑)」

中村仁選手

「小高選手がすごく良い走りで、表彰台圏内で僕のスティントに繋いでくれたのですが、GT300のバックマーカーやGT500の処理に手間取ってしまい、結構タイムを失ってしまいました。ヘアピンで抜かれてしまったときは、間隔が開いていたのでギリギリ大丈夫かなと思っていたのですが、自分が甘かったですね。6号車は低速コーナーが得意なことを分かっていたのに、楽観的な考えで走ってしまいました。自分次第で表彰台に乗れたと思うので本当に悔しいです。でも、前戦より確実に前進しているし、ポジティブな週末になったのではないかなと思います」

根本悠生選手

「僕が乗ったフィーリングだと、鈴鹿でオーバーテイクするのは相当しんどい。その状況で順位を上げていけたのは、小高選手の技術と経験があったからこそだと思います。表彰台は逃してしまいましたが、現実的なクルマのポテンシャルとしては5番手とか6番手くらいだと思うので、4位という結果は小高選手と中村選手と金曽監督、チーム全員で勝ち取った功績だと思いますよ」

金曽裕人監督

「僕たちが基準とするのは、GTA-GT300でブリヂストンという同じパッケージの2号車(muta Racing GR86 GT)と52号車。今回、2号車はちょっと速かったけど、52号車とはセクタータイムもほとんど変わらず、同じポジションをずっと走れたのは我々にマッチしたタイヤができた証明であり大きな収穫でしたね。新しいタイヤへのセットアップも見つけることができました」

「3位を守れなかったのは中村選手の経験不足。スーパーGTは速さだけでは勝てない、GT500やバックマーカーの処理も必要だということが分かったと思います。中村選手には『初心者マークは公道だけにしなさい!』と発破をかけておきました(笑)。今回は4位でゴールできましたが、マシンもチームもドライバーもパッケージではまだ負けている部分があるので修正と改善は必要。でも、シリーズを見据えれば良い結果。僕たちには伸び代しかないですからね」

apr LC500h GT
2024スーパーGT第3戦鈴鹿 apr LC500h GT(小高一斗/中村仁/根本悠生)


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