更新日: 2024.08.06 21:29
横浜ゴム 2024スーパーGT第4戦富士 レースレポート
スーパーGT第4戦/富士スピードウェイ
両クラスでヨコハマタイヤ同士の激しいバトルが繰り広げられ、GT300クラスは2台が表彰台を獲得
全8戦で争われる2024年のスーパーGTは、夏休み真っただ中の8月初頭に第4戦を迎えた。富士スピードウェイは今年2度目の開催だが、5月に行われた第2戦はスーパーGT史上初の3時間レース。今大会は、350kmの距離を争う戦いとなる。
東海地方は梅雨も明け、レースウイークは車両搬入が行われた8月2日(金)から猛暑に見舞われた。標高の高い富士スピードウェイは、朝晩は涼しさを感じられるものの、日差しが照り付ける日中は気温も路面温度もぐんぐんと上昇していく。3日(土)の公式練習が始まる9時の時点では、気温30度、路面温度は47度を示していた。
1時間45分のセッションで、GT500クラスはWedsSport ADVAN GR Supra (国本雄資選手/阪口晴南選手)が8番手、リアライズコーポレーションADVAN Z(松田次生選手/名取鉄平選手)が9番手のタイムを記録。2台ともセッション終盤に設けられたGT500クラスの専有走行で予選アタックのシミュレーションを行った結果、それぞれのベストタイムを更新した。
GT300クラスはリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹選手/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手)がトップタイムをマーク。第2戦でも2位表彰台を獲得した同車が同じ富士を舞台とした今大会でも好調さを見せつけると、その富士で今季初優勝を果たしたJLOC ランボルギーニ GT3(小暮卓史選手/元嶋佑弥選手)が0.175秒差の2番手タイム。さらにUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章選手/ロベルト・メリ・ムンタン選手)が3番手、グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝選手/片岡龍也選手)が4番手と、ヨコハマタイヤユーザーがトップ4を独占する結果に。トップから1秒以内に14台がひしめき、予選から熾烈な戦いになることは予想されたが、ヨコハマタイヤ勢の好結果に期待がかかった。
併催レースでアクシデントが発生しコース上にオイルが漏れたことから、その処理作業によって公式予選は予定よりも遅れてスタートすることになった。さらに、そのオイル漏れによる路面状況の変化の影響が大きいと競技団が判断したことから、今大会の予選はウエット宣言が出された場合の方式が採用されることに。つまり、GT300クラスはQ1、Q2のタイムを合算せずに、Q2のタイムのみで順位認定を行い、さらにアッパー16とロワー17の入れ替えも行われないことになった。GT300クラスはまず、Q1でポールポジション争いのアッパー16に入るべく、各車がフレッシュタイヤで最速タイムを目指すことになる。
台数が多いGT300クラスは2組に分けられて予選を走行するが、Q1で先に走行したのはグループB。ここには7台のヨコハマタイヤユーザーが出走し、リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R、METALIVE S ランボルギーニ GT3(松浦孝亮選手/坂口夏月選手)、グッドスマイル 初音ミク AMG、RUNUP RIVAUX GT-R(大滝拓也選手/青木孝行選手/荒川麟選手)の4台がアッパー16に進出。続くグループAには8台のヨコハマタイヤユーザーが出走し、こちらもマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(藤波清斗選手/塩津佑介選手)、UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI、JLOC ランボルギーニ GT3、ANEST IWATA Racing RC F GT3(イゴール・オオムラ・フラガ選手/古谷悠河選手)の4 台がトップ8 に入り、アッパー16 に進出した。
アッパー16でのQ2は、今大会から車両がランボルギーニのエボ2モデルに変更となったMETALIVE S ランボルギーニ GT3が2位。車両のデリバリーに時間がかかり、この日の公式練習がシェイクダウンというあわただしいデビューとなった1台だが、チームが急ピッチで車両の準備を進め、その努力にドライバー2人が応えた形で今季ベストグリッドを獲得した。3位のグッドスマイル 初音ミク AMGも今季予選での最高位。JLOC ランボルギーニ GT3が5位、リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが6位と、上位6台中4台がヨコハマタイヤユーザーという結果になった。
GT500クラスはQ1とQ2のタイム合算方式に変わりはなく、リアライズコーポレーションADVAN Zが7位、WedsSport ADVAN GR Supraが9位で2台そろってシングルグリッドを獲得。決勝レースは予選で使用したタイヤでスタートしなければならないため、予選ではなるべく走行周回数をおさえたいところだが、リアライズコーポレーションADVAN ZはQ2を担当した名取選手が周りより少ない周回数できっちりとタイムを出してみせた。
翌4日(日)も、富士スピードウェイは朝からじっとしていても汗が噴き出すほどの真夏の陽気に包まれた。家族連れのモータースポーツファンが多く訪れたサーキットで、いよいよ77周にわたる決勝レースがスタート。GT500クラスはリアライズコーポレーション ADVAN Zが松田選手、WedsSport ADVAN GR Supraは国本選手がそれぞれ前半スティントを担当し、序盤は8番手、9番手とシングルポジションをキープしたままレースを展開した。
スタート時には気温34度、路面温度は55度とこの週末最高温度を記録し、灼熱の戦いに。ドライバーにも車両にも、タイヤにとっても非常にタフなコンディションの中、2台は大きくペースを乱すことなく周回を重ねていく。先頭車両が29周目に入ったところで、GT300クラスのHOPPY Schatz GR Supra GT(菅波冬悟選手/松井孝允選手/佐藤公哉選手)がダンロップコーナー先でストップしてしまい、車両回収のためにフルコースイエロー(FCY)が提示された。回収作業にそれほど時間はかからず、翌周にはFCY 解除。
このあたりからGT500クラスではタイヤ交換に向かう車両が現れ始めるが、まずはリアライズコーポレーション ADVAN Zが31周を終えるところでピットイン。これを追いかけていたWedsSport ADVAN GR Supraがその翌周にピットに向かった。それぞれピット作業もスムーズで、ここでの順位変動はなし。どちらも残り40周以上のロングスティントを、名取選手と阪口選手が担当することになった。
追いかける側の阪口選手はタイヤがまだ新しい36周目に1分30秒102のファステストタイムをマーク。名取選手もベストタイムを更新してギャップを拡げようとするが、阪口選手のほうがラップタイムは良く、41周目にはテールトゥノーズまで接近する。45周目のGRスープラコーナーで名取選手がGT300クラスにやや引っかかってしまったところを見逃さなかった阪口選手が、パナソニック(最終)コーナーの立ち上がりでイン側に切り込むと、コントロールラインまでに名取選手をオーバーテイクすることに成功。名取選手もスリップストリームを使って再逆転を狙うが、1コーナーまでに届かず、これでWedsSport ADVAN GR Supraが8番手、リアライズコーポレーション ADVAN Zが9番手とポジションを入れ替える形になった。
リアライズコーポレーション ADVAN Zはその後、後方の車両から猛チャージを受け、56周目からは数周にわたってサイド・バイ・サイドの戦いに持ち込まれる。必死にブロックしてきた名取選手だが、61周目の13コーナーでついに逆転を許すと、バトルの連続でタイヤの消耗も激しく、さらに1台にかわされ11番手まで後退することになった。
その後、タイヤに異変を感じた名取選手は62周を終えるところで緊急ピットイン。左リヤタイヤにスローパンクチャーが発生しており、タイヤを交換してコースに復帰。最終的にリアライズコーポレーション ADVAN Zはトップから1周遅れの14位でフィニッシュとなった。ヨコハマタイヤユーザー同士のバトルを制したWedsSport ADVAN GR Supraは、終盤に1台の先行を許してポジションを下げたものの、9位フィニッシュ。今季2度目のポイント獲得を果たしている。
GT300クラスの争いは、レースの前半で出たFCYを巧みに利用したポールシッターの車両が、2位以下に数十秒ものマージンを築いたことで優勝争いは序盤に決着を見ることに。ただ2位以下の争いは非常に熾烈で、なかでも観客の目を引き付け続けたのは、グッドスマイル 初音ミク AMGとリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rによる2位争いだった。
ピット作業でMETALIVE S ランボルギーニ GT3の逆転に成功した2台。特にリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの後半スティントを託されたオリベイラ選手は持ち前のアグレッシブな走りでグッドスマイル 初音ミク AMGとの間に入っていた2台を次々にかわし、48周目にはその差が1秒というところまで接近してきた。グッドスマイル 初音ミク AMGは、こちらもベテランで経験豊富な谷口選手。GT300クラスでチャンピオン経験を持つ両者の戦いは、ときにGT500クラスを利用しながら一進一退の攻防を展開した。
最終的には、オリベイラ選手の猛攻をしのぎ切った谷口選手が先にチェッカーを受け、グッドスマイル 初音ミク AMGが2位フィニッシュで2022年の第5戦鈴鹿大会以来、約2年ぶりの表彰台登壇。ランキングでも一気に5位に浮上した。最後までプッシュしたリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは、わずかに届かず3位。それでも今季2度目の表彰台獲得でシリーズランキングでも1ひとつポジションを上げ6位につけている。
国本雄資選手(WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績:GT500クラス9位】
「僕が担当したスタートスティントでは、思ったよりもペースダウンせずに走ることができました。ピックアップやデグラデーションに悩まされるようなことも、今回は意外と少なく、コンスタントに走れました」
「ただ後半スティントは、土曜日の公式練習の時点では感触が良かったものの、実際のレースになったときには思っていた以上に路面コンディションが変わり、期待していたパフォーマンスが出せなかったのは残念です」
「ただポイント獲得はできましたし、ここ最近の中ではコンスタントに走れたことはポジティブなことだととらえています。次戦の鈴鹿は自分としても得意なコースですし、予選からいいパフォーマンスを出して、最後までいいラップで走り切りたいです」
阪口晴南選手(WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績:GT500クラス9位】
「路面温度が高い状態で後半スティントに入り、途中までのペースは良かったのですが、路面温度が下がりコンディションも変化していく中でそのペースを維持できなかったことは今後に向けた課題だと考えています」
「ファステストラップは記録できましたが、事前のテストや公式練習ではそのペースを維持できると感じていたのに、実際の決勝ではそれが出なかったのは、何が影響したのかをしっかり分析したいと思います。これは大きな課題で、克服しないとテストでよかったのに本番でなかなかそれが実現しないという状況になってしまいます」
「次戦は、同じ鈴鹿で戦った第3戦がすごく悔しい結果だったので、間にテストはありませんが少しでも状況を改善して挑めるよう、みんなで頑張っていきたいと思います」
松田次生選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス14位】
「予選から決勝のスタートまで同じタイヤを使用しなければいけないというルールの中、今回は2人でなるべく最小周回数で予選を戦おうと話していました。僕自身のタイムも良かったし、Q2の名取選手もアウトラップ、ウォームアップ、アタックときっちりと決めてくれたので、GT500クラスの中でもミニマムの周回数の中でタイムを出せたのは良かったと思います」
「決勝では、今回持ち込んだタイヤの構造が良くて前のクルマにもついていけていたので、後半スティントも含めて期待していたのですが、当初予定していたよりも早めにピットに入ることになり、名取選手に長いスティントを担当してもらうことになってしまいました。タイヤ含め、次戦以降に向けた今後の課題かなと思っています」
名取鉄平選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス14位】
「予選はミニマム周回数でライバル勢に食い込むタイムを出せました。今ある条件の中で、松田選手と協力していい結果を得られたと思っています」
「決勝レースは、内容としては僕自身すごく楽しめたレースになりました。後ろのクルマをおさえながらいろいろな走りを試したりして、次につなげられる収穫はあったと思っています。ただタイヤにアクシデントが起きてしまったことは残念です。次戦は最後まで戦いきれるよう万全の状態でレースに臨みたいです」
谷口信輝選手(グッドスマイル 初音ミク AMG)
【今回の成績:GT300クラス準優勝】
「片岡選手が担当した前半スティントの段階でトップの車両とは大きなギャップが着いてしまいましたから、勝負は2位争いという状況で僕にバトンが渡されました」
「まずは88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)の小暮選手が迫ってきて、タイヤが温まってからは突き放せたのですが、次は56号車(リアライズコーポレーション ADVAN Z)のオリベイラ選手がどんどん迫ってくるという状況で、ずっと防戦一方のままという展開でしたね」
「ペースは56号車のほうがよさそうだったので、今回2位を取れたのは予選で片岡選手が88号車や56号車よりも前のポジションを獲ってくれたことが大きいです。非常に苦しいスティントでしたが、久々にレースをした感があって楽しめました」
片岡龍也選手(グッドスマイル 初音ミク AMG)
【今回の成績:GT300クラス準優勝】
「今回、ロングランのペースに対してはものすごく自信があって、何周かすれば自分たちに流れがくると思っていたのですが、実際にはトップの車両もペースが良かったし、何より自分の周りを走るヨコハマ勢も自分たちと同じタイヤを履いていて、調子がいいのは自分たちのところだけじゃないぞという状況だったので、結果的にはまるでミドルフォーミュラのレースのように、みんな全開で走っているけど誰もタイムが落ちない、見た目には動きがないけどものすごくレベルが高い内容のスティントになりました」
「どれだけ攻め続けてもタイヤが持ちこたえてくれて、いい仕事をしてくれました。自分たちのレベルアップも感じましたが、同じぐらいライバルも強くなっていますから、もう少し努力して、次こそは自分たちが勝ちたいですね」
白石貴之[横浜ゴム タイヤ製品開発本部MST開発部 技術開発1グループ・リーダー]
「GT500については前戦に引き続き厳しいレースとなりました。今回は6月のオートポリス、7月のSUGOでのタイヤメーカーテストの結果を反映した持ち込みを行っており、今年から変更になった予選フォーマットに対していろいろと取り組んで来たこともあり、Q1/Q2でのタイムの低下も少なくなってきていると感じています。決勝では部分的に収穫はありましたが、トータルで見ると非常に高温になった富士スピードウェイというサーキットに対しての戦闘力という点では依然足りず、課題も多いものとなりました」
「WedsSport ADVAN GR Supraは高温下でのラップタイムの速さはありましたが、50℃を超える状況での持続性に課題があり、リアライズコーポレーション ADVAN Z についてはまだ全体的に昨年のレベルまで達しておらず、それだけにチームさんに激しい使い方をさせざるを得ない事で耐久性を含めた継続性に課題が出てしまいました」
「状況は同じもののその課題は車両毎に異なっておりその難しさを感じていますが、次戦の第5戦・鈴鹿に向けてはそれぞれで異なった対策も講じていますので、効果を確認しつつ結果に結び付けられるように進めます」
「GT300については第2戦・富士に引き続いて予選、決勝ともにGT3車両全体で性能の高さを証明できたのではないかと思っていますが、タイヤの中身は2回のGTEテストを通じてかなり変わっており、成果が出たので良かったと安心しています」
「次戦鈴鹿はRd.3が意外な低温になったこともあり苦戦しましたが、今回同様にヨコハマ勢が結果を出せるように進めて行きます」