ミーティングスペースにコの字に並べた机を挟み、開発担当、設計担当、エンジン開発担当と3号車Niterra MOTUL Z、23号車MOTUL AUTECH Zのチーム側エンジニア、メカニック、そして首脳陣が揃う。さらに12号車MARELLI IMPUL Z、24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zのトラックエンジニアもリアル会議出席が難しい場合はリモートで参加する『プラニングセンターミーティング』は週に一度、テーマによって時間の長短はあるものの必ず毎週実施するという。
議題は主に中長期的な今後の方針を決める内容になるが、たとえばレースで発生した不具合などの直近の課題などもリスト化されて検討していく。現場の知見を開発が吸い上げて、逆に開発意図を現場が理解する。チームとファクトリーが一体となっているNMC/NISMOだからこそ作ることが可能な会議体であろう。なおかつ、各部署オフィスはワンフロアに集約されており、部署の垣根なく確認や話し合いができる環境が意識的に構築されている。
今回は週に一度行われているという会議を撮影用に再現していただいた。その中身は公開できずとも、その会議体の存在を示すことでNMC/NISMOの『ソフト』パワーを伝えるには十分なインパクトが感じられた。

会議を新車開発前のタイミングに実施……ならば、どこでもやることかもしれない。しかし、それを毎週やることで議論が活性化していくのだろう。現在のGT500開発はエンジンに開発領域が広く与えられている反面、車体は部品共通化とスペックの統一によって、大幅に開発が制限されている。
その分、車体開発の業務が減るように理解しがちだが、狭い領域を深堀りすることで、競争に打ち勝っていくことが必要で、だからこそ、こういったミーティングに価値があるのだろう。「部品と部品をつなぐにしても、そこをどうつなぐかで変わってきます」と話すのは木賀新一総監督。つなぎ方次第で剛性も変われば、パッケージとしての重量も変わってくる。制約が多いからこそ、開発視点を広くとる必要がある。
20年前のGT500はシーズンごとに搭載するエンジンが変更されたり、その搭載方向が逆転したりと技術の変化、進化が分かりやすくみえて、そこに『ワークス』の凄みを感じることができた。しかし、最新GT500は、人間の『知』の結集に『ワークス』の凄みが集約されるのだと再認識させられた。我々が決勝で目にするのはその最後の仕上げの部分だけなのだ。



※中編に続く