更新日: 2024.08.09 23:33
apr GR86 GT 2024スーパーGT第4戦富士 レースレポート
apr GR86 GT
2024 AUTOBACS SUPER GT Round4
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
8月3日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万600人
8月4日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:3万1600人
タイヤ開発が進み、空力アップデートも奏功。順位以上に感じられた手応え
前戦からおよそ2カ月のインターバルを経て、今季2回目の開催となった富士ラウンド。第2戦はスーパーGTで初めての3時間レースだったが、今大会もまた初となる350kmレースでの開催となった。
通常のレースフォーマットは300kmであり、プラス50kmがどのような影響を及ぼすのか。3時間レースのような2回の給油をともなうピット義務はなく、燃費についても1回の給油で走り切れる。ただし、燃費のウインドウ的に極端なショートスティントは無理であり、全車が近い周回数でのピットタイミングになることが予想される。戦略の勘所となるのは、プラス50kmを1回のピットで走り切るためのタイヤの選択だ。特に第1スティントは、予選でQ1とQ2を走ったタイヤを使うことになる。
apr GR86 GTは、第1ドライバーの永井宏明、第2ドライバーの小林利徠斗に加え、バックアップとして織戸学を第3ドライバーに登録して初めての350kmレースに臨んだ。
■公式練習/17番手 8月3日(土)9:00~10:45
9時の時点で気温29度、路面温度38度というコンディションでスタートした公式練習。セッション中には気温32度、路面温度45度まで上昇した。
最初の走行を担当したのは小林。今回、apr GR86 GTは僚友のapr LC500h GTで先行開発したのと同様の新しい空力パッケージを投入している。目指したのはフロントのグリップアップだ。
小林は7周でピットに戻り、永井に交代。その後、ふたりは乗り換えてタイヤとセットアップを確認していく。新しい空力パッケージも持ち込みのセッティングもバランスが良く、順調にメニューを進めていった。
ベストタイムは小林が16周目にマークした1分39秒203。第2戦富士の公式練習では22番手タイムだったが、今回は17番手。そして永井と小林は、そのポジション以上の手応えを感じていた。
■公式予選 8月3日(土)
Q1 Gr.A/11番手 14:48~14:58
Q2 Gr.2/7番手 15:23~15:33
総合順位23番手
予選Q1はグループAに出走。14時30分時点で気温は33度、路面温度は54度に達していた。なお、今大会の予選は直前のFIA-F4レースでオイルがコース上に漏れてしまい、路面状況変化の影響が大きいことから、GT300クラスではQ1とQ2のタイムを合算しない「ウエットフォーマット」で行われた。
Q1は小林が担当。ウエットフォーマットでは、Q1の各組で8番手までがQ2で上位を争うグループ1に入れる。小林は計測6周目に1分38秒940を記録。好感触のアタックだったが、グループAの11番手タイムとなり、Q2は17番グリッド以降を決めるグループ2での出走となった。
Q2はQ1で使ったユーズドタイヤということもあり、永井は計測3周目でアタックに入る。セクター1では小林のタイムを上まわる好走。ラップタイムは1分39秒741でグループ2の7番手となり、スターティンググリッドは23番手で確定した。
apr GR86 GTはこの富士ラウンドにハード系とソフト系のタイヤを持ち込み、公式練習での感触を経て予選ではハードをチョイスしていた。ソフトに比べてピークグリップは出ないが、明日も暑くなる決勝を見据えた選択。ロングランへの自信を胸に、決勝へと挑む。
■永井宏明選手
「僕たちはちょっと硬めのタイヤを選択したのでピークのグリップはないですけど、ロングランのフィーリングも持ち込みセッティングも良かったですね。今年からフロントタイヤが1サイズ小さくなったことで温まりが良く、今回からはエアロも変わって、1コーナーでの旋回力が高くなったと感じました。順位自体は残念でしたが、僕たちのクルマはタイヤに優しいし、決勝ではペースを落とさずにゴールまで走れるんじゃないかなと思います」
■織戸学選手
「持ち込みのタイヤとセットアップ、コンディションも含めてすごく良い雰囲気を感じますね。予選はもうちょっといけるかなという思いもありましたけど、ほんのちょっとのところでポジションが落ちてしまっただけで流れは良いと思いますよ。今回選択したタイヤは僕もテストで乗っていて、そのときにロングランの手応えを感じていました。決勝に対してネガティブな要素はないし、安心して見ていられますね」
■小林利徠斗選手
「この富士大会に向けてクルマの進化があって、セットアップも前後バランスもすごく良くて公式練習の最初から走りやすかったです。予選は良いタイムが出たと思ったのですが、ニュータイヤでのピークグリップがちょっと足りず、感覚にタイムがともなっていない感じでした。ちょと悔しさはありますが、周回を重ねてもタイヤのグリップがずっと残っているので、明日のレースではそこに期待できるのかなと思っています」
■金曽裕人監督
「これまでのタイヤはピークグリップに頼る方向で選んでいたけど、今回はロングディスタンスで安定して走れるタイヤを選択しました。今年からフロントタイヤを小径化して、タイヤの構造とゴムの開発がある程度進んできた。まだベストではないけどベターなタイヤを選択できたと思います。クルマもフロントのダウンフォースを上げる空力パッケージを投入して、今年になって今回が一番良いセットアップになっている感じで、永井選手と小林選手のタイム差がほぼないのが物語ってますね」
■決勝レース(71周)/18位 8月4日(日)14:37~16:37
決勝のコンディションは気温35度、路面温度56度。気象庁の予報用語で「猛暑日」と定義される夏空のもと、未知なる350kmレースがスタートした。
スタートを託された小林は、オープニングラップでひとつポジションを下げてしまい、24番手でコントロールラインを通過。しかし、2周目には4つ、さらに3周目と5周目にひとつずつポジションを上げて18番手まで浮上する。混戦のなかで着実に順位を上げていった。
ところが、14周目、16周目、20周目にそれぞれオーバーテイクを許してしまう。チョイスしたハードタイヤはコンディションに合っており安定したラップタイムを刻んでいたが、混戦が続くなかで前走車に詰まり、その隙をつかれてしまった。まだスーパーGT4戦目、経験不足が露呈してしまう。それでも小林は22周目と24周目に1台ずつオーバーテイクして意地を見せる。30周前後からルーティンピットに向かうライバルが増えるなか、41周まで引っ張ってピットに入った。
バトンを受け取った永井は19番手でコースに戻る。タイヤは予選から第1スティントで使ったのと同じハード系に交換した。コースに戻ったときの後続との差は1秒を切っていたが、小径サイズのフロントタイヤは温まりが良く、早々にグリップを発揮してポジションをキープ。その後のラップタイムも安定しており、後続を引き離していった。前走車とは離れていたこともあり追い上げることはできなかったが、レース終盤に前車が緊急ピットに入ったことで、ひとつポジションを上げて18位でチェッカーを受けた。
入賞は叶わなかったが決勝18位は今季のベストリザルト。そして、タイヤの進化と空力アップデートの効果を感じることができた一戦になった。次戦鈴鹿はapr GR86 GTにとって相性が良いサーキット。今大会で上向いた流れをつなげ、入賞を狙いにいく。
■永井宏明選手
「決勝のバランスは良かったです。しっかりバトルもできましたしタイヤもセットもやっと決まり始めた感があり収穫は大きかったです。次の鈴鹿は我々の地元ホームコースですので、今回の結果は間違いなく鈴鹿でのパフォーマンスに繋がるので、期待してください」
■織戸学選手
「今回僕は乗っていないので外から見た感想ですけど、週末を通して良い流れだったと思います。第1スティントの小林選手は序盤でポジションを上げて、その後抜かれることもあったけど、やっぱりまだ混戦に慣れていないというか経験の差が出ましたね。でも、彼の場合は絶対にぶつからずに帰ってくるというのがひとつのテーマにあって、それを続けているのは評価できると思います。永井選手のペースもすごく良かった。小林選手もクルマもタイヤも進化の過程にあるなかで、18位という結果は現状で言えば悪くないと思いますよ」
■小林利徠斗選手
「序盤は混戦のなかでいけるところをきちんと見極めて、1台ずつ確実に抜いていくことができたのは良かったかなと思います。でもその後、ペースは悪くなかったのですが、前に詰まったタイミングで抜かれてしまったことが何回かあったのは悔しいところです。そこは改善する必要があるので、また頑張っていきたいと思います。ペースとしては最後までタイヤも良く、クルマのセットも決まっていたのでタイムの落ち幅は小さかったですね。そこは次戦に向けての収穫になりました」
■金曽裕人監督
「マシンのバランスも良かったし、硬めのタイヤでタレることもなかった。第1スティントも第2スティントも、ペースは安定していましたね。小林選手は序盤でポジションを上げたところまでは良かったけど、隙をつかれて抜かれてしまった。しっかりとポジションをキープできていれば、もっと上を狙えた展開になったはず。でも、スーパーGTはそんな甘い世界じゃない。そこは新人が絶対に通らなくちゃいけない登竜門。良い勉強になったと思うので、ここからさらに成長して欲しいですし、次の鈴鹿はホームコースなので、強い30号車に期待ください」