更新日: 2024.08.09 23:34
apr LC500h GT 2024スーパーGT第4戦富士 レースレポート
apr LC500h GT
2024 AUTOBACS SUPER GT Round4
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
8月3日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万600人
8月4日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:3万1600人
未知の350kmレースでタイヤ無交換に挑戦。唯一走り切った経験が今後の糧に
第3戦鈴鹿から、およそ2カ月のインターバルを経て開催された第4戦富士。この間の7月中旬にはスポーツランドSUGOでGTE(GTエントラント協会)が主催するGT300テストが行われた。
apr LC500h GTはSUGOテストで新しい空力パッケージを試し、効果が確認できたことから今大会に投入。フロントのダウンフォース向上を目的としたアップデートで、外観ではフロントフェンダーの側面に設けたダクトが目を引くが、下面も含めて細部まで手を加えた。リヤはウイングの角度でダウンフォース量を調整しやすいが、フロントは容易ではない。空気の流れを根本的に見直したのだ。
第4戦富士は、通常のレースフォーマットからプラス50kmとなる初めての350kmレース。1回の給油で走り切れる距離だが、予選で2回アタックしたタイヤで決勝をスタートするルールにおいて、タイヤの使い方が鍵を握る。apr LC500h GTは秘策を準備し、小高一斗、中村仁に加えて根本悠生を第3ドライバーに登録し、未知の350kmレースに挑んだ。
■公式練習/21番手 8月3日(土)9:00~10:45
9時の時点で気温29度、路面温度38度というコンディションでスタートした公式練習。セッション中には気温32度、路面温度45度まで上昇した。今季ここまでの3戦では、公式練習の走り出しは小高が務めてタイヤとセットアップを確認していたが、今回は予選でQ1を中村に託す予定だったことからニュータイヤに慣れるためにも中村からコースイン。6周したところでピットに戻り、小高に代わってセットアップを進めていく。
今回、apr LC500h GTはかなり硬めのタイヤを持ち込んでいた。それに合わせ込むためにセッティングをアジャストしていく。公式練習最後のGT300専有走行では、ソフト系のタイヤに履き替えて中村がコースへ。専有前にハードタイヤで記録した1分39秒751から1分39秒329にタイムアップし、ポジションも24番手から21番手に上げて公式練習を終えた。
■公式予選 8月3日(土)
Q1 Gr.B/7番手 14:30~14:40
Q2 Gr.2/12番手 15:41~15:51
総合順位12番手
予選Q1はグループBに出走。14時30分時点で気温は33度、路面温度は54度に達していた。なお、今大会の予選は直前のFIA-F4レースでオイルがコース上に漏れてしまい、路面状況変化の影響が大きいことから、GT300クラスではQ1とQ2のタイムを合算しない「ウエットフォーマット」で行われた。
Q1は中村が担当する予定だったが、8番手までに入ってQ2の上位グループに進出するために、万全を期して小高に託す。選んだタイヤは公式練習でタイムが出なかったほうのハード系だ。公式練習中にセットアップも決まり、かなり硬いタイヤだったがウォームアップは悪くなく、計測4周目のアタックで1分38秒848をマーク。グループBを7番手で突破した。
Q2グループ1では、中村が計測3周目に1分38秒754を記録。Q2はQ1で使ったユーズドタイヤで走ることになるが、ニュータイヤのピークグリップよりも走行を重ねたコース上のラバーグリップによる伸び代が勝りタイムアップ。中村も好感触のアタックだったが、Q1からQ2への伸び代でライバルたちのほうが大きく、12番手となった。
Q2でもうひと伸びしたかったところではあるが、予選12番手は想定内。真夏の350kmレースを見据え、ライバルよりも硬いタイヤを選択したことを考えると、むしろ上出来と言える結果だった。
■小高一斗選手
「公式練習で路面温度が高くない状態の走り出しの感じでは、クルマとタイヤのバランスが良くなかったんですけど、予選までにしっかりと合わせることができました。僕たちが選択したのはかなり硬いタイヤなのでピークグリップは低く、Q1で8番手以内に入れるかギリギリでしたが上位に入れて良かったです。グリッドはいつもと同じようなところなので、うまくレースを組み立てれば確実にポイントを取れるかなと思います」
■根本悠生選手
「今回は決勝を重視して硬いタイヤを持ち込んでいて、公式練習でも一発の速さを引き出すセットアップではなく、ロングラン向けで進めていました。そのぶん予選が厳しいことは分かっていたんですけど、小高選手がQ1を上位で通過してくれて、Q2の中村選手はしっかりとタイムアップしてくれた。僕たちの戦略として、予選12番手は悪くないですね」
■中村仁選手
「当初は僕がQ1を担当する予定だったので、ニュータイヤの練習のためにも公式練習は僕から走らせてもらいました。でも、すごく硬めのタイヤを選んでいて、まだ路面温度も上がっていない状況でタイヤの良いところを引き出せませんでした。なので、Q1は小高選手にお願いして、素晴らしい走りをしてくれました。自分のQ2でのアタックに関しては、タイヤのグリップ感もすごくあって、納得できる走りができたと思います」
■金曽裕人監督
「今回持ち込んだタイヤは決勝を重視したもので、公式練習では徹底してロングランのセットアップをやっていました。専有走行では少し柔らかいほうのタイヤを履いたけど、燃料は結構積んだ状態なのでタイムが出なかったのはそのためです」
「そう考えると、予選は小高選手がQ1を上位で突破してくれて、Q2の中村選手も12番手というのは上出来でしたね。ドライバーが頑張ってくれました。決勝の戦略はすでに決めてあって、楽しみです!」
■決勝レース(71周)/18位 8月4日(日)14:37~16:37
決勝のコンディションは気温35度、路面温度56度。気象庁の予報用語で「猛暑日」と定義される暑さは、apr LC500h GTが選んだタイヤにマッチしていた。
第1スティントを担当したのは小高。オープニングラップで前走車の2台が接触してポジションを落としたことで、10番手に浮上する。そこから前後との間隔が1秒以内という接戦のなか、GT500に追いつかれた7周目のコカ・コーラコーナーでGT500車両と接触しそうになるのを避けるためにコースを飛び出し、ひとつポジションを落としてしまう。しかし小高のペースは良く、12周目には抜き返し、27周目にはさらにもう1台をオーバーテイク。ピットのタイミングもあるが実質4番手を走行していた33周目にピットに入った。
ここでapr LC500h GTはタイヤ無交換作戦を敢行。未知となる真夏の350kmレースでのタイヤ無交換はチャレンジングな作戦だが、それを見越したタイヤを選択し、公式練習でもそれができることを確認していた。素早いピットで中村を送り出すと、まだルーティンピットを行っていない車両を除けば2番手のポジションでコースに戻ったことになる。
しかし、中村の後方にはJLOC Lamborghini GT3が迫っていた。タイヤを換えていないためウオームアップの必要はなく、アウトラップでしっかりと抑え込む。ホームストレートで並びかけられるが、1コーナーに向けてはストロングポジションとなるイン側につけていた。だが、このタイミングでピットアウトしてきた車両に前を塞がれるかたちでオーバーテイクを許してしまう。さらに、混戦が続くなかで2度も接触される場面があり、それも含めて順位を下げてしまった。
タイヤは最後まで安定していてペースは悪くなかったが、13番手までポジションダウン。その後、接触してきた1台にドライブスルーペナルティが出されたことで12番手でのフィニッシュとなった。
入賞には届かなかったが、高い気温と路面温度のなかでもタイヤ無交換で走り切れたことはチームにとって大きな経験になった。今回のチャレンジは、次につながる糧となる。
■小高一斗選手
「今回は決勝をすごく安定して走れるクルマをつくれました。僕のスティントでは表彰台を争うクルマとの差はありましたけど、入賞するには充分なペースがありましたね。僕たちのポジションでのタイヤ無交換は、コースに戻ったときにタイヤ交換組がすぐ後ろにくるのは分かっていたので難しい作戦だったけど、中村選手もこれから経験を積めば、もっとうまく戦えたんじゃないかなと思います。レースが終わっての中村選手の第一声は『すみません』でした(笑)。抜かれた理由は本人も分かっているはずだし、そこは経験を積んでいくしかないのでこれからに期待ですね」
■根本悠生選手
「スタート時の高い路面温度は僕たちのタイヤにマッチしていたけど、徐々に下がっていってタイヤ交換勢に走りやすいコンディションになってしまいましたね。ブリヂストンタイヤは温度レンジが広いので全然大丈夫だったけど、一発の速さという引き出しが僕たちにはなかった感じです。僕たちのクルマはタイヤに優しいのが強みですが、逆に言うと一発のタイムはそれほど出ない。僕たちのいまの環境のなかで選べる戦略としては間違えていなかったと思いますよ」
■中村仁選手
「タイヤ的にはすごくドロップが少なくて、タイヤを信じて走ることができました。でも、序盤でペースを上げられず、飲み込まれるかたちになってしまいました。接触されたのもありますけど、それ以前に自分でもう少しできたことはあったかなと思います。入賞は目指せたはずで、燃料を積んで重いときの走らせ方だったり、バトル中の判断を小高選手や金曽監督に教えてもらいながら、しっかり成長していきたいです」
■金曽裕人監督
「今回は最初からタイヤ無交換でいくことを決めていました。初めての350kmレースで、一番乗りでタイヤ無交換をやってやろうと(笑)。実際、このレースをタイヤ無交換で走り切ったのは我々だけ。さすがブリヂストン! ですね。レースを終えた後のタイヤのウエアレートも全然問題なかったし、ペースも良かった。2~3台に抜かれるのは覚悟して、実質2番手でコースに戻れるタイミングでピットに入れたんですけど、まだスーパーGTが4戦目の中村選手にはちょっと難しすぎる作戦だったかもしれませんね。でも、今回のレースで彼は間違いなくもっと強くなるはずだし、チームとして鍛えるべきウイークポイントが見えたのは収穫です。次の鈴鹿も350㎞、また奇策をやってみようかと妄想中です」