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投稿日: 2024.08.27 17:10
更新日: 2024.08.27 17:11

【GT300マシンフォーカス】美ボディに秘める真の姿。apr LC500h GTの魅力は直線でなく車体と空力のバランス


スーパーGT | 【GT300マシンフォーカス】美ボディに秘める真の姿。apr LC500h GTの魅力は直線でなく車体と空力のバランス

「載せているエンジンもGR86と一緒なら、付いている足回りも一緒で、ただ本当に“ダックスフンド”になっただけ(笑)」と語る金曽監督だが、今季2024年は手塩に掛けたその兄貴分たちが高い戦闘力を発揮。岡山や鈴鹿ではGR86が、富士ではGRスープラが勝利やポディウムを獲得している。その戦績の一端を担っているのが、このGTA-GT300規定の“飛び道具”ともなっているタイヤ無交換作戦だ。

「僕らは岡山の小回りで速いなんて言えないですし、クルマの絶対的なバランスで言えばGR86がいちばん取りやすいかもしれない。重量配分もプリウス、GRスープラ、GR86、LCの順番で、どんどんと50対50の理想値に近づいていく。その点、中間ホイールベースのGR86はコースを選ばない、苦手なサーキットがないんですよね」と続けた金曽監督。

「そのうえでタイヤ無交換ができるのは、軽さと接地性の良い足回りというのがあります。LCは重いけど、4輪にバランスよくタイヤ荷重が掛かり、綺麗にタイヤが減ってくれます。LCのバランスの良さにブリヂストンのタイヤ構造や開発スピードなどで、その重さにもどんどん合わせてくれる。そこは本当に助かっています」

 今季序盤はGT300クラスでも「ウルトラヘビー級でトップランカーの重さ」という自重が影響し(参考:第4戦富士の基本車両重量1378kgはGT3を含むクラス最重量タイ)、プッシュを掛けるとタイヤが負荷で倒れ込み、タイムが如実に落ちるという苦しさも経験した。とくに燃料を満タン搭載したスタートスティントから序盤の数周は「むちゃくちゃ弱かった」と振り返る。

 それでも自重の主要因たるハイブリッド機構は、プリウス時代に経験した難しさとは異なるステージへと歩を進め、とくに富士で顕著な直線速度の上乗せのみならず、ブレーキング回生でもさらなるパフォーマンスを求めるフェイズにある。

「プリウスの初期はリヤがキャンキャンとロックし、ロクに真っ直ぐ止まれない……という時代もありましたが、FR時代の後期にはエンドレスさんとの協業もあり本当に良い進化がありました。さらに今は、このLCになったことで事象を切り離すことができ、問題が重量配分で起こっているのか、制御で起こっているのか、はたまた回生で起こっているのか、その見極めがずいぶんと進化することができました」と金曽監督。

「なので楽な方向ですけど、楽で成立する方向にいったら今度は速さや、もっとバランスのいいほう、さらにハイブリッドをパフォーマンス方向に持っていくパッドなど、いまだに(開発を)やっています。それぐらい電気的なブレーキと、パットで止めるブレーキと、それにドライバーの感覚。ここは未知数で非常に面白いですし、開発のしがいがあります」

apr LC500h GT
エンドレス製のブレーキシステムを装備するapr LC500h GT。タイヤはブリヂストン、ホイールはレイズを履く

 もともと「60点ぐらいだった」ものが「今は96、97、98点」と、そこからはなかなか詰まらない。レーシングカーの「あとコンマ1秒と一緒」で、ある程度の水準まで到達したその先というのは、際限なく時間と労力が掛かる分野でもある。そんな苦労を経ているからこそ、この“車種”にはさらなる可能性が眠っていると、設計者ならではの見立ても明かす。

「このLCはベースモデルに“500h”と“500”があります。少なくとも軽快さやコーナリング性能をもっと狙っていくのであれば『LC500』、最高速やストレートに振りたければ『LC500h』と、そういった扱い方はできると思います。僕らはもう長くハイブリッド開発の難しさを経験しているからこそ、どこでどう活用すればいいというのは分かっています。そこは僕らがチャレンジすれば良い部分です」

「でも、この空力にシャシーと重量配分のバランス、そこに軽さが加わるなら……もし“ノンブリッド”で良くてあと100kg軽かったなら、間違いなく『相当、速いゼ?』と思います(笑)。変な話、今のGR86のチームがコンバートして『これ(LC500)でやりたい』となっても、簡単にできることですしね」

apr LC500h GT
apr LC500h GTのフロントタイヤハウスまわり。空力パーツは風洞実験により細かく修正が行われた
apr LC500h GT
apr LC500h GTのリヤまわり。こちらも風洞実験でタイヤハウスやリヤウイングステー、翼端板などが変更されている
apr LC500h GT
コスワース製のメーターパネルと長方形のバックモニターが特徴的なapr LC500h GTのコックピット
apr LC500h GT
2024スーパーGT第4戦富士 apr LC500h GT(小高一斗/中村仁/根本悠生)


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