更新日: 2024.11.05 16:35
横浜ゴム 2024スーパーGT第8戦もてぎ レースレポート
予選17番手から大逆転で、VENTENY Lamborghini GT3がシーズン3勝目を挙げた!
スーパーGT第8戦が栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催。当初はシリーズチャンピオンが決定するシリーズ最終戦となるはずだったが、8月31日(土)、9月1日(日)に予定されていた第5戦鈴鹿大会が台風接近により12月7日(土)、8日(日)に延期されたため、もてぎでのGTレースは2021年以来、3年ぶりにサクセスウエイトを搭載しての戦いとなった。
第6戦から公式予選日が雨に祟られている今シーズンのスーパーGTだが、今大会も土曜日は悪天候に見舞われた。11月2日(土)は朝から雨で、9時からスタートした公式練習も車両のコースアウトや雨が強まったことによる赤旗中断が5回も発生。最後はGT300クラスの専有走行開始から数分で、ふたたび雨脚が強まったことで6度目の赤旗が提示され、それ以降のFCYテストまですべてのセッションがキャンセルとなった。
各車とも思うように走行を重ねることはできなかったが、GT300クラスでは前戦オートポリス大会でポールポジションを獲得したUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章選手/ロベルト・メリ・ムンタン選手)がクラス2番手タイム、UPGARAGE NSX GT3(小林崇志選手/小出峻選手)がクラス4番手タイムと、タイミングモニターの上位につけた。
雨は時折激しさを増しながら降り続けたが、公式予選が始まるころにはやや収まり、ウエットコンディションながら2戦ぶりにスケジュールどおりに予選セッションが始まった。GT300クラスはQ1を27台全車で争い、その上位14台と下位13台に分けてQ2を行う。決勝レースのスターティンググリッドを決める最終結果はQ2のタイムのみを採用するというのがウエットコンディションでの予選方式となる。
GT300クラスのQ1は20分間での戦いに。しかし開始から約半分が経過したところで雨量が増加してきたことからセッションは赤旗が提示され中断となる。雨の影響もあり気温も路面温度も低い中、各車は残り10分間でタイヤを温めてアタックしなければならなくなった。ヨコハマタイヤ勢は、公式練習でも好調だったUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIが5番手タイムで最上位。これにUPGARAGE NSX GT3、グッドスマイル 初音ミクAMG(谷口信輝選手/片岡龍也選手)が続き、5台が上位14台に入った。
昨年は最終戦として開催されたこのもてぎ大会で優勝を飾り、今大会も注目の1台となっていたVENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史選手/元嶋佑弥選手)は、タイヤ選択を外してしまい、まさかの23位。上位14台に入ることができず、後方からのスタートが決まってしまった。
Q2は、下位15台が出走するロワー15から走行開始し、VENTENY Lamborghini GT3がセッション3位でチェッカーを受け、総合結果で17位に。上位14台がポールポジションを争うアッパー14では、チームがいいクルマを作ってくれて調子が良く、雨量はありましたがタイヤもしっかりグリップしてくれましたと両ドライバーが振り返るUPGARAGE NSX GT3が最上位の3位を獲得。
続いてUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIが7位、METALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮選手/坂口夏月選手)が8位に続いた。
GT500クラスはQ1もQ2も全車が一斉に走行するため、ドライコンディション同様にQ1、Q2のタイムを合算して予選結果を決定する。ヨコハマタイヤ勢の2台は雨量の多さに苦戦し、リアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生選手/名取鉄平選手)がQ2で10番手タイムに食い込んだが、総合結果では14位。WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資選手/阪口晴南選手)は15位で、2台が最後列に並ぶ結果となった。
一夜明けたモビリティリゾートもてぎは、一転して雲ひとつない真っ青な空が広がった。前日の雨で空気中のダストも洗い流され、まぶしい日差しが照り付ける場所では汗ばむほどの暑さを感じるものの、強い北風も吹いていたため決勝レース開始時のコンディションは気温22度、路面温度31度と、例年とほぼ同じ状況だった。
GT500クラス、GT300クラスがそれぞれ隊列を作って300kmの決勝レースがスタート。GT300クラスでは、小出選手がスタートドライバーを務めるUPGARAGE NSX GT3がオープニングラップで2つポジションを落とすも、5番手をキープして周回。6番手に坂口選手がステアリングを握るMETALIVE S Lamborghini GT3が続いた。驚きは17位スタートのVENTENY Lamborghini GT3で、元嶋選手が5つポジションアップの12番手に浮上。その後も毎周順位を上げ、わずか8周で7番手まで追い上げてきた。
10周目にはチームメイトのMETALIVE S Lamborghini GT3もかわして6番手に上がると、21周を終えてピット作業に向かうが、タイヤ交換の時間短縮を狙ってリヤタイヤの2本交換を選択。これにより上位陣が全車ピット作業を終えたところでMETALIVE S Lamborghini GT3は3番手にポジションアップしていた。上位2台はタイヤ無交換作戦を採っており、レースが折り返し地点を迎えるころにはMETALIVE S Lamborghini GT3の小暮選手はこの2台に接近。
トップ争いは3台によるデッドヒートとなったが、小暮選手はまず30周目に2番手の車両を90度コーナーでとらえると、そのままトップの車両にも迫っていく。そして34周目。トップ車両がホームストレートでほんのわずか、周回遅れの車両に引っかかったところを見逃さなかった小暮選手は、アウト側に並びかけて1コーナーへ侵入。2台はサイドバイサイドで2コーナーに入ると、続く3コーナーではイン側ポジションとなる小暮選手が完全に相手を抜き切り、ついにMETALIVE S Lamborghini GT3はトップへと躍り出た。
その後も小暮選手は、怒涛の猛追劇を見せた元嶋選手のスティントを彷彿とさせるようなハイペースで周回。最終的には後続に20秒近い大差をつけてトップチェッカーを受けた。これでMETALIVE S Lamborghini GT3はシーズン3勝目。前戦オートポリスに続いて2連勝を飾った。また、UPGARAGE NSX GT3が3位を獲得。GT300車両の中では比較的ピット作業のタイミングを引っ張ると、5番手で後半スティントを開始し、2台をかわして今季初表彰台を獲得した。
GT500クラスは、リアライズコーポレーション ADVAN Zが2戦連続の8位フィニッシュを達成。前半スティントを担当した名取選手が序盤に次々とオーバーテイクを披露し、11周目までに9番手までポジションを押し上げた。22周と早いタイミングでのタイヤ交換作戦を採り、交代した松田選手は約40周というロングスティントを託されることになったが、終盤まで前を走る同じ日産Zを追い詰める姿を見せた。
WedsSport ADVAN GR Supraは23周目にピットインしスタートドライバーの国本選手から阪口選手へと交代したが、26周目にふたたびピットイン。車両に不調を感じたようで、修復ののちにレース復帰、最終的にはトップから5周遅れの13位でレースを終えることとなった。
■小暮卓史選手(VENTENY Lamborghini GT3)
【今回の成績:GT300クラス優勝】
「僕たちはリヤタイヤ2本のみの交換という作戦を採りましたが、タイヤのパフォーマンスが非常に高く、ペースがとても良かったです。クルマのバランスが良かったことと、タイヤのパフォーマンスが高かったことで、気持ちよく走ることができました」
「元嶋選手がどんどん順位を上げていく姿を見て、今回のレースも行けるという確信をもって自分自身も走ることができました。ここまで来たらどうしてもチャンピオンはとりたいですね。最終戦までの1か月で、出来ることをすべてやって、最高の状態で挑めるようにしていきたいと思っています」
■元嶋佑弥選手(VENTENY Lamborghini GT3)
【今回の成績:GT300クラス優勝】
「予選で失敗してしまったのでなんとか挽回したいと思っていました。とにかくチャンピオンを争っているランキングトップの車両には追い付かなければと、とにかく死に物狂いで走りましたが、本当にタイヤが良くグリップしてくれたし、2本交換でも最後までたれずに走ることができました。最終戦は、当然チャンピオンを目指します」
■松田次生選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス8位】
「今回はいろいろと新しいものを持ち込んできましたが、レースに関してはポジティブな印象を持つことができました。まだ課題はありますが、今日はそれなりに戦えたと思いますし、何をしたらどうなるのかということも少しずつ自分の中で明確になってきています。そんな中で、日産Z勢の中で久々にいいバトルができました」
「いろいろといい部分も見えてきているので、課題をどう直していくか。残すは最終戦だけとなりましたが、来シーズンも進化していくためにその課題に向けても頑張っていきたいです」
■名取鉄平選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス8位】
「スタート直後はウォームアップの部分で前のクルマたちにはおいて行かれてしまいましたが、温まってからは結構いいフィーリングで、すぐに1台を抜くことができましたし、その後も順位を上げていくことができました」
「ただ同じタイミングでピットインしたクルマに先行されてしまったので、やはりウォームアップの課題は大きいと感じています。それを改善しようとすると、いま良くなっている部分が下がってしまうこともあるので、バランスを取ってトータルとして良くしていくのは非常に難しいですが、次戦もいいところを見せられる走りをしたいです」
■国本雄資選手(WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績:GT500クラス13位】
「予選は、雨量が多く気温が低いなかでうまくいかず15番手となってしまいました。決勝に向けてはどうやって追い上げていくかを考えてタイヤをチョイスしましたが、実際に僕のスティントでは1台をかわしたものの、若干ペース的には苦しい部分もありました」
「ただ阪口選手のスティントでは、車両トラブルで結果としては良くありませんでしたがペース的には良かったので、自分たちの問題点や今後に向けた課題は見えてきたかなと思っています。最終戦は寒い鈴鹿での戦いで厳しい部分もあるかと思いますが、やれることをしっかりやっていきたいです」
■阪口晴南選手(WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績:GT500クラス13位】
「雨の予選では、周りに対してパフォーマンスが足りず、かなり課題の多い予選になりました。決勝レースもフリーの時点では厳しいかなという状況で、国本選手のスティントも苦しそうだったので、僕のスティントでは違うタイヤで走り始めました」
「すぐにトラブルが出てしまい結果的にポジションを下げることになってしまいましたが、ペース自体はすごく良くて、最近の中では非常にいいパフォーマンスを感じることができていたので、その感触を結果につなげられなかったのは非常に悔しいです。最終戦の鈴鹿は僕たちの成績がいいサーキットのひとつですし、しっかりとパフォーマンスを引き出して、いい結果でシーズンを終えられるように頑張りたいと思います」
■白石貴之
横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ・リーダー
「公式予選ではウエットコンディションのウォームアップ性の課題が彫りになってしまいました。低温下、かつ水量が多い時に短時間で如何に温めるかという点は容易ではないですが、いくつか対策も検討していますので次回までにはさらにトライします」
「ドライコンディションは予想した低温にはなりませんでしたが、WedsSport ADVAN GR Supraとリアライズコーポレーション ADVAN Zともにペースが良かった点は前向きに捉えています。ピックアップへの対策も依然足りない部分はありますが、次に繋げられる結果と思っています」
「GT300はVENTENY Lamborghini GT3に素晴らしい結果を出して頂きましたが、他の車両もレースペースが良い車両が多く、予選の劣勢を跳ね返すことができました」
「ドライコンディションについてはコンパウンドだけでなく、構造としてもいろいろと手応えが得られました。最終戦は今までにない低温レースになりそうですが、今年の集大成として頑張ります」
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