スーパーGT ニュース

投稿日: 2024.12.16 19:55
更新日: 2024.12.16 19:57

apr LC500h GT 2024スーパーGT第5戦鈴鹿 レースレポート


スーパーGT | apr LC500h GT 2024スーパーGT第5戦鈴鹿 レースレポート

2024 AUTOBACS SUPER GT Round 5
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
12月7日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:1万8500人
12月8日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万7000人

12月開催という未知の鈴鹿最終戦で3位フィニッシュ! 今季初表彰台でシーズンを締める

 8月31日〜9月1日に予定されていた第5戦鈴鹿大会が台風の影響で延期となり、12月7日〜8日に2024年シーズンの最終戦として開催された。当初のレース距離は350kmとしていたが300kmにあらためられ、気温と路面温度が低い異例の12月開催ということでタイヤの持ち込み本数は300kmレース時の通常4セットから1セット増の5セットまでとなった。8戦目の参戦車両はサクセスウエイトも0kgとなり、鈴鹿で未知の戦いとなる。

 中高速コーナーが主体の鈴鹿は、ハイダウンフォースの車種が有利とされている。つまり、コーナリングマシンであるGTA-GT300車両が得意とするサーキットだが、現在のFIA-GT3車両は大きな下面で強大なダウンフォースを発生し、ディスアドバンテージは感じさせない。さらに鈴鹿のベストラインは1本しかなく抜きづらいため、決勝では最高速に勝るFIA-GT3車両が優勢になる。実際、過去の鈴鹿大会を振り返ってみると、決勝で強いのはFIA-GT3車両。今年の6月に開催された第3戦でも、FIA-GT3車両が優勝している。

 apr LC500h GTにとって決して有利とは言えない状況ではあるが、目指すは優勝、最低でも表彰台を目標に、小高一斗と中村仁に加え、万がのバックアップとして根本悠生を第3ドライバーに登録して今季最後の戦いに挑んだ。

公式練習/8位 12月7日(土)9:15〜10:52

 公式練習開始時の気温は11度、路面温度は12度。タイヤメーカーを問わず、GT300ではこれほどに寒い鈴鹿でのデータを持ち合わせていない。apr LC500h GTでは、ソフト側をプライムとして3セット、ハード側をオプションとして2セット持ち込んでいた。

 まずは小高がソフトタイヤを履いて走行。ウォームアップ性能の高さを確認しつつ、5周でピットに入ってタイヤにクルマを合わせる手法でセットアップをアジャストした。そして8周目に1分57秒105を記録し、結果としてこれがベストタイムとなり8番手のリザルトを残す。

 小高は10周で再びピットに戻ると中村に交代。タイヤは換えておらずピークグリップはなかったが、中村はコンスタントなグリップのドロップを感じて好印象。ピットインを繰り返してセットアップを進めていき、小高が再びステアリング握って確認する。

 GT300専有の時間帯では、新品のソフトタイヤを履いて中村がコースへ。予選アタックをシミュレーションする予定だったが、アタックに入るタイミングで他車のスピンを起因とする赤旗が掲出されて走行終了。ニュータイヤでの最終確認ができないまま、予選に臨むこととなってしまった。

公式予選 12月7日(土)
Q1/5位 14:13〜14:38
Q2 U14/4位 15:40〜15:55
総合結果4位

 今大会の予選はGT500クラスのQ1から始まり、その13時50分時点の気温は14度、路面温度は21度というコンディションだった。14時13分にスタートしたGT300クラスのQ1は中村が担当した。チームは予選で、公式練習では試していないハード側のタイヤを選択。ソフト側に比べるとウォームアップ性能は落ち、ぶっつけ本番という不安もあるが、決勝も見据えた決断だった。

 中村は計測4周目で1分55秒894を記録。攻め切れていない部分もあったため、1周のクールダウンを入れて2回目のアタックに入るが、タイムアップを見込めずピットに入る。それでも5番手タイムでQ2の上位グループ、U14(Upper 14th)に進むことができた。

 Q2 U14の小高も新品のハードタイヤを使用。小高はじっくりタイヤを温め、計測6周目にアタックへ。1分55秒268の4番手タイムをマークした。Q1とQ2の合算タイムによる総合結果は4番手。ドライバーふたりはタイムアップの余地がまだあったことに悔しさも残る結果だったようだが、表彰台、さらには優勝も目指せる2列目のグリッドを獲得し、期待を抱いて決勝に挑む。

小高一斗選手

「公式練習で履いたソフト側のタイヤは、想像以上にウォームアップが良かったんですけど、ちょっと柔らかすぎたかなと。専有時間ではニュータイヤとアジャストしたセットアップの確認が赤旗によってできずでした。そこから予選に向けたアジャストができていれば、この週末初めて履くハード側のタイヤでも、あとコンマ2秒くらいはセットアップで上げられたと思うので少し悔しいですね。でも、タイヤとクルマのパフォーマンス自体は良いと思います」

中村仁選手

「予選はぶっつけのハードタイヤでいきましたが、思っていた以上にグリップしてくれました。正直、ドライバーとしての部分で攻め切れていない部分があって、タイヤに助けられた感じです。なので2回目のアタックにいこうと思ったんですけど、そのときにはすでにフロントタイヤのデグラデーション(性能劣化)が始まっていて、ピットに戻りました。クルマ的にも僕自身にもタイム改善の余地はいっぱいありますが、Q1を5番手で終えられたのはポジティブな結果だと思います」

根本悠生選手

「公式練習では試せなかったハード側のタイヤで予選にいきましたが、思っていたより良かったみたいですね。僕たちのクルマは重いので、その高荷重によってハード側でも機能したんだと思います。ただ、公式練習でセットアップを煮詰め切れなかったというのがあって、ポールポジションはちょっと遠いですけど、2番手、3番手はもしかしたら届いたと思うと、ちょっともったいなかったですね。でも、決勝でも僕たちのクルマは元気に走ると思うので期待しています」

金曽裕人監督

「この寒さのなかでタイヤもクルマもバックデータがなく、公式練習は試行錯誤がありました。セットアップを進めるというより、タイヤにクルマを合わせていく感じでした。予選Q1の中村選手はちょっと置きにいったかな? 本来ならもっとプッシュできたはずだけど、最終戦という大事な一戦で確実に上位グリッドを得ることは重要で、それを自分で判断したという勇気に成長を感じました。Q2の小高選手は攻め切ったと思うけど、セットアップを煮詰め切れなかった状況でこのタイムは立派。結果が求められる最終戦、決勝に向けての戦略にいま悩んでいます(笑)」

決勝レース(47周)/3位 12月8日(日)12:57〜14:41

 レース開始時の気温は13度、路面温度は17度と、前日の予選よりも低温のコンディションに。タイヤのウォームアップが考慮され、フォーメーションラップは通常より1周多い2周となり、ローリングスタートで最終戦の幕が開けた。

 スタートドライバーは中村。4番グリッドからのスタートで、レース序盤は2番手争いの接近戦に加わる。3台は各車の間隔が1秒以内の集団となって周回を重ねた。しかし9周目、GT300車両がグラベルにストップしたことでFCY(フルコースイエロー)が導入されると、中村の前にはバックマーカーが入ってしまい3番手との差が開いてしまう。

 ここでタイヤが冷えてしまったこともあり、FCY解除直後のラップタイムの落ちも含めて、その差は7秒以上に広がってしまった。しかし、中村はタイヤが温まるとペースを戻し、5秒差まで縮めた16周でピットに入る。

 チームはここでタイヤ無交換を敢行。ピット作業も素早くこなし、小高をコースに送り出す。ピット組ではトップに位置し、全車がピットに入った25周目には2番手につけていた。27周目に2回目のFCY導入でやはり一時はトップとの差が開いてしまうが、小高はすぐにその差を詰めていく。

 しかし34周目、タイヤを2輪交換して驚異的なラップタイムで追い上げてきていたVENTENY Lamborghini GT3に抜かれてしまう。さらに、その後方からはLEON PYRAMID AMGが迫っていた。残り3周は1秒圏内の攻防となるが、小高がポジションを死守して3位でフィニッシュ。最終戦で今季初めての表彰台に登壇した。

小高一斗選手

「僕のスティントの中盤くらいにピックアップして、ペースが上がらなくなってしまいました。それがなければ、もしかすると前を抜けたかもしれないというのもあるんですけど、ABSのマップや走り方を変えてピックアップを剥がせたから3位を守れた感じですね。今年のクルマは昨年からの進化以上に、重くなったり車高が上がったぶんのパフォーマンスの落ち幅が大きくて厳しい状況でした。そのなかでも勝てるチャンスがあったんですけど……最後は表彰台に立って終われたので良かったと思います」

中村仁選手

「僕のスティントはFCYやバックマーカーのタイミングもあって完璧とは言えませんでしたが、最低限ポジションを守って小高選手につなげたのは良かったと思います。3位という結果は、僕にとってスーパーGTで初めての表彰台で、これまでFIA-F4やスーパーフォーミュラ・ライツで見る表彰台の景色とは違いました。人の数も多くて演出も豪華で、小さい頃から夢見てきた舞台で自分にとって糧になる表彰台でした。今シーズンは大きなミスをすることもありましたが、最後はミスなく走れました。速いペースで安定して走り続ける大切さを痛感した1年でした」

根本悠生選手

「小高選手も中村選手もフルプッシュでいくしかないという状況で、クルマとタイヤのポテンシャルをしっかり引き出してくれました。前回のもてぎから、レース中は僕もドライバーと無線で交信して情報や状況を伝えるようになって、僕にとっても非常に意義のある最終戦になりました。今年、僕が乗ることはなくて寂しい思いはありますが、ドライバー3人、監督、そしてチームの全員でつかんだ表彰台という気持ちになれて嬉しいです。チームが力をつける、いいステップになったシーズンだと思います」

金曽裕人監督

「ギリギリまでタイヤを交換するかしないか悩んで、結果的にはタイヤを交換したクルマが優勝しましたが、今回は表彰台マスト、優勝以外は目標じゃないとチャレンジした無交換でした。来年は作戦も含めてもう一度考え直さないといけないところもありますが、ここまでトライ&エラーを続けて最後につかんだ表彰台は価値があると思います。小高選手は1年を通してパーフェクトな仕事ぶりでした。中村選手はルーキーとして荷が重かった部分もあるけど、最終戦の表彰台というかたちで集大成になったかなと思います」


関連のニュース