待ちに待った2025年シーズンの開幕まで残すところ約2週間となったスーパーGT。今季もこれまで、各チーム・メーカーが精力的にテスト走行とマシン開発を行ってきたが、その中でも各所でトップタイムを連発した王者、1号車au TOM’S GR Supraの飛び抜けた好調ぶりは明らかだった。
今年も1号車が……という雰囲気もどこか漂っているようにも感じられるが、前人未到の3連覇への挑戦を前にその影は水面化で確実に捉えられつつあるのかもしれない。
トムスといえば、ご存じのとおりロングランでの安定した好ペースが最大の武器だ。実際に、『auto sport』2025年5月号(3月29日発売)が昨年の第5戦鈴鹿の決勝から独自に算出した、ロングランでの安定感を示した“ラップタイムレンジ”でもau TOM’S GR Supraのタイムの落ち込みはやはり少なかった。
しかし、そのau GR Supraをペースの安定性で上回ったのが、第1スティントではロニー・クインタレッリ(23号車MOTUL AUTECH Z)と関口雄飛(39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra)の2名、第2スティントでは松下信治(8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT)だった。中でもDENSO GR Supraは第1スティントだけでなく、第2スティントでも中山雄一が6番目のラップタイムレンジであり、チームとしてロングランの優れたポテンシャルがありそうだ。
さらに今季、39号車にはフォーミュラEを経験し3年ぶりに国内復帰を果たすサッシャ・フェネストラズが関口とタッグを組み、さらに脇阪寿一監督とともに2019年にGT500クラスでチャンピオンを獲得した阿部和也エンジニアが加入している。
速さに定評のあるドライバーラインアップと経験豊富なエンジニアの化学反応が、決勝に強いセットアップに磨きをかけ、全体的なペースを引き上げたとなれば大きな脅威になるに違いない。
では、2024年シーズンをランキング2位で終えた100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTは、1号車にどれほど迫っているのだろうか?
昨季は天候不良となったレースの影響もあり、新車CIVIC TYPE R-GTの熟成に課題が残ったホンダ陣営。ところが2025年もセパンテストやメーカーテストをこなしてはいるものの、岡山公式テストが悪天候に見舞われドライコンディションでの充分なデータが得られなかった点は不利な材料だろう。
また、100号車は車両メンテナンスを昨年までのATJからHRC(ホンダ・レーシング)に変更。“準ワークス”を思わせる布陣を敷いた。だが裏を返せば、新体制ゆえに「蓄積」の再構築は必須だ。
昨季2024年の圧倒的なパフォーマンスを考えると、超・熟成状態にある1号車だからこそビックステップアップは“ある程度”限度があるかもしれない。その観点で相対的に戦力差が縮まる今季、新たなSTANLEY CIVICにとって急進力が“熟成”の壁を跳ね返すことができるのかがカギとなる。
公式テストでは各車の真の実力が水煙に隠されてしまったが、1号車の独走が容易ではないことは確かだろう。
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