4月12〜13日、岡山県の岡山国際サーキットで開幕する2025年スーパーGT開幕戦『OKAYAMA GT 300km RACE』。この一戦を前に、GT300クラスに参戦するPONOS RACINGが突如としてドライバー変更を発表し、リル・ワドゥに代わって篠原拓朗がドライブすることになった(最終的には大会審査委員会の決定で変更となる)が、この交代に至るまでの状況、そして篠原に意気込みを聞いた。
■「椅子からひっくり返るかと思いました(笑)」というレギュラー参戦のオファー
今シーズンも激戦が予想されるGT300クラスに、2024年から参戦しているPONOS RACING。2025年に向けては、2月19日にチームからケイ・コッツォリーノとリル・ワドゥのコンビ継続が発表されていたが、第1戦岡山直前の4月8日、チームから突如としてワドゥから篠原への交代が発表された。
このドライバー変更について、PONOS RACINGのマネージメントにも関わるコッツォリーノは「ワドゥ選手は今シーズン、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズやIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ、ル・マン24時間、さらにフェラーリの開発テストもあり、スケジュールとしては非常に大変な状況でした」と説明した。
「彼女としてもスーパーGTを優先してやりたいという意向もあり契約していたのですが、やはりいざシーズン開幕が近づいてくると、かなりスケジュールの調整が難しくなり、チームと話し合った結果、他シリーズを優先するというかたちになりました」
一方、後述するがPONOS RACINGとして同時進行で篠原を第3ドライバーとして起用する交渉も行っていた。ワドゥが結果的に参戦できないことになり、篠原がレギュラードライバーとして起用されることになった。
「我々としてもワドゥ選手とレースを続けたい気持ちはあったのですが、あちらのサイドからそういう申し出があったので、オーナーとも協議し、こういう決断に至りました」
そんなワドゥの状況を受け、白羽の矢が立てられたのが篠原。2024年にK2 R&D LEON RACINGでチャンピオンを争いながらも、今シーズンのスーパーGTのシートがない状況だった。「3月末まで、どうしようかと思っていました」という篠原はさまざまなチームにシートを打診していたが、そのなかで第3ドライバーとしてオファーがあったのがPONOS RACING。これがレギュラーシートという嬉しい結果に繋がった。
「こうしてチームに加えていただけてメチャクチャ嬉しいです。今シーズンはスーパーGTはないと思っていたので、第3ドライバーのオファーをいただき、そこからまさかレギュラー参戦に繋がるなんてまったく想像もしていませんでした。お話をいただいたときには椅子からひっくり返るかと思いました(笑)」と篠原。
今回は急遽の参戦だが、篠原はフェラーリ296 GT3の経験はない。「コーチングでフェラーリチャレンジのお仕事はさせていただいていますが、GT3はボタンがすごく多いですね」という。とはいえ、アウディR8 LMSでミッドシップの経験もある。すぐに慣れるはずだ。
■コッツォリーノ、そしてPONOS RACINGとの縁
今回、コンビを組むことになったコッツォリーノと篠原だが、実はその繋がりは長い。「いちばん最初は、FIA-F4の1年目の2015年、VSRランボルギーニ・フォーミュラジュニアチームから参戦したときですね。そのときケイさんが何度か来てくれましたし、イタリアのF4テストに行ったときも、ケイさんがご飯を作ってくれました」と篠原は言う。
一方、コッツォリーノは「僕はVSRのときから面識がありましたし、レース以外で何度も仕事を一緒にしていて、お互いに知っている密度はかなり濃かったんです」という。そんなふたりの状況が交錯したのが、2020年だった。
この年はコロナ禍で、スケジュールの調整は困難を極めた。コッツォリーノはPACIFIC-D’station Racingで藤井誠暢とともにアストンマーティンをドライブしていたが、同時にWEC世界耐久選手権にも参戦。日程変更もありWECが重複したが、その代役として第5戦、第8戦でステアリングを握ったのが篠原だった。特に第8戦では5位入賞。これをきっかけにさらに評価を高め、篠原はGT300でタイトルを争うまでに成長した。
「このオフ、篠原選手から電話をもらっていましたが、今年はもうコンビが決まっていたので、オーナーとも相談をして『では第3ドライバーに』という話をしていたんです。でもこうして篠原選手が控えていたからこそ、こういう決断に至ったと思うんです」とコッツォリーノ。
「彼はチャンピオン争いをしていたドライバーですし、昨年(第6戦SUGOで)僕たちの勝利を奪ったドライバーでもあるのですが(笑)、良いドライバーなのは間違いないですし、こうして決まって良かったと思います」
そんな巡り合わせを受け、急遽決まったレギュラー参戦。篠原は「すごく良い体制で走らせていただけるのは間違いないですし、自分で言うのもなんですが昨年は勝利を奪うかたちになってしまったので(苦笑)、逆に今年は僕が優勝に貢献できるように、チームの力になれるようにしたいと思います」と笑顔をみせた。
篠原はまだ若手だが、さまざまなGT3カー、そしてタイヤを経験している実力の持ち主。新たなドライバーラインアップで、PONOS FERRARI 296がどんな戦いをみせるか注目だろう。