2025 AUTOBACS SUPER GT Round1
OKAYAMA GT 300km RACE
会期:2025年04月12日(土)、13日(日)
場所:岡山国際サーキット(岡山県)
観客:予選8700人 決勝1万4500人
予選:1位
決勝:4位
獲得ポイント:14Pts
シリーズ順位:4位(14Pts)
2025年4月第2週末、SUPER GT 2025シーズンが例年どおり岡山国際サーキットで開催された。安藝貴範代表率いる2025シーズンのGOODSMILE RACING & TeamUKYOは、監督に片山右京氏、ドライバーに谷口信輝選手、片岡龍也選手、メンテナンスガレージはRSファイン、マシンはメルセデスAMG GT3、タイヤはYOKOHAMAと、何も変わらぬ体制だ。
しかし、6年ぶりに復活した海外ラウンド第3戦セパンが、チームにとっては同じく6年ぶりの挑戦になるスパ24時間レースとまったく同じ日程になったため、監督と両ドライバーが第3戦に参加できなくなってしまった。
これを補うべく、チームはセパン戦専用の新体制も用意した。セパン戦体制では、監督に2011年にチームが初めてチャンピオンを獲得したときのドライバー番場琢氏、ドライバーにはGT300チャンピオン経験を持つ中山友貴選手と、ルーキードライバーの奥本隼士選手が起用された。
またスーパーGT 2025シーズンでは、大きなルール変更が行われた。まず、予選方式が2023シーズンまで採用されていたノックアウト方式に戻された。ただしQ2に進出できる車両数は従来の16台から18台へと拡大された。
次に、GT300クラスのポイント制度が見直された。これまでは10位までにポイントが与えられていたが、2025シーズンからは決勝レース1位に25ポイントが付与され、15位までがポイント付与対象になった。また予選は、昨シーズンまでは1位3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイントが付与されていたが、今シーズンからは予選1位にのみ1ポイントが付与される。
そしてシリーズタイトルは全8戦中7戦の有効ポイントを合算した点数で競われるルールになったため、セパン戦を欠場する谷口選手、片岡選手にもチャンピオン獲得のチャンスが残る事になった。
またスーパーGTの特徴でもあるサクセスウエイト制度は、2024シーズンと同様に『獲得ポイント×2kg』のウエイトが課されるが、50kgまでは実際のウエイトを搭載し、51kgから100kgまでは給油リストリクターが装着され、実際にその重量のウエイトを積載したら発生するであろうタイムダウンを、給油時間を伸ばすことで実現するというものになった。
今大会のバランス・オブ・パフォーマンス(BoP)は、メルセデスAMG GT3は昨年までと大きな差は見られず、エアリストリクターはφ34.5×2、車両重量は基本重量の1285kgにBoP重量の50kgが加算され、合計1335kgとされた。
一方で昨年のチャンピオンマシンであるランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2には昨年の51mm×1から3mm小さい48mm×1のリストリクターが装着されることになった。
4月12日(土)【公式練習、公式予選】
天候:Q1/Q2 曇り
コース:ドライ
気温/路面温度
GT300 Q1開始時:23℃/31℃
GT300 Q2時点:22℃/29℃。
午前9時30分、“晴れの国”岡山の名のとおり快晴の空の下、岡山国際サーキットで開幕戦の公式練習が始まった。
片岡選手は4号車グッドスマイル 初音ミク AMGに乗り込み、セッション開始と同時にコースイン。持ち込んだマシンのバランスに問題はなく、まずは7周目、トラフィックに引っかかりながらも1分26秒125を記録し、2番手に浮上した。その後は異なるセッティングの確認を行いながら、21周目まで走行を重ねて谷口選手に交代した。
谷口選手は、片岡選手が使用したタイヤのまま周回を重ね、レースに向けたロングランの確認を実施。そのまま午前10時55分からのGT300専有走行にも出走し、チェッカーまで計28周を走破した。4号車のベストタイムは、片岡選手が7周目に記録した1分26秒125で、公式練習は10番手で終了した。
2025シーズンの予選は、ノックアウト方式で争われる。GT300クラスのQ1はA組とB組14台ずつ2組に分けられ、各組上位9台がQ2へ進出する。今大会のQ1組み分けは、2024シーズンのチームランキングをもとに決定され、4号車はA組での出走となった。
昨シーズンの最終戦からチームに加わったエンジニアのビクター氏の作戦により、Q1のアタックドライバーには谷口選手が指名された。
午後2時予選Q1A組がスタート。谷口選手はセッション開始と同時にコースへ向かい、アタックに向けてタイヤのウォームアップを行う。各車がアタックラップに入るとまずは18号車が4周目に1分26秒562を記録し、ターゲットタイムとなる。
谷口選手は5周目にアタックを開始し、1分26秒116をマークしてトップに浮上。しかし直後に18号車がタイムを更新し、2番手へ後退。さらに6号車が1分25秒619を叩き出してトップに立ち、4号車は3番手に。
谷口選手は、なおもアタックを継続しチェッカーラップで1分25秒928を記録。トップには届かなかったものの、18号車を上回るタイムで2番手につけ、Q2進出を決めた。
午後2時53分GT300クラス予選Q2スタート。Q1を突破した18台がポールポジションをかけて一斉にタイムアタックを行う。4号車は、Q1を担当した谷口選手からのフィードバックをもとにセッティングを調整し、片岡選手のドライブでコースインした。
GT500のQ1も経て路面ができあがっていたため、各車Q1よりも大幅にペースが速い。まずは61号車が4周目に1分24秒579を記録し、今週末全車を通じて初めて1分24秒台に突入してトップに立つと、直後に同じくダンロップタイヤを装着した777号車が1分24秒536をマークしてトップを塗り替えサーキットを沸かせた。
片岡選手は5周目に最初のアタックを開始し、1分24秒639で3番手タイムを記録。 続く6周目もさらにアタックを続けると、「過去一気持ちよく走れた」と言う快走で全セクター自己ベストを更新、サーキットをどよめかす1分24秒420を叩き出して見事にポールポジションを獲得した。このポールポジションは、片岡選手にとって2017年の第8戦もてぎ以来、自身2度目の快挙でもあり、チームは歓喜に沸いた。
4月13日(日)【決勝】
天候:雨・曇り
コース:ウエット・ドライ
気温/路面温度
スタート前(13:00):11℃/15℃
序盤(13:30):11℃/15℃
中断再開(13:55):11℃/16℃
中盤(14:30):11℃/15℃
終盤(15:30):11℃/14℃
ゴール直前(16:00):12℃/15℃。
当初の天気予報では、決勝が始まるころには雨が上がるとされていたが、決勝前のウォームアップ走行が終わっても空には厚い雨雲が残り、雨は降り続いていた。雨に加えて風も強く危険と判断されたため、レースアンバサダーがグリッドボードを持って各チームのグリッドに立つ演出は、直前になってキャンセルされた。
ポールポジションを獲得したマシンを称える演出として、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、全車がグリッドに整列した後、間を縫って先頭のグリッドへと並んだ。グリッドウォークや国家斉唱が行われるなかでも雨は止まず、そのままウエットコンディションで決勝レースがスタート。スタートドライバーは片岡選手が担当した。
午後1時30分、フォーメーションラップが始まったが、路面の水量が多く危険と判断されたため、セーフティカー先導による隊列走行が続いた。5周目、セーフティカーがピットに戻りレースがスタート。しかしその直後、2コーナーでGT500車両が多重クラッシュを起こし、ふたたびセーフティカーが導入された。
複数台がからむ大きなクラッシュでパーツが広範囲に飛散していたため、片岡選手は現場を通過する際に速度を落としたのだが、その隙に777号車に前へ出られてしまった。その後、ドライバーの救助と車両の回収のため、レースは赤旗中断となった。
午後1時55分、セーフティカー先導で隊列がふたたび動き出し、11周目からレースが再開。ダンロップタイヤを装着した777号車はウォームアップ性能に優れ、4号車とのギャップを広げる。さらに、同じくダンロップ勢の61号車が背後から迫り、4号車は防戦を強いられる。
しかし13周目からは4号車もペースを取り戻し、徐々に777号車に接近する。14周目、GT500車両がコースオフしてグラベルにはまり、再度セーフティカーが導入された。19周目にレースが再開されると、4号車はふたたび777号車に迫る。
21周目、片岡選手はヘアピンで777号車の背後にぴたりとつけ、パイパーコーナーでインに並びかけるが、ここでわずかに挙動を乱してしまい、777号車にイン側から接触。これにより777号車はスピンしてコースオフ、そのままグラベルにスタックしてしまいFCY(フルコースイエロー)が導入された。
23周目にレースが再開され、4号車はペースを取り戻し、後続とのギャップを拡げはじめた。しかし、777号車との接触について、4号車にドライブスルーペナルティが裁定されたため、片岡選手はこれを32周目に消化し順位を7番手に落とす。それでも、その周に20号車をオーバーテイクして6番手に浮上し、さらに2番手を走っていた61号車がルーティンのピット作業に入ったことで5番手となる。
43周目、直前を走っていた0号車がピットに入り4番手へ。44周目、65号車もピットへ向かい3番手に浮上。さらに、この周に3番手の18号車が4番手の6号車に押されスピン。4号車はその脇をすり抜け、2番手へと浮上した。
46周を終えたところで、チームは片岡選手をピットに呼び、谷口選手へ交代。給油を済ませると他チームに先駆けてスリックタイヤを装着してピットアウトした。レコードラインは乾きはじめていたが一方で雨もまだ上がりきっていなかったため、谷口選手は13位でコースイン後5周ほどペースを上げられず、49周目には18番手にまで順位を落としていた。4号車の後にピットインするチームの中には雨が続くと読んでウエットタイヤに履き替えるチームも少なからずいる状況だった。
その後、いよいよ路面がドライアップしてくると、谷口選手は息を吹き返したようにペースを上げ、順位を次々に取り戻していく。ライバルチームも続々とスリックタイヤに履き替えるために2度目のピットインをおこない、順位は目まぐるしく変動する。
55周目にすべての車両がスリックタイヤに交換し終えると、4号車は5番手になっていた。ここから谷口選手は2.5秒前を走る96号車を追い始めるが、63周目にGT500車両がコースオフし、その場でストップ。FCY、続いてセーフティカーが導入された。
セーフティカーにより各車間のギャップがゼロになった状態で迎えた69周目、レースは再開された。これにより96号車とのギャップは無くなったが、同時にセーフティカー導入前にはまだ大きなギャップがあったはずの後方56号車とのギャップもなくなり背後から追われる展開に。
71周目、56号車にオーバーテイクされて6番手に後退。73周目、2番手の65号車とトップの18号車が激しく競り合った末に接触。18号車はコースオフしてしまい、復帰に手間取りながらも4号車の前、5番手でレースに戻った。
77周目、谷口選手は接触後ペースの落ちていた18号車をバックストレートで抜いて5番手に浮上。なお、18号車はこのあとマシントラブルでストップしてしまう。
78周目、谷口選手がヘアピンで96号車をオーバーテイクし4番手に浮上。この周にGT500のトップがゴールしたため、4号車にはこの周がファイナルラップとなり、谷口選手は4位でチェッカーフラッグを受けた。
チームは波乱に満ちた難しいレースを走りきり、ポールポジションで獲得した1ポイントと、決勝4位で獲得した13ポイントと合わせて14ポイントを獲得、上々のシーズンスタートを切って岡山の地を後にした。
■チーム関係者コメント
安藝貴範代表
「777号車に抜かれたタイミングは多重クラッシュが発生した箇所で、イエローフラッグが掲示されたと我々は思っていたので、そんななかで抜かれたのには驚きました。GTAからはイエローフラッグは出ておらず違反はなかったという判断がくだっていますが、正直不満が残ります。なによりあれだけ多くの車両が停止して路面には大きなパーツが散乱しているなかで、パーツを踏みながら追い抜くのは危険行為だったと思います」
「今回は持込のセットからクルマの調子がよくて、ほとんどセット変更もせずに、予定していたランプランどおりにクルマの状態を確認することができていました。一発のタイムは出せそうな感触があった反面、ロングランにはやや不安が残り、決勝に向けてどう対応していくかが課題になっていました」
「予選で谷口選手が2番手。Q2では片岡選手が素晴らしいアタックをしてポールポジションを獲得してくれました。決勝は、序盤で失ったポジションをピットのタイミングとスリックタイヤを選択したことでかなり挽回することができました。ただ、スリックタイヤの温まりに関しては課題がありもう少し詰めることができると思うので、しっかり検証して次戦に挑みたいと思います」
片山右京監督
「今週は調子が良かっただけに、決勝レースはちょっともったいなくて残念でした。片岡のはレーシングアクシデントみたいなのでしょうがないかな。あの場所は路面にドリフトのラバーが載っているところで思ったよりも滑るところで。しかし、そのあとペナルティのドライブスルーをして7番手で戻って、そこからポジションを回復していけました」
「いちばんはとにかくスリックに履き替えたところでのペースがちょっと解せないですね。26号車や18号車と同じようなペースで走り、本来はトップ争いとか行けてたなーという部分では、そこがちょっともったいなかったけど、とにかく原因を突き止めるしかないなと思っています」
谷口信輝選手
「今回、僕は予選Q1を担当しました。Q1を突破できるかどうか、正直かなり不安で…。走ってるときも1分26秒0とかしか出なくて『ヤバくね?』ってドキドキしながら、なんとか1分25秒9をひねり出しました。それでも午前のタイムを考えると『やっべーな』と思ってたんですけど、2番手って言われて『あ、みんなもタイム出てなかったんだ』って、ちょっと安心しました」
「そのあとは片岡がすさまじいアタックをしてくれて、まさかのポールポジションを獲得。 想像もしてなかった展開で、今年のチャンピオンシップに向けて、素晴らしいスタートになった土曜日でした」
「そして日曜日。“止む止む詐欺”が登場して、まったく雨が止まない(笑)。天気予報を見るたびに『もうすぐ止みます』『もうすぐ止みます』って出てたけど、結局止まらずにそのままレーススタート」
「クラッシュや接触が多く荒れた展開になって、うちもペナルティがありましたけど、そのなかでのチームの判断が素晴らしくて、最終的に4位で終えることができました。不幸中の幸いって感じでしたね」
「結果は4位でしたが、僕としては今年を戦うにあたって、すごく前向きな気持ちになれる開幕戦だったと思います。次は僕らが得意な富士なんで、そこで1着を取りたいと思います!」
片岡龍也選手
「今週は走り出しから手ごたえが割と良くて、昨年の最終戦からチームとして取り組んできたことが、少しずつ形になってきているという実感がありました。ロングランには少し課題を感じていたものの、まずは予選をしっかり頑張ろうという気持ちで臨みました」
「予選ではQ2を担当させてもらいました。コンディションの変化もあるなかで、最後にアジャストしたセットアップがピタッとはまって、マシンが思いどおりに動いてくれました。本当に乗っていて気持ちよかったです。ミスのないアタックができて、その結果としてポールポジションを獲得。正直、ここでポールが取れるとは思っていなかったので、うれしい驚きでした」
「決勝は雨予報の中でのスタートになりましたが、ポールポジションから出られるのは大きなアドバンテージ。とはいえ、朝のウォームアップ走行では雨量が多いときにかなり厳しかったので、レースも不安はありました。実際は少し雨が収まった状態でのスタートになり、なんとか勝負できるかなという感触でした」
「ただ、序盤でGT500の多重クラッシュが発生して、部品が散乱する中でスローダウンしていたときに、777号車に抜かれてしまいました。あの状況は黄旗区間だと思っていたし、そもそもあそこで追い越しするなんて、何を考えているのか…という思いも正直ありました」
「再スタート後は、最初はダンロップを履く777号車の方がタイヤの温まりが早く良さそうでしたが、こちらもタイヤが温まってくるとペースが逆転。追いついたタイミングでパイパーコーナーから並びかけて立ち上がろうとしたところで、路面のラバーの影響で思ったよりも滑ってしまい、ラインが広がって軽く接触。相手がスピンしてしまいました」
「軽い接触でしたが、これはドライブスルーペナルティになるだろうと思いながら、少しでも順位を落とさないようにペースを上げました。結果、ドライブスルーを消化しても7番手で戻って、その周に6番手へ。その後、アクシデントで18号車がスピンし、5位まで戻すことができました」
「本当はもう少しウエットで引っ張りたかったんですが、路面が完全なドライになってくるとタイヤが悲鳴を上げてしまって、やむなくピットインして谷口さんに交代しました。接触については本当に悔やまれるし、反省しなければならない部分ですが、スピード的にはドライでもウエットでも手応えはありました。次のレースにつながる内容だったと思います」