MOTUL GT-Rは54周目にはダンロップコーナーからの立ち上がりの13コーナーでリヤを滑らせ、ZENTがその隙を突こうとするも、ここもMOTUL GT-Rがブロック。ピットガレージでは、険しい表情で歯を食いしばってモニターを見つめる松田のチームメイト、クインタレッリの姿が。一方のZENTは、そのクインタレッリの表情を見たのか、浜島裕英監督のリラックスした表情が。そのまま順位は変わらず、残り10周となる。
トップのARTAは2番手に6秒強のギャップを作るまでペースを回復するが、残り5周の100R出口でGT300マシンを交わそうとしてラインを外し、車体の半分をコースオフ。その際に大量のマーブルを拾ってしまったようで、ペースが急に落ち、2番手MOTUL GT-Rとのギャップが3秒、そして2秒と周回ごとに縮まっていく。
残り3周となったところで、ARTAのガレージではチームメイトの野尻智紀がモニターを直視できなくなったか、下向きに目を伏せて祈るような姿が映し出される。
その野尻の祈りが通じたか、ARTA小林は後続とギャップをなんとか保ったまま最終コーナーを立ち上がると、ヘッドライトを点滅させながら2番手に1.5秒差でチェッカー。チェッカーを務めたのは、スタート前にアクロバティックな飛行を見せてくれた室屋だった。機体にレクサスのサポートを受ける室屋はARTA NSX-GTのトップチェッカーに複雑な心境でフラッグを振ったことだろう。
2位はリヤを滑らせながら見事なブロックを見せたMOTUL GT-R、そして3番手にZENT、その後、チーム内バトルを制したauが続き、KeePerはファイナルラップに順位を落として6番手、そのKeePerを交わしたカルソニックが5番手となった。
マシンを降りた小林崇志を迎えた野尻智紀。テレビのインタビューで残り数周になったときの心境を聞かれ、「(モニターは)全然、見ていなかった」と、プレッシャーの大きかった心境を明らかにした。
ARTAの鈴木亜久里監督も「ここ何年間かすごくつらい時期があって、ふたりも本当によく頑張ってくれた。レースを見るのが本当に辛い。ずっと胃が痛かったけど、ようやく晴れ晴れした」とインタビューに応え、喜びよりも安堵という、チーム全体、そしてホンダ陣営としての気持ちを代弁することになった。