更新日: 2018.05.19 21:43
GT500のエンジン戦争はパワー開発だけでなく運用面でも激化。狙いどころを絞った戦略的新発想
──レース中でも局面で変わることはあるでしょうか?
「23号車(MOTUL AUTECH GT-R)は岡山でジャンプスタートになりましたけど、スタートがすごく速かった印象があります。もしもタイヤの温まりがいいのだとしたら、他のクルマのタイヤが温まらないうちに抜けるだけ抜いてしまったほうが賢いじゃないですか。そうすると最初の何周かだけパワーを出して全部抜いて、あとは普通に走るという運用もあると思うんですよね」
──検証してみたら、そのあたりの課題が浮上したと。
「そうですね。23号車は富士でも一気にトップに来ましたし、そういう運用でやっているんじゃないかなと思いますね」
──エンジン開発がぎりぎりの高いレベルにきているので、レースのなかでエンジンをどう使うかまでシビアなところに来ている。
「年間2基でライフが決まっているとなると、『負荷をかけてでも、どこで速く走りたいですか』となってきますよね」
──開幕前に開発が進んでP-MAX(燃焼圧)がエンジン側の許容範囲のギリギリまで高まっていると聞きました。
「トルクを出す=P-MAXを上げることで、簡単なことではありません。しかし、こうやるとP-MAXが上がってトルクが出ると分かると、我々としてはそれで年間2基でカバーするだけのマイレージを稼げるのか、耐久試験をします」
「耐久試験でもたないと、せっかく性能向上ネタがあっても使えないし、使い切れない。全部は無理でもここのレースだけ獲りたいところでそれを使う。それはもう他のメーカーも含めてそうだと思います。ニッサンさんにしてもホンダさんにしても、予選では極端に速いことがありますよね。状況を見ると。間違いなく運用の部分でそういうことがあるなと思いますよね」
エンジン本体のパフォーマンスだけでなく、そのパワーをレースごと、そしてレースの展開で変えて、いかに上位を狙うかが問われているGT500クラスのエンジン事情。3メーカーによるエンジン開発が極まった結果、パワー競争だけでなく、それをどこでどれだけ使うか戦略の重要性も高まっている
