高木はこの第3スティントの途中から、「レースでは初」という左足ブレーキを駆使していた。M6のブレーキは強いペダル踏力が必要で、「ショーンは若いからいいけど」と高木は笑う。第2戦の500kmでは問題なかったが、500マイル=800kmとなると状況が異なる。気温も高く、脱水症状になれば足が痙攣するかもしれない。

最終スティントを残していることもあり、足への負担を分散させるため、前にクルマがいないときなどは左足でブレーキを踏むようにした。「テストとか遊びではやったことがあるけど」という左足ブレーキは徐々に慣れていき、最終スティントは右足ブレーキと比較しても、ほぼ同タイムで走れるようになった。
レース後に左足ブレーキを使っていたことを知らされた安藤エンジニアは、「驚きました(笑)。後でデータを見比べれば、アクセルとブレーキペダルのオーバーラップによって燃費が悪くなっていたことが分かるかもしれないけど、タイムも変わらないし、レース中は全然気づきませんでした」。
高木は昨季の第5戦富士、「ABSの入りを感じながらブレーキングすることで、1コーナーのブレーキングポイントが怖いぐらい奥になった」と明かしていた。今季の第2戦では、コーナーごとに異なる路面ミューに応じてABSの効き具合を調整していた。そして今回は左足ブレーキ。「面白かった」とレースを振り返る48歳は、溢れる探究心でいまなお進化を続けている。