もちろん、リスク承知で4回ピット戦略を選ぶのも戦略のひとつで、それこそがレース、という声があるのも事実ではあるが、今回はセーフティカーによる不公平を是正させるのを優先させたことになる。ただ、もちろん雨やアクシデントなどでイレギュラーな展開になった場合は、5回ピット義務は解除されることになるという。そのあたりは、GTAが臨機応変に対応することになる。
また、今回の5回ピット義務でひっそりと微笑んでいるのが、レクサス陣営だとか。RC Fは燃費がライバル2メーカーに比べて良くないというのがパドックでの評判で、「ライバルとの燃費差がこの義務で解消される」という声を聞いた。5回ピット義務は戦略の幅が狭まり、ギャンブルがしづらくなるという点はあるものの、GT-Rの一強状態に『待った!』を掛けるきっかけになるかもしれない。
レクサス陣営ではZENT CERUMO RC F、au TOM’S RC F、WedsSport ADVAN RC Fの3台が優勝候補。特にトムスとセルモは昨年、この1000kmでワン・ツーでフィニッシュを果たしており、今年もウエイト的にも充分、上位が狙えそうな気配だ。この2台のRC FがS Roadにどう絡むのか、大きな見どころとなる。
一方、迎え撃つ形となる大本命Sロードも、懸念点がある。今年、飛ぶ鳥を落とす勢いのルーキー千代勝正が前回富士のクラッシュの影響でこの1000kmはエントリーのみとなり、実質欠場。その代役をGT500初参戦の高星明誠が務めることになった。優勝が狙える大きなチャンスをルーキー高星が仕留めることができるか。チームメイトで教師役でもある本山哲が高星への期待を語る。
「今回のようなチャンスで千代が走れなくて、可哀想。高星とのレースは始めてだけど、今はシミュレーターも発達しているし、千代も去年までGT300、F3を経験して、今年GT500に上がってきたばかりなのに、すぐにあれだけ走れている。今年の前半、千代にGT500の戦い方を教えてきて、また同じ作業をすることになるけど(苦笑)、高星にも伝えたい。今回はいろいろな条件を含めてチャンス。雨はちょっと不安要素だけど、クルマのベースとしては表彰台以上はいけるはずだと思っている」
S Roadのキーパーソンとなる、ルーキーの高星。高星がGT500デビュー戦でどんな走りを披露し、大本命Sロードにホンダ、レクサスの両陣営の各チーム、各ドライバーがどんな意地を見せるのか。今週末は史上最強とも言われる台風10号が近づいているが、こちらの鈴鹿でも『負けられない』オーラが渦を巻いている。