■ほぼノーミスのレースも「勝負になっていなかった」

 ただ、結果としてHonda Team MOTULの10時間の戦いで残ったのは、18位というリザルトだった。今回のレースはピット作業時間も決められており、いかにレースペースを高く保つかが重要なレースだったが、その点でNSX GT3勢は苦しい戦いを強いられた。

「まったく勝負になっていなかったですね。もし来年も出られるのであれば、もっと準備してちゃんと勝負したいです」と山本が語れば、武藤も「トップグループから見たらペースは良くなかったですが、現状でもっているポテンシャルを引き出すことはできたと思っています。ただ、事前にデータが必要なのもすごく分かりました。とてもじゃないけど、この週末だけでまとめ上げるのは不可能ですね」と語っている。

 また、大祐も「やはりこのピレリを使ってふだんから戦っているメーカーが強かったという印象ですね。NSXはまだピレリを使ってあまりレースを戦っていないと思うんですが、その点での苦しさはありました」と振りかえった。

 レース中はほとんど大きなトラブルもなく、「ドライバーもチームもミスはなかった(大祐)」という戦いだったが、それでもGT500ドライバーを擁してのこの結果は、ファンにとっては不満なものだろう。

 原因はドライバーたちも語っているとおり、事前の準備不足が大きい。2回のテストのうち、一度はウエットで、もう一度はドライだったものの、スポーツ走行を使ってのもの。走行時間が少なかったことが結果に繋がったと言っても過言ではないだろう。

 GT3カーは“買ってすぐ戦える”のが特色ではあるが、チーム、ドライバーの要素の習熟がトップチームに比べ足りないと、GT500ドライバーたちでさえ苦戦を強いられるのが、今のGT3レースの厳しさと言えるだろう。今回参戦した3台のNSX GT3のなかで、決勝中のファステストラップを記録したのがピレリとGT3を熟知しているCARGUY Racingのケイ・コッツォリーノだったのは、無関係ではないはずだ。

■「来年戦えるのであれば、もっと準備をして勝負をしたい」

 とは言え、3人のドライバーたちにとっては、ふだんのスーパーGTとは異なる耐久レースは、純粋に楽しめるレースだったようだ。

「自分たちがもう少しいいところにいければ、もっと楽しかったとは思いますけど(苦笑)」というのは大祐。

「個人的には、1000kmがなくなったので少し寂しい部分はあったのですが、実際に10時間が始まってみると、朝から晩までレースを戦っていてお祭りの印象もありますし、同じクラスのクルマだけが集まるからこその雰囲気もありますよね。ドライバーとしては楽しめたと思います」

 また武藤も、「レース全体としては楽しかったです。海外の強豪や、道上さんたち(Modulo Drago CORSE)と走ることができましたし、ふだん体験できないことができたと思っています」という。

「来年も可能であればやってみたいです。ただ、事前にデータが必要なのもすごく分かりました。とてもじゃないけど、この週末だけでまとめ上げるのは不可能ですね。もしやるなら、事前にちゃんとテストしたり、レースに出たりしないといけないですね」

 そして、「もし来年も出られるのであれば、もっと準備してちゃんと勝負したいです。でも、武藤さんと大祐と一緒にやれたのは、すごく楽しかったですね」というのは山本だ。そして、「今回ラップタイムは遅かったですが、遅い、速いよりもクルマのバランスや運転のしやすさ次第で、体の疲労度は変わってきましたね」とGT500とは異なる戦いの厳しさも教えてくれた。

「体にかかるストレスはずっとGT500の方がありますが、このカテゴリーはダウンフォースが少ないしクルマも重いけど、グリップが意外と低く、タイヤの落ちがあるなかで、クルマをコントロールしなければいけない大変さがあります。だから、神経の方が疲れる感じです」

 ふだんはGT300として接しているマシンに乗り、ふだんとはまったく異なる性格のタイヤでの戦いは、GT500ドライバーたちにとっても、新たな経験となったようだ。当然、ホンダファンにとっても今回の鈴鹿10時間は満足のいく結果ではない。今後のGT3マーケットでの販売促進を考えても、来季こそホンダの地元で“速いNSX”をみせてほしいところだ。

Modulo DRAGO CORSEの34号車と競り合うHonda Team MOTULの10号車ホンダNSX GT3
Honda Team MOTULの10号車ホンダNSX GT3

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