その言葉どおり、試乗したニッサン・リーフ・ニスモRCはとてもハコ車とは思えない、ロールや前後のピッチがほとんどない車体姿勢で、左右の切り返しにもステアリングの動きに機敏にクルマの向きが反応する。もちろん、加速性能は事前の評判どおりだったが、一番の驚きはおそらく、フォーミュラカーはきっとこのような感覚なのだろうと思わせるようなクイックな車両特性だった。回生システムは大きくは介入しないようにセッティングされていて、ブレーキングでも違和感なく、積極的にドライブできることを主眼としている。
このニッサン・リーフ・ニスモRC、現在は6台が生産されているが、この後はどのように活用されていくのだろう。ニッサンのグローバルマーケティング担当、ルードゥ・ブリース常務役員が答える。
「ニッサン・リーフ・ニスモRCを開発した目的は我々の市販車、EVの生産技術とフォーミュラEなどのレースカーとの関連付けにあります。6台のニッサン・リーフ・ニスモRCをこれからどのように使うのか。国内だけでなく海外を含め、デモ走行などでニッサンの技術をアピールしていく役割を担っています」
制作過程としては、ニッサンがオーダーする形で開発を担当したが、両者ともに今後の量産予定、製造予定は今のところないとのことで、ニスモがニッサン・リーフ・ニスモRCの現行の6台限りの存在となる。
今年の6月にはWorldRX世界ラリー選手権が2020年からはEVのみで争われる『エレクトリック・ワールド・ラリークロス・チャンピオンシップ(E-WorldRX)』に変わることが発表されたが、ニッサン・リーフ・ニスモRCの参加についてはルードゥ・ブリース常務役員が明確に否定。実際のレースへの参加予定も今のところはなく、イベントや試乗会などでのプロモーション目的の存在になるという。
車体スペースとしてはさらにモーターをふたつ追加できる余地があり、今後のバッテリー開発次第で4輪独自にモーターで駆動できる可能性を残すなど、EVレーシングカーの魅力と可能性を存分に秘めた存在でもあるニッサン・リーフ・ニスモRC。外観のデザイン性の高さとそのパフォーマンスは、プロモーション目的だけでは「もったいない!」のひと言。フォーミュラEよりも身近に感じることができるEVレースマシンとして、やはり、レースカテゴリーへ参戦して結果を出すことが一番のファンへのアピールとプロモーションになるはず。フォーミュラEだけでなく、これから訪れるハコ車のEVレースの先駆けとして、国内外のレースカテゴリーで戦う姿を是非、見てみたい。


