「“バイアス”がかかっていては海外で戦えない」世界を転戦した中野信治の監督イズムと役割【2019新人監督インタビュー】
──F1をはじめ、これまで世界で様々なトップクラスのレースに出場されてきた中野監督ですが、海外から見たスーパーフォーミュラ/スーパーGTはどういったレースだと思いますか?
中野:僕はそこに関して深く語れる立場にはいません。やっていることのレベルは高いけれど、日本とヨーロッパとでは戦い方が違うと思います。何度もテストを繰り返してレースを迎えるという日本の戦い方と、パッとセットアップをして走るというヨーロッパの戦い方があまりにも違いすぎて、僕には比較できません。
ヨーロッパでは日本でやっているレベルまで細かくはやらないし、やる時間もありません。こういうのは日本の得意技なんだろうなと思います。ドライバーもチームもこういう状況なので、結果を残すというのは相当大変だと思う。僕自身も今以上にそういうのを理解できるようになっていくだろうし、細かさについては目から鱗です。
日本のレースには日本の難しさ、ヨーロッパのレースにはヨーロッパの難しさがあるので、同じやり方が通用しないということを理解していないと、うまくいかないと思います。僕がヨーロッパでやっていたやり方を通そうとも思いません。『こうすればいいんじゃないか』というのは心の中にはありますが、今までのやり方というのがあると思うし、そこは僕も調整していかなければなりません。
──それでは最後に、2019年シーズンの目標をお伺いします。まずはスーパーフォーミュラですが、TEAM MUGENは2018年にドライバーズタイトル(※1)を獲得しました。やはり2019年は連覇が目標でしょうか。
中野:スーパーフォーミュラはクルマも変わりますし、2018年までとはまったく違うので、僕はあくまでもチャレンジャーだと思っています。タイトルを防衛することをいちばんの目標にしたいのですが、クルマもドライバーも新しくなったので、どれだけクルマの理解を深められるか、ドライバーとお互いを理解できるかが重要です。
もともと良いチームなので1回結果が出れば流れに乗れるでしょう。目標としては、まずは1回勝ちたいです。そこから次にやらなければならないことが見えてくると思いますが、やらなければならないことはたくさんあるので甘くはありません。
──その一方で、スーパーGTではいかがでしょうか。こちらはメーカー同士の争いだけでなく、タイヤメーカー同士の激しい争いも避けられないと思いますが、その点も含めて2019年シーズンの目標を教えてください。
中野:タイヤがどうだとか、『こういう理由でここまでしかできない』とは言いたくない。良い流れが来た時にそれを掴めるかどうかは、自分がバイアスを外せているかどうかだと思います。
バイアスがあったら良いチャンスが来た時にそれを掴めないし、チャンスが来たことにも気付けません。その意識を変えていけるかどうのは仕事のひとつです。何かウイークポイントがあったとしても、それを挙げても仕方ない。もちろん結果は欲しいけど、そのためにやるべきことに集中したいです。
※1ドライバーズタイトル:山本尚貴が自身2度目のタイトルを獲得。なお2019年は山本はDOCOMO TEAM DANDELION RACINGへ移籍した。