2019年シーズンのGT300は宿命の対決で幕を開けた。荒天のため5回のセーフティカー(SC)先導があり、2回の赤旗で決勝は30周で終了。その状況において、GT300最多勝記録20回で並ぶK-tunes RC F GT3(96号車)の新田守男、ARTA NSX GT3(55号車)の高木真一が魅せた。
SC先導から4周目でスタートが切られると、直後の1コーナーで2番手スタートの新田がポールシッターの高木のインに飛び込む。ここは高木が抑えきるが、サイド・バイ・サイド、テール・トゥ・ノーズの戦いはバックストレートまで続いた。
新田は続くヘアピンのブレーキングでしかけるつもりだったが、その直前にHOPPY 86 MCのクラッシュがありSC導入。いったん仕切り直しとなる。
新田と高木はかつて12年間コンビを組み、そのすべてでミッドシップの車両を使っていた。フロントが軽いミッドシップはフロントタイヤが温まりにくいこと、さらに互いの走りを熟知しており“早めのしかけ”をともに承知していた。
11周目にレースが再開されると、2コーナー立ち上がりの水溜まりで加速が鈍った高木を新田が抜いていく。新田はその瞬間を「僕の“しかけ”が分かっていたからこそ、真一は
ラインを変えて機先を制すつもりだったんだと思う」と振り返った。新田はそのまま勝利し、21勝目を手にした。
この宿命の対決は、前日の予選からすでに始まっていた。新田と高木はそれぞれQ1を走り、Q2は55号車が福住仁嶺、96号車は阪口晴南が担当した。そしてふたりのルーキーのみがコースレコードを更新し、福住がポールポジションを獲得、阪口が0.016秒差でそれに続いた。
55号車と96号車の今季のチーム環境には共通点が多い。ベテランとハコ車でのレースが初めてというコンビ。監督はいずれもドライバーとして名を馳せた鈴木亜久里監督(55号車)と影山正彦監督(96号車)。タイヤも同じブリヂストンだ。
新田と高木は惜しみなく自分たちの経験を若き相棒に伝え、両監督はルーキーにQ2を任せるほどに信頼を寄せる。勉強家の福住と阪口は大先輩から多くのことを吸収し、早くもデビュー戦で期待に応えてみせた。
新田と高木は「あまり戦いたくない相手。本当は(チームメイトとして)一緒に乗っていたい」と口をそろえる。しかしこの2台が今季、対峙することは多いはずだ。そして、福住と阪口はプライベートで会うほどに仲が良い。新田と高木だけでなく、福住と阪口という新たな“宿命の対決”も、今季最終戦まで続いていく。