更新日: 2019.05.27 11:37
似て非なる戦いを演じた2台のマザーシャシー。負けて悔いなしのHOPPYと若手の成長が光ったマッハ号《GT300決勝あと読み》
そんなHOPPY 86 MCの失速で、2位表彰台を奪ったのはADVICS マッハ車検 MC86 マッハ号だった。HOPPY 86 MCと同様にタイヤ無交換作戦を完遂しての2位表彰台は、TEAM MACHにとってチーム最高位タイという結果。ドライバーの坂口夏月、平木湧也のふたりも喜びはひとしおという感じだった。
「嬉しいです(平木)」、「とにかくホッとしています(坂口)」と笑顔で語った。
ADVICS マッハ車検 MC86 マッハ号は、スタートを担当した平木が少しずつポジションを落とす苦しいレース展開に見られたが、これは平木の計算尽くの走りだった。タイヤ無交換作戦を採るには、後半の坂口につなぐためにタイヤをセーブしなければならなかったのだ。
「だいぶ気を遣いましたね。もちろん最初から無交換一択の作戦だったので、本当は防ぎたかったですけど、タイヤを守って守って走っていきました」
そんな平木には、タイヤをセーブしながらも「これ以上は抜かれてはいけない」というラインがあった。Modulo KENWOOD NSX GT3を先頭とする7番手争いの後方に入ってはいけないとポジションを死守していたのだ。前を走るRUNUP RIVAUX GT-Rともバトルを展開し、ちょうどかわしたところでセーフティカー導入に。展開も功を奏し、坂口につなぐことに成功した。
坂口はK-tunes RC F GT3の先行は許しながらも、平木に続きタイヤをセーブしつつ、終盤の勝負どころに賭けた。GT500との接触により一時はSUBARU BRZ R&D SPORTに先行されるものの、ここぞとばかりにふたたびオーバーテイク。これが2位につながったと言えるだろう。
実は坂口と平木は、SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)出身の同期。ふたりは鈴鹿を数え切れないほど走っていることも2位につながったと言える。ただ、SRSから先へ続く育成ドライバーへの“レール”に乗っていなかったふたりがこうして結果を残したのは、ファンとしてもうれしいストーリーだ。
「僕たちはプライベーターでメーカーのドライバーではないですし、若手で生き残っていくためには結果を残さないといけないです。それがやっと、こうして結果として出せたので本当に良かったです。メーカーのドライバーではなくてもこうして戦える……というのをみせていきたいですね」と平木は言う。
またチームを引っ張ってきた坂口も「3年目にしてやっとチームに恩返しできましたし、スポンサードしていただいているADVICSさんにも、こうして結果をお返しできたのが本当にうれしいです。速さはみせながらもリザルトを残せなかったですし、チームも平木選手も素晴らしい仕事をしてくれました。すべてがうまくかみ合った結果ですね」と喜んだ。
ふたりの活躍には、チームの玉中哲二監督も「平木もちゃんとペースを守ってくれましたよね。今までさんざん怒られてましたから(笑)。夏月もきちんとタイヤが残っていたおかげで良いレースができました。チームワークも良かったです」と笑顔で語った。
「クルマがいい状態なら、他のチームにも負けない走りができると思います。強いドライバーになりましたね。それにしても、チームとしては優勝が欲しいんですけどね……。『新田守男ジャマするな』と。超仲良いんで書いておいてください(笑)」
HOPPY 86 MCが開発してきたタイヤをきっちりと使いこなし、HOPPY 86 MCを逆転する走りをみせたADVICS マッハ車検 MC86 マッハ号。チームが次に狙うのは、同様にマザーシャシーが得意とするスポーツランドSUGO、そしてチームの地元であるオートポリスでのレースだ。「ここを獲れればチャンピオンも見えてくるかも」と玉中監督は期待を込める。
ちなみに、第7戦オートポリスの決勝日である9月8日は、福岡県出身である坂口の誕生日。玉中監督の夢であるTEAM MACH初勝利の舞台は整っている。速さと強さをもったGT300の玄人好みのタレントが誕生したレースだった。