更新日: 2019.10.05 16:43
【トムス東條エンジニア特別寄稿】対応できなかった雨の走行。それでも狙える予選トップ10《DTM×スーパーGTインサイド1》
金曜日、DTMとの混走が始まりました。
コンディションはウエット。ドライバーはニック。慎重にグリップを確かめながらインストレーションラップを2分14秒5で終えましたが、3周目の第3セクターでウォールへヒットしてしまいました。
万事休す。
ピットへ戻った#37号車は右フロントを大きく破損して、朝の走行をわずか実質の計測1周で取りやめることになりました。
BMWのティモ・グロック選手の計測1周目は1分58秒950でしたから、その差は12秒。ニックは最大限の注意を払っていたにも関わらずクラッシュしてしまい、かなりナーバスになってしまいました。しかし、同じポイントでGT-Rの松田次生選手もコースアウトを喫し、#1ジェンソン・バトン選手も含めてスーパーGT勢は揃って下位へ。我ら日本勢はワンメイク仕様のハンコックタイヤと冷たい雨に、まったく対応できていませんでした。
午後のセッションへ向けてメカニックは修理を行い、エンジニアはハンコックタイヤに合わせるセットアップを探ります。走行前には雨が上がり、弱いながらも日差しがあって路面はほぼドライ。全車ドライタイヤを装着してコースイン。
#37号車は平川亮がステアリングを握り、レース用タイヤのスクラブとクルマのチェックを兼ね、1周回でピットへ。ピットストップシミュレーションをフルで行った後、徐々にスピードを上げてタイムを刻んでいきました。
終盤までトップから1秒落ちの5番手をキープ。2セット目のニュータイヤで、さらなるタイムアップを目指しましたが、タイヤが完全に発動する前にセーフティーカー訓練に差し掛かってしまい、タイムアップを果たすことができませんでした。
しかし、少なくともドライの予選では戦える感触を得ることができたので、明日の予選がドライならばトップ10入りを目指せると思います。ただ、雨の場合にはグリップ不足が明らか。DTM勢のように走り出しからすぐにグリップを得られるような工夫が必要です。
追記:アストンマーティンチームのセットアップ/アライメント作業を見学していると、メカニックが快くピット内へ通してくれました。
サーキットでのアライメント作業は、PIT内に水平面を作る簡易定盤、4輪の輪荷重を測定するコーナーウェイトゲージ(重量計)、ダミーホイールなどで構成され、その他にも車高を測定する水平バーと直定規、トーインを測定する糸やゲージ、キャンバー計測用の角度計など多くの機材が必要となり、それに伴う配線や記録するためのノートやパソコンを広げる必要があり、作業環境は雑多になりがちです。
アストンマーティンではレーザーを使って糸や車高測定バーに代わる面や線を描き、ダミーホイールx定盤マウントの荷重データをワイヤレスで飛ばして表示・保存できるシステムが構築されていて、非常に合理的な測定できるシステムを採用していました。アライメントに必要なすべての機材がコンパクトに収納されているため、作業環境としては非常にシンプルで美しいものでした(イタリア製でコンプリート販売されています)。
一方、BMWチームのアライメント作業では糸を張ってトーインを測定し、直定規で車高を読み、エンジニアがノートにメモを取りながらのオーソドックスなスタイル。トムスもこのスタイルで行います。
これはこれで合理的に計測が出来るので悪くはないと思いますが、作業環境を改善するという意味ではデジタル化も悪くないのかなと感じました。
しかし、アストン方式では車両の軸とアクスルの位置や軸にずれが出やすいと思うので、管理には3D測定器が必須となるはずです。サーキットでは輸送を含めて取り扱い環境が非常に悪いため不意のトラブルもあると思われ、ここはハイテク化よりも質実剛健が必要。BMWも同じスタイルですし、従来通りのスタイルでよさそうです。
(土曜日編につづく)