しかし、ルーティンピットの迫る25周目、山下選手はV字コーナー付近で痛恨の単独スピンを喫する。グラベルに埋まって万事休すかと思われたが、再びオフィシャルのおかげでマシンがコースに戻され、山下選手はすぐさまピットに呼び戻された。
チームは当初、ピット作業を少しでも短縮するため、タイヤ交換を左側のみと予定していた。しかし、すでに先頭車両に4周の差をつけられ、完走ポイント3点を望めなくなったARNAGE AMG GT3は、何としても完走ポイント1点を獲るため、手堅く4輪交換に作戦を変更。
マシンにダメージがないことを確認したメカニックが、後半のスティントにステアリングを託された加納選手をコースに送り出した。


加納選手は、ほぼ単独でコースを周回できるチャンスに、苦手意識のあったもてぎの攻略を試み、何度かチャレンジを繰り返しながら、少しずつタイムを上げていった。そしてラスト3周、1分52秒台前半の好タイムを連続でマークして、28番手でチェッカーを受けた。
Arnage Racingは、2度のスピンで勝負権を失ったものの、最後までレースを諦めなかったふたりのドライバーの頑張りで無事に完走を果たして、シーズンを終えることができた。
<1年を振り返って>
チーム結成から7年目となる2019年は、これまで以上に生き残りの難しいシーズンとなりました。資金力のある強豪チームがひしめき合い、シード権争いがさらに激化する中、数少ないプライベーターチームのなかでも最も力の弱いチームのサバイバル力が試されるシーズンでした。
Arnage Racingは、昨シーズンから引き続いてMercedes AMG GT3でシーズンに臨み、チーム結成当初から苦楽をともにしてきた加納選手に、若手の山下選手、さらに第3ドライバーとしてルーキーの手塚祐弥選手を加えて、全戦完走を目標にシリーズを戦ってきました。
Aシードでスタートしたシーズンでしたが、悪天候やアクシデントに泣かされたレースもあり、“トップと同一周回または1周遅れの完走”の3ポイントを獲得することは困難でした。しかし、1度もリタイアすることなく、全戦完走を以ってなんとか無事にシーズンを終了することができました。
今シーズンも毎戦薄氷を踏むようなレースばかりで、非常に苦しいシーズンでしたが、そんななかでも温かくチームを見守り応援してくださるスポンサーのみなさま、ファンのみなさまのおかげで、最終戦までシリーズを戦うことができました。
チーム一同感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
●Arnage Racing、SUPER GT 2019年シリーズの戦績
Round1 4/13~4/14 岡山国際サーキット:22位完走
Round2 5/3~5/4 富士スピードウェイ:17位完走
Round3 5/25~5/26 鈴鹿サーキット:24位完走
Round4 6/29~6/30 チャン・インターナショナル・サーキット:20位完走
Round5 8/3~8/4 富士スピードウェイ:21位完走
Round6 9/7~9/8 スポーツランド菅生:12位完走
Round7 9/21~9/22 オートポリス:16位完走
Round8 11/2~11/3 ツインリンクもてぎ:28位完走
