SCピリオド中の11周目には、前日DTM勢最上位を記録したAudi Sport Japan RS5 DTMのブノワ・トレルイエがピットへ。ルーティンを終えて再度のインディスタートで上位進出を狙う戦略を採る。
12周目突入時点でSCが明けると、一時は4ワイドとなったNSX-GT同士のバトルを制して、インサイドを守ったカーティケヤンが首位をキープ。4番手だったKEIHIN塚越が陣営内で2台を出し抜き、2番手に上がってくる。
このあおりで4番手までポジションを落としたRAYBRIG山本も、ダンロップでMOTUL MUGEN中嶋のインを差し3番手にカムバック。しかし14周目にはラストランの意地を見せる大祐が逆襲。さらに、リスタート時には12番手にいたBMW M4 DTM小林可夢偉も、8番手にまで浮上するバトル巧者のテクニックを披露する。
各車ルーティンのピットウインドウが迫るなか、15周目にはDTM勢のBMWウィットマンとAudiラストがタイヤ交換へ。続く16周目にはGT500勢も追随し、RAYBRIG山本、ARTA NSX-GT野尻智紀、KeePer TOM’S LC500平川亮、ZENT CERUMO LC500石浦宏明、MOTUL AUTECH GT-R松田次生らがピットへ。
続くラップでカーティケヤン、塚越もピットへ飛び込み、18周目まで引っ張った大祐がタイヤ交換に向かうと、コースへ復帰したMOTUL MUGEN NSX-GTのすぐ背後にModulo Epson NSX-GTが迫ってくる。
1周先行してピット作業を行っていてタイヤのウォームアップなったカーティケヤンは、難なくMOTUL MUGEN中嶋をパスして、NSX勢最上位を奪還。その後、中嶋は後続にも飲み込まれ苦しいアウトラップとなってしまう。
さらにその直後、20周目のホームストレートで今度はDTM王者を悲劇が襲い、デュバルとまったく同じ症状で左リヤタイヤがバースト。わずか5ラップ前に交換したフレッシュタイヤが早くもトラブルを起こすなど、木曜のテスト走行時にも発生したAudi RS5 DTM特有の症状に見舞われてしまった。

このタイミングでピットを引き延ばしていたWedsSport ADVAN LC500国本雄資や、BMWの小林可夢偉、カルソニック IMPUL GT-Rのジェームス・ロシターらが続々とピットへ。ストレート上に転がるデブリの撤去で、ふたたびSCが導入されるのを見越した動きを見せる。
すると、16周目にルーティンを終えていたRAYBRIG山本もトラブル発生か2度目のピットへと入り、直後のSCコールで最後尾付近にまで下がってしまう。
25周目突入時点でリスタートが切られると、残るレース時間は約10分ほど。アウディのトレルイエ、今回はBMW M4 DTMをドライブするパラリンピック金メダリスト、アレッサンドロ・ザナルディの2台を先頭に1コーナーへと飛び込み、各車なんとかクリアしていくと、高速コカ・コーラ・コーナー脱出以降、レースは大波乱の様相を呈していく。
このコカ・コーラ・コーナーでは、リスタートで4番手にいたKEIHIN塚越が、車列中団に飲み込まれて行き場を失い、Modulo MUGEN中嶋と接触してコントロールを失い、左斜め前方にいたARTA野尻にヒットして2台ともにマシンを破損してストップ。
さらにセクター3の13コーナーではKeePer平川を除くレクサス勢、WedsSport ADVAN LC500、WAKO’S 4CR LC500、au TOM’S LC500、ZENT CERUMO LC500、DENSO KOBELCO SARD LC500のレクサス5台が絡むマルチクラッシュが発生してしまった。
この混乱のなか、リスタート時点で10番手だったBMWの可夢偉がジャンプアップに成功。アウディのデュバルとお互いのマシンパーツを跳ね飛ばしながらの3番手争いを繰り広げる。
しかしコース上に散乱したデブリのため、残り5分を切るところでこの日3度目のSC導入が決まると、そのまま先導中に55分のレースリミット時間が経過。リスタートは切られるものの、インディ方式ではなく1列隊列で最後の1周、超スプリントのファイナルラップに突入する。
Modulo NSXカーティケヤンを先頭に、BMWウィットマン、アウディのデュバル、BMW可夢偉、そしてMOTUL NSX大祐のトップ5で1コーナーへ突入すると、4番手可夢偉がわずかに失速したことで優勝争いは実質トップ3に絞られていく。
逃げるカーティケヤンの背後で最後のマッチアップとなったDTMのウィットマンとデュバル同士は、ダンロップの進入からGRスープラ・コーナーまでサイド・バイ・サイドでラインを入れ替えながら駆け上がってくると、お互いに進路を譲らず火花を撒き散らしながら最終コーナーへ。
インを取ったBMWウィットマンがデュバルのAudiをコース外に弾き飛ばすと、負けじとスロットルを踏み続けたデュバルがランオフエリアを加速して並びかけるようにコースへと復帰すると、そのまま並走して強烈な中間加速で前に出てデュバルが2位でチェッカー。今季のDTMチャンピオンマニュファクチャラーであるアウディ陣営として、意地と底力を見せつけるフィニッシュとなった。

しかし、直後にレースコントロールから迅速なペナルティ裁定が出され、トラックリミット違反のデュバルには1秒加算のタイムペナルティ。これでウィットマンに先行を許したものの3位表彰台は確保。GT500初優勝のナレイン・カーティケヤン、2位にバースデイ・ポディウムのウィットマンが並ぶ表彰台となった。
記念すべき試みとして初のイベントを終えたスーパーGT×DTM特別交流戦。DRSやプッシュ・トゥ・パスを封じられ最高速に苦しんだDTM勢に、タイヤ習熟で未知のセットに挑戦したGT500勢。その結実が、随所で火花を散らすバトル満載のイベントとして目の前で繰り広げられ、未来に向け大いに期待が高まる週末となった。
