更新日: 2020.06.30 11:19
開発競争激化の果てに有名無実化したフレーム。03年規則はついに”一線”を超えた【スーパーGT驚愕メカ大全】
そこで技術者たちは「荒技」を繰り出した。なんとサイドフレーム側面にサイドフレームの箱状構造の内側へ届く穴を開け、内側にサスペンションのピックアップを設けたのである。サイドフレームの厚みは約100mm。車両規定ではサスペンションのピックアップは量産状態から20mm移動させても良いということになっていた。
この20mmはあくまでもサイドフレームの表面のことを言っていたのだが、車両規則もまさかサイドフレームに「食い込む」方向で20mm移動させ、その分サスペンションアーム長を稼ぐなどという無茶をする人間が出てくるとは想定はしていなかったのだろう。
サイドフレームに穴を開けてサスペンションを取り付ければ通常は剛性に問題が生じる。しかし剛性という意味ではサイドフレーム内側にロールケージが伸びてすでにフレームとして充分な剛性を確保していたので、サイドフレームの剛性が低下しても問題はなかった。つまり、この時点でサイドフレームは車両規定を満たすための名目のためにくっついているにすぎなくなっていたのである。
当然、こうした工作は手間も費用もかかるし何よりも無駄だ。そこで、無駄を省き、手間やコストを削減するためにGTAは車両規則を改定し、03年規定で名目だけになっていたサイドフレームの撤去を許し、結果的に改造範囲を拡げる決断を下したのだった。
改造範囲を拡大すれば開発競争を招きコストは増大する。これは間違いではない。しかし改造範囲を制限しても車両規則を充たすための開発競争が進みコストは増大していくのだ。レーシングテクノロジーというものは罪な技術だ。だが、だからこそおもしろいのである。