更新日: 2020.06.30 11:14
ホンダNSX開発陣が見せた応用力。“余分なギヤ”とフォーミュラ転用パーツでギヤボックスを最適化【スーパーGT驚愕メカ大全】
エンジンとギヤボックスの間に追加する余分なギヤ=アイドラギヤの歯数を調整してギヤボックスへの入力回転数を上げれば、同じトルクを伝達するときギヤボックスが受け持つ負荷は減る。
横置きギヤボックスの中には、前進6段の変速を受け持つギヤがシャフトに串刺しになった形で横向きに並んでいて、ギヤにはエンジンのパワーや車体重量によって負荷がかかるから、ギヤの1枚1枚はそれなりの厚みを持っている。
だがアイドラギヤで入力を増速してやれば、ギヤにかかる負荷は減るからギヤを薄くできる。そうすればギヤボックスの幅を狭めることができるのではないか。
そこで技術陣は当時フォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)で使われていたギヤを流用することにした。
フォーミュラ・ニッポン用ギヤは、かかる荷重が少ないので車重が1トン以上あるGT用ギヤに比べてその厚みはおよそ半分。6速分のギヤが薄くなれば横置きギヤボックスの横幅は一気に狭められる。
ギヤボックスケースの横幅が狭くなれば、エンジンルームの空間が広がり、後部の軽量化が実現すると共に空気が流れやすくなって冷却面でも空力面でも大きなメリットが得られる。
アイドラギヤを追加しFニッポン用ギヤセットを流用した新しいギヤボックスは、構造が複雑化したりフリクションロスが増えたりするデメリットもあったが、まさに一石二鳥のアイデアであった。
実際、新しいギヤボックスは当初トラブルを多発し、「ガラスのミッション」と呼ばれることになった。しかし改良が進み信頼性が増すとNSXはその威力を発揮し、シリーズ7戦中4回の優勝を遂げてチャンピオンカーとなったのだった。