では、実際の現場でふたりのドライバーの意見を聞き、セッティングを施すエンジニアはどのように最適解を追求しているのか。TEAM IMPULの大駅俊臣氏はそのポイントを「コーナー侵入時とブレーキング時のリヤグリップにある」と言う。
マシンはコース上のあらゆる場面でさまざまな挙動を示すが、ほとんどのドライバーはターンインの姿勢を重視する。その姿勢に対して自身のコントロール下にマシンを置いておくことができなかったとき「どうにかしてほしい」とエンジニアに訴えるのだという。そしてこのターンインの姿勢に個人差が生まれやすい。そのときの許容度合いがふたりのドライバー間で一致していると「相性が良い」と言うことになるようだ。
ただし、完全に一致することはないためふたりのドライバーとエンジニアを含めたチームは、そうした部分の調整でいいとこ取りができるようつねに頭を悩ませているのだ。
2018年のチャンピオン山本尚貴/ジェンソン・バトン(TEAM KUNIMITSU)や2019年のチャンピオン大嶋和也/山下健太(LEXUS TEAM LEMANS WAKO’S)は、いいとこ取りができていた成功例と言える。もともと2チームともふたりのドライバーが好むドライビングスタイルは異なっており、シーズン開幕前に彼らがタイトルを獲るとは誰も予想できていなかった。
しかし、彼らはドライビングスタイルの違いをアンダーステア、オーバーステアに対する許容度の広さでカバーしたり、お互いのいいとこ取りをしたマシンセッティングを施すことでレースで強いクルマを作リあげ、チャンピオンを獲ることができたのだ。
スーパーGTにおける“相性”はもちろん一致していることがベストではあるものの、ドライビングの好みは必ずしも一致していればいいというわけでもない。こういう視点で今季のスーパーGTのコンビを見てみると、普段とは違う視点で楽しめるかもしれない。
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