投稿日: 2020.06.08 16:04
更新日: 2020.06.30 11:12
更新日: 2020.06.30 11:12
GTカー開発、規則とエンジニアの攻防史。補強と裏技で辿り着いた“シルエット・フォーミュラ化”【スーパーGT驚愕メカ大全】
Makoto Ogushi
たとえば2004年のZは、キャビン背後にフューエルタンクコンテナと称するカーボンコンポジット構造体を設け、そこにトランスアクスルを締結するというアイデアを繰り出した。
本連載第2回で解説したフレームの改変同様、本来は改造範囲を制限するはずだった車両規則を充たしながら高性能化するため、かえって改造にコストと手間がかかるようになってしまったのである。
これを受けてGTAは車両規則の大改定に踏み切って2009年以降はオリジナルのモノコックの使用義務を撤廃し、全面的に自由設計のカーボンコンポジット構造モノコックに置き換えてよいことにした。とうとうスーパーGT車両は、レーシングカーに市販車の皮をかぶせた形の、シルエット・フォーミュラ的車両となったのである。
興味深いのは、2008年にニッサン陣営がベース車両をR35型GT-Rへ切り替える際、一年前倒しで2009年規定に基づきカーボンモノコックを投入したことだ。
営業上R35発売とタイミングを合わせてベース車両を切り替える必要があったが車両規定改定は2009年度からだったので、新型車両開発コストを削減するため特例として車両規定の前倒しが認められたのだった。したがってこの年のGT-Rは本来の車両規則には合致しない特認車両としてシリーズに参戦し、結果的にチャンピオンカーとなった。
ニッサンの開発陣は、新型車両投入のタイミングと車両規定改定のタイミングがズレるという苦境を、結果的に最新の車両規格を単独で導入し特認車両として戦うという、ある意味で裏技を使って好転させたのだった。
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