「9月のもてぎまでそうやって確実にイベントを開催し、その間に感染拡大が収束するなどして、段階的に実施できることが増えるのであれば10月以降、何をプラスすることができるかを検討していく。そこまでに確実に感染防止対策が実践できていれば、なにかをプラスするとしても、その点に関してだけ感染予防対策を検討すればいい。イチから考え直す必要がない。たとえばレースクイーンを入場させるとなったら、レースクイーン周辺の感染防止策を追加すればいい。ゲストを入場させ、そのためのVIPルームを開設するのであれば、そこだけの対策を考えれば済む」
「もちろん、10月以降お客さんにサーキットにご来場いただき観戦してもらうのが最善ではあるが、その条件を今、我々が示すことはできない。仮に我々がその基準を作ったとしても、環境がどのように変化しているのか分からず、またその環境下、集客が許される状況になっているかは分からないからだ」
「決勝レースの距離は300km以下で長距離レースの開催予定はない。確実にレースを実施することが最優先なので、10月以降もスポーティングレギュレーションの規則で変化をつけてレースを盛り上げるというのは難しいかもしれない。レースに影響を与える変化としては、レースへ持ち込みタイヤのセット数を制限する可能性もある」
「レースに持ち込むマーキングタイヤのセット数を限定して、バックアップ用のタイヤの持ち込みを制限するかもしれない。持ち込み本数を制限すれば、タイヤの組付けが金曜日(搬入日)だけに限定できるので、チームスタッフとタイヤサービススタッフの接触機会を減らすことができる。タイヤサービスのスタッフを2班に分けるなどの方法も検討している。公式テスト富士を実施してみて、改善点を探っていく」
「公式テスト富士の開催が6月27~28日、第1戦富士が7月18~19日。このタイミングではタイヤテストの内容を解析して第1戦用のタイヤの設計にフィードバックするにはリードタイムがない。第2戦にはテストの内容を反映したタイヤが投入できるだろうが、開幕戦については妥協が強いられるかもしれない。GT500はCLASS1規定の下での新しい車両でもあり、公式テスト岡山以降テストができていない。第3戦の鈴鹿に向けては安全性の観点からテストが必要との声がタイヤメーカーから挙がっており、今後タイヤテストの機会を設けることを検討している」
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「できる限りの感染予防策を講じながらシリーズ全8戦を無事開催する」。これが今季の最大のミッションであるとの決意が坂東代表の言葉から伝わってきた。コロナ禍によってイベントが次々延期となり、かつてない状況に見舞われているなか迎える開幕戦だけに、シリーズの展開を占うことは現時点では不可能であり、坂東代表も「読める要素はない」と語る。
CLASS1規定車両でのテストは3メーカーとも公式テスト岡山以降できておらず、とくにGRスープラを新規導入したトヨタ、FR化して初シーズンを迎えるホンダにとって未知の部分が多い。GT-Rのニッサンはニッサンで、フランスに製造拠点があるミシュランタイヤの供給体制、ロジスティック面での不安もある。
坂東代表の言葉にあるように公式テストから開幕戦までのリードタイムが少ないことも、タイヤ熟成の観点では不確定要素として加わる。さらにテスト時間の総量としても例年と比較して圧倒的に少なくルーキーにとっては厳しい環境だ。ドライバーへの負荷は高くなるだろう。
最後にCLASS1導入にあたって中長期ビジョンとして掲げてきた国際交流について、その重要なパートナーDTMがアウディの撤退によって不安定な状況に置かれていることを念頭に、今後に向けてどのように考えているのかを聞いた。
「CLASS1規定による共通パーツの導入でコストダウンを実現して、スーパーGTは新たなマニファクチャラーが安価に新規参加可能なカテゴリーとなった。興味を持ってもらえたら、いつでも歓迎したい。競争があり、エンターテイメント要素もあり、ここまで世界に誇れるカテゴリーを作り上げた自負はある」
「欧州のマニファクチャラーは難しい状況に置かれているのかもしれないが、これからの成長市場はアジアにあり、そこにおけるマーケティングを考えればカテゴリーとしての価値も高い。『来るなら来い』と言いたい(笑)」
「さらに、将来的には環境対策も検討していく。GT500について2022年までは現行規定を維持するが、その先の2023年以降の規定については、ハイブリッド化やアルコール燃料の使用など環境対策を盛り込むことも話し合っていく。ただし、音や匂い、五感を刺激する要素を捨てるつもりはない」