更新日: 2020.06.30 11:11
いまや絶滅危惧種の職人魂。つちやエンジニアリング流“GT500独自チューン”の妙技【スーパーGT驚愕メカ大全】
2000年からGT500クラスでスープラ、SC430を走らせていたつちやエンジニアリングは「何かやらなくては気がすまない」職人気質の集団だった。
総帥の土屋春雄氏は、若き日からレースの現場で積み重ねてきたノウハウをツーリングカーのシャシーやエンジンに注ぎ込んではパフォーマンスを引き上げ戦い続けてきた。当然、GT500クラスの車両もつちやエンジニアリングにとっては「素材」であった。
もっとも冒頭指摘したようにGT500では徐々に車両を供給するメーカーの意向が強くなり、試行錯誤の自由度はどんどん狭まっていった。ここではつちやエンジニアリングがGT500参戦時代終盤の2008年前後に繰り出した、ある意味「最後の独自アイテム」を紹介する。
当時レクサスSC430を開発し供給するTRDにとって、こうしたチーム独自の改良は「面倒くさい」話ではあったかもしれないが、つちやSC430にはレース毎に何かしら独自の工夫が盛り込まれていたもので、現場技術の競争が好きなファンにとっては楽しみな「パフォーマンス」だった。
あるレースでつちやエンジニアリングはボンネット上に開けられたラジエターアウトレットに、カバー状のフィンを追加してきた。これによりラジエターを通過した熱気の流れが変わってボンネット後方から排出されるようになり、空気はフロントのウインドウシールドを駆け上がるとルーフに沿って流れリヤウイングに流れ込んでリヤウイング効率を上げるはずだ、というのがつちやエンジニアリングの狙いであった。
TRDは、ムービングベルト付きの大型風洞実験施設で検証した結果空力・冷却関連のデザインを決めてきたはずだが、風洞実験施設も持たないつちやエンジニアリングには、積み重ねてきた経験を通して何か違う空気の流れが脳味噌の中で見えていたということなのだろう。
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