一方、搭載ウエイト47kgに燃料リストリクター1ランクダウンで富士に挑んだワコーズは、その状態ながら公式練習で3番手と、順調なスタートを切ったように見えた。
だが、その3番手タイムをたたき出した坪井翔は「正直、直したいところがたくさんある状況でのタイムだったので、まさか3番手になるとは思っていませんでした」と驚いたという。
公式練習から予選に向けては、セット変更を散々悩んだというか、「変えてしまうとネガも出そうだった。タイヤ(のスペック)は変わるので、結局クルマは変えずに行ったのですが、うまくハマらなかったですね」と坪井。
大嶋和也が担当したQ1は、突破できなかった。だが「本当に苦しく、決勝ペースもよくなかった」(坪井)前戦もてぎでの乗りづらさはなくなっていたことで、予選結果をそれほど不安視はしていなかったという。決勝のペースには、ある程度自信を持っていたからだ。
決勝では、大嶋がスタートを担当して8番手まで順位を上げ、ピットへ。ここでの素早い作業と「タイヤのウォームアップも良かった」(坪井)ことで、5番手に浮上する。狙いどおりの展開だ。

レイブリックをパスした坪井の前には、平川を追いかけるARTA NSX-GTの野尻智紀がいた。
「8号車(ARTA)とは同じくらいのペースでした。GT300がうまく絡んだところで2台に追いついたんです」という坪井は、52周目のダンロップコーナーで野尻を、そして最終パナソニックコーナー立ち上がりからホームストレート前半で平川を続けざまにパス。2位にまでポジションを上げてレースを終えた。
「まさか12番手スタートで2位になれるとは思ってなかったです。僕らの武器は決勝レースでの強さ。そこは思う存分発揮できたと思う。課題は予選の一発ですね。今回も予選順位がもっと前なら優勝のチャンスもあったので、そういう意味では悔しさも残るレースだった」と坪井はレースを総括する。
これでランキングトップに立ったワコーズ。次戦の額面ウエイトは94kg、燃料リストリクターは3ランクダウンの領域に達する。
「僕、そもそも燃リス状態でレースするのって、今回が初めてなんです。だから3リスダウンって言われても、よく分からないんですよね(笑)」と自身2年目のGT500を戦う坪井は言う。
「当然鈴鹿の予選はかなり厳しくなると思いますけど、前回(第3戦)も予選はよかったので自信を持っていける部分はあります。ポイントも僅差なので同じようなハンデのマシンはまわりにたくさんいる。そのなかでひとつでも前(のグリッド)にいき、僕らの強みである決勝の良さをうまく発揮できれば、チャンピオンシップも近づいてくると思います」
ワコーズ陣営の武器として度々「レースでの強さ」を強調する坪井に、「トムスの2台より決勝で強い自信はあるか?」と聞くと、間髪を入れずにきっぱりと「はい」と言い切った。
「当然トムスの2台もすごく速いですが、今回の富士に関しては結果的にトムス2台より決勝も良かったですし、着実にその強みを伸ばしていけば、充分勝てると思います」
今季一番の仕上がりに手応えを持つキーパーと、決勝ペースに自信を見せるワコーズ。シーズン最重量ラウンドとなる第6戦鈴鹿、ランキング上位陣が見せる“ヘビー級の頂上決戦”は激しさを増しそうだ。